不当解雇・退職勧奨の
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会社から解雇を告げられた場合、解雇予告手当は受け取れるのか・残っている有給休暇は消費できるのかという疑問がわきます。
この記事では解雇を告げられた労働者の方に向けて、解雇予告手当を受け取れるのか、残っている有給休暇の取り扱いはどうなるのか、解雇予告手当と有給休暇の関係について解説していきます。
目次
解雇予告手当とは
解雇を告げられた日から解雇までの日数が30日未満である場合、その日数に応じて受け取れる手当
原則として、会社は労働者を解雇しようとするときには、少なくとも30日前に解雇予告をする必要があります(労働基準法20条)。
もしも解雇予告なく解雇される場合・または30日未満の予告期間しかなかった場合は、不足する日数ぶんの平均賃金の支払いが会社に義務づけられています。
このとき支払われる平均賃金は、一般に解雇予告手当と呼ばれます。
もしも即日解雇(即時解雇)を告げられた場合は30日ぶん、10日前に告げられた場合は20日ぶんの解雇予告手当を受けとることができます。
なお、労働者の責めに帰すべき事由に基づく解雇(主に懲戒解雇)の場合であって、会社が労基監督署の許可を得ている場合は、解雇予告手当は支払われないため注意が必要です。
有給休暇とは
勤務しなくとも賃金が支払われる有給の休暇日
6ヶ月以上継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、会社は年次有給休暇を与える義務があります(労働基準法39条)。
ここでの労働者とは、正社員、パートタイム労働者などの就業形態や職種を問わず、事業所で使用され、賃金を支払われている者を指します。
ただし付与される日数については、週所定労働日数や一年間の所定労働日数、継続勤務年数によって変わってきます。
さらに労働者は原則として有給休暇を自由に活用することができます。
また、有給休暇を使用した労働者の賃金を減額するなど、有給消化を抑制するような不利益な取り扱いを会社がすることは許されません(労働基準法附則136条)。
以上のことを整理したうえで、実際の退職の場面にあたっての2つの利用に関する疑問を解決していきましょう。
有給をいつ使うかは労働者の自由であるため、退職前に使わずに残っている有給休暇をすべて使い、退職の日まで休んで過ごすということも可能です。
会社は基本的に、この有給利用を拒むことはできません。
退職するとその時点で有給は消滅してしまうため、全て使ってしまうか、後述するように会社に買い取り請求をするのがよいでしょう。
仮に退職までの日数に残りの有給をあてても、解雇予告手当の金額が減ることはありません。
有給は労働者の権利、解雇予告手当は解雇の際の補償であり、それぞれ性質が異なります。
よって、「有給を使った日数ぶん、解雇予告手当の支払いが減る」ということは起こりません。
では、即日解雇を通知された後に有給休暇の消化を申請して、有給休暇を消化しつつ、解雇予告手当を受け取ることはできるのでしょうか。
実は、即日解雇が通知された時点で有給休暇が残っていたとしても、有給は消化することができず、解雇予告手当が支払われて終わりとなります。
なぜならば、雇用契約が消滅したタイミング(即日解雇の通知がなされたとき)で有給休暇も消滅してしまうため、即日解雇後に有給休暇を消化することはできないからです。
ただ、即日解雇でないのであれば、解雇日までに有給休暇を消化することは可能です。
上で解説した通り、即日解雇の場合は有給休暇を消化することはできません。
しかし、即日解雇された時点で残っている有給休暇を会社側に買い取ってもらうことは可能なのでしょうか。
結論から言うと、残念ながら、即日解雇の場合は残りの有給休暇を買い取ってもらうことは通常できません。
その理由は、前述した通り、雇用契約が消滅したタイミング(即日解雇の通知がなされたとき)で有給休暇も消滅してしまうためです。
ただし例外として、即日解雇であっても、就業規則に規定されている有給休暇買取の条件に該当する場合か、会社側が温情的に便宜を図った場合は、有給を買い取ってもらうことができます。
解雇・退職時に会社が有給休暇の残りを買い取る行為は、違法ではありません。
46日分の有給休暇を残して退職した職員が有給休暇の買い取りを学校側に求めた結果、退職者の有給休暇を買い取ることは違法ではないと認められた判例があることから、解雇・退職時に有給休暇を買い取ってもらったとしても法に触れることはありません(『聖心女子学院事件』神戸地判昭29.3.19)。
ただし、解雇・退職時の有給休暇の買い取りが違法ではないと言っても、有給休暇を買い取る義務が会社側に存在するわけではありません。
そのため、解雇・退職時に有給休暇の買い取りを会社側から打診されなかった場合は、労働者側から交渉して買い取りをお願いする必要があります。
また、有給休暇を買い取ってもらう場合の明確な金額の基準は存在しないため、買取金額をいくらにするのかも会社側と話し合って決めていくことになります。
しかし、就業規則に解雇・退職における有給休暇買取の規定が存在する場合、会社側は有給休暇を買い取る義務を負います。
就業規則に規定があれば、有給休暇を買い取ってもらう手続きもスムーズに進むでしょうから、解雇・退職時に有給休暇が残っていた場合は就業規則を確認するようにしましょう。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。