雇い止めを裁判で争ったら?|違法・無効となる基準は?

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

そろそろ更新月だったので会社に雇用契約の更新を申し込んだのに拒否された、更新されるつもりでいたから急な失業に困っている……。

このように期間が定められた契約の更新を拒否されることを、一般に雇い止めと呼びます。

このような雇い止めは無効であるとして、裁判で争うことはできるのでしょうか?

この記事では、雇い止めが違法・無効となるための条件、実際に裁判で争った例、裁判で無効と判断してもらうために必要なことについて解説しています。

無効となる違法な雇い止めとは?

前提として、雇い止めそれ自体がただちに違法となるわけではありません。

なぜなら、契約が終了した後に改めて契約更新をするかどうかは、当事者である会社側の自由に委ねられているためです(民法521条)。

ですが一定の条件を満たすと、雇い止めが違法となる場合があります。

雇い止めとはどういう意味?

雇い止めとは

有期労働契約 (期間を定めて締結された労働契約)を結んでいる労働者が、契約更新をされずに期間満了をもって労働契約を終了させられること

会社と労働者が結ぶ雇用契約は、期間の定めがない無期雇用契約と期間の定めがある有期雇用契約の2種類に分けられます。

いわゆる契約社員、アルバイト、パート、日雇い労働者などのほとんどが有期雇用契約の対象となります。

契約更新をしないこと自体は会社の自由に委ねられていますので、例えば、元から「1年だけ働く」と契約していたような労働者が1年後に雇い止めされることはさほど大きな問題とはなりません。

ですが実務的には、有期雇用契約を結んでいる労働者でも何度も契約更新を繰り返しており、実質的には無期雇用契約と変わらない、というような場合がよくあります。

そのような労働者に対して会社が突然契約更新を拒否する雇い止めは許されるのかが、しばしば問題となります。

雇い止めと解雇との違いは?

雇い止めとは雇用契約期間終了時に更新されないこと、解雇は契約期間中であっても労働者との雇用契約を終了させられることである点に違いがあります。

一方で雇い止めと解雇の両者は、実質的に会社側の一方的な意思表示によって労働者との契約が解除される、という点で共通しています。

そしてどちらも労働者を失業させるという強い効果を持つため、それぞれ「解雇(雇い止め)はこれらの条件を満たさないと違法」という法律上の条件が定められています(労働契約法16,17,19条)。

具体的には、解雇の場合には「客観的に合理的な理由」と、「社会通念上の相当性」がなければ違法となります。

【雇い止め法理】雇い止めが違法になる条件とは?

雇い止めについては、以下の条件すべてが満たされていれば、同一の条件で労働契約が更新されたとみなされます(労働契約法19条)。

  1. 期間の定めのある労働契約が過去に反復更新されたことがあり、実質的に期間の定めのない雇用契約と同視できる
    または
    期間の定めのある労働契約が更新されるものと期待することについて、合理的な理由がある
  2. 契約期間満了まで、または満了後遅滞なく、労働者が改めて労働契約締結の申込みをしている
  3. 会社が契約更新を拒絶することに客観的に合理的な理由がない
  4. 会社が契約更新を拒絶することが社会通念上相当でない

雇い止めの効力を争う際に特に問題になるのは、1の部分の条件です。

すなわち、会社側から「実質的に無期雇用契約と同視できるとは言えない」「契約が更新されることへの期待はなかった」と反論され、争いになることが多くなっています。

1を満たすかについては、以下の要素などが考慮されて判断されます。

  • 労働契約締結時に、契約更新について定めがあるか?
  • 労働契約締結時に、契約更新を示唆するような言葉があったか?
  • 実際の業務内容が、一時的なものか恒常的なものか?
  • 契約の更新回数はどのくらいか?
  • 通算の勤務期間はどのくらいか?
  • 契約更新にあたり、審査がなされているか?
  • 周囲の労働者も同様に契約更新されているか?

さらに具体的にどのような場合に1の条件が満たされるかについては、「雇い止めで裁判を起こしたらどうなった?」をご確認ください。

雇い止めは拒否できる?

最初に述べた通り、契約を更新するかどうかは会社の自由であるため、原則としては雇い止めを拒否することはできません。

例外として違法な雇い止めの場合、契約更新拒否は無効となります。

よってその場合は、雇い止めに対して拒否の意思表示を行い勤務し続けることは可能です。

もっとも、違法な雇い止めであることを会社がすんなり認めてくれることは少ないですし、契約更新を拒否された会社にその後も出勤し続けるのは精神的に難しいでしょう。

そのため、契約終了まで猶予がある場合は雇い止め拒否の意思表示をしっかり表しつつ更新拒否の無効・撤回を求める書面を提出するようにしましょう。

また契約終了後には同様の書面を内容証明郵便などで送りつつ、無理に出勤するのではなく弁護士やユニオン(合同労組)など外部機関の援助を借りつつ、雇い止めの効力を争う話し合いの場を持っていくようにするのが適切です。

雇い止めで裁判を起こしたらどうなった?

以下、実際に雇い止めの無効を争った裁判例を見てみましょう。

裁判例①実質的に無期契約と認められた例

この事案は、6ヶ月または2ヶ月ごとに契約を更新し、合計22年間タクシー会社に勤めていた労働者について、実質的に無期契約であり、合理的な理由を欠くとして雇い止めを違法としたものです(名古屋高判H29.5.18)。

長期間勤務していたことの他にも、勤務時間帯こそ違ったものの正社員とさほど変わらない業務に従事していたこと、他に雇い止めされる従業員がいなかったこと、雇用期間満了後に更新手続きが行われるなど契約更新が形骸化していた事実などがありました。

このような労働実態が実質的に無期契約であり、雇い止めすることは実質的に無期雇用労働者を解雇するのと同視できる、と認められました。

そのうえで顧客から無愛想であるとクレームを受けていたり、受付業務をサボっていたという事実もありましたが、いずれも雇い止めするほどの客観的に見て合理的な理由があるとは認められず、雇い止めは無効となりました。

裁判例②実質的に無期契約と認められなかった例

この事案は、1回の契約更新のうえで約1年6ヶ月間家電製品製造会社に勤務していた労働者について、実質的に期間の定めのない雇用契約が成立していたとは言えないとして雇い止めを有効と認めたものです(大阪地裁H28.10.20)。

特に契約の実態について、契約更新の際に改めて契約書が作成されていたこと、賃金等の中身も一部変更されていたことが注目され、実質的に無期契約であったとは認められないと認定されました。

一方で求人票に契約更新ありの記載があったこと、最長65歳まで雇用がありえると説明されていたことから、契約更新の期待があることには合理的な理由が認められました。

そのうえで上司に対して不当な目的で刑事告訴を行ったなどの行為は、雇い止めをする客観的に合理的な理由にあたるとして、雇い止めが有効と認められました。

裁判例③契約更新への合理的な期待が認められた例

この事案は、広告会社に29回の契約更新を重ねて約30年間勤務していた労働者の契約更新についての合理的期待を認め、雇い止めを無効としたものです(福岡地裁R2.3.17)。

勤務期間が相当長期にわたり、契約更新が形骸化していたといえることから労働者の契約更新への期待は合理的な理由に裏付けられていると認定されました。

一方で「〇年以降は契約更新しない」という内容を含む契約書に労働者がサインしていたという事情もありましたが、例外規定が設けられていたことや従前の契約更新状況から、合理的な期待を損なうものではないと判断されました。

その上で雇い止めのための客観的に合理的な理由として、会社は人件費削減や業務の効率化、労働者のコミュニケーション能力の問題が主張されていました。

ですがそれらは殊更に重視できない一般的な理由に留まるとして、雇い止めにかんして客観的に合理的な期待が無いと結論づけられ、雇い止めの無効が認められました。

裁判例④契約更新への合理的な期待が認められなかった例

この事案は、19回の契約更新を重ねて4年11カ月間、期間をおいてさらに14回の契約更新を重ねて3年7カ月間カフェに勤務していたアルバイトについて、契約更新への合理的期待はなく無期契約と同視はできないとして、雇い止めを有効と認めたものです(東京地判H27.7.31)。

勤務期間は長く契約更新を反復継続していた事実、責任者に近い業務に従事してきた事実は認められるものの、勤務頻度が落ちていたこと、契約更新の際には個別面談が実施されており更新手続きはしっかり行われていたことから、契約更新への期待は主観的なもので、合理的な理由があるとは認められないと判断されました。

そのうえで、アルバイトとしての勤務頻度の低さや店長との間に軋轢が生じていたとして、雇い止めには客観的に合理的な理由があると認定されました。

雇い止めで裁判を起こす前に|相談・撤回の手段は?

ここまで裁判例を紹介してきましたが、実は大半の雇い止め事例は裁判に至る前に、当事者間の話し合いや労働審判などで解決しています。

話し合いでは望んだ解決が得られないのではないか、とご不安に思うかもしれません。

そこで、雇い止めをされた時の裁判以外の解決手段の実態について、解説していきます。

雇い止めをされたらどこに相談する?

会社対労働者個人、という構図で交渉を有利に動かすことは難しいので、雇い止めにあったら弁護士や労働基準監督署、外部のユニオン(合同労組)に相談するのが有効です。

弁護士の場合、交渉や労働審判も見据えて適切な法律上のアドバイスを受けられます。
一方で、労働問題に精通している弁護士を自分で選ぶ必要があること、料金体系などは弁護士事務所によってまちまちであるため、注意が必要です。

各地の労働基準監督署には、総合労働相談センターが設置されており、そこで雇い止めの有効性についても相談できます。
また、雇い止めに伴い会社に賃金未払いなど労働基準法違反行為があれば、是正勧告や指導などが期待できます。

ユニオンは個人から加入できる会社をまたいだ労働組合であり、雇い止めなど不当な扱いについて相談を受けている場合があります。
加入しなくとも相談ができるか、受け付けている相談内容、料金などは様々であるため、事前に問合せを行うのが確実です。

雇い止めされたら会社都合退職として失業保険を受け取れる?

雇い止めされた場合でも、通常の失業と同様に失業保険(雇用保険)を受け取ることが可能です。

さらに以下の理由などで離職した場合、特定受給資格者(会社都合退職)にあたります。

  • 解雇による離職
  • 期間の定めのある労働契約の更新で3年以上雇用されていたのに、雇い止めされた場合
  • 期間の定めのある労働契約の締結の際に、契約が更新されることが明示されていたのに雇い止めされた場合

これらに該当すると、失業保険の給付日数や給付開始時期などの点で有利に扱われます。

なお、前提として雇用保険に加入しており、かつ加入期間が失業保険受給のための条件を満たしていることが必要となります。

裁判の前にできる労働審判とは?

会社と話し合いをしても解決に至らなかった場合、または話し合いの場をもってもらえなかったような場合、裁判の前段階として労働審判という手段をとることができます。

これは、裁判よりも簡易的な手続きで、裁判所の労働審判委員会のもとで話し合いを行い、当事者間の解決を目指す手段です。

労働審判の手続きのポイントは、以下の通りです。

  • 当事者が地方裁判所に申立てることで開始する
  • 原則として3回以内の審理で終結する
  • 話し合いで解決の見込みがあれば、いつでも調停がなされる
  • 労働審判委員会から、トラブルに応じた解決案が提示される
  • 解決案に納得がいかない場合は、通常の民事訴訟手続きに移行する

雇い止めで裁判を起こすには?

労働審判の解決案に納得がいかなかったり、または徹底的に証拠調べをしたうえで会社を争いたいとお考えの場合は、民事訴訟を起こすことになります。

雇い止めの場合は、雇い止めの撤回(雇用契約上の地位があることの確認)、未払い賃金の支払いを併せて請求することが多くなっています。

その主張内容と記した訴状をもとに、主に書面で答弁のやりとりを行い、最終的に裁判所の判決が下されます。

確定した裁判の判決、裁判上の和解、ならびに労働審判の内容についてはもはやそれ以上争うことはできず、判決の内容を実現するための強制執行を申し出ることが可能になります。

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