会社をクビになったらするべき6つのこと|不当解雇の要件、解雇後に請求できるもの

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

会社をクビ(解雇)になったら、まずは解雇予告通知書と解雇理由証明書の交付を会社側に請求します。

その後、労働組合や弁護士、労働局などに不当解雇に当たるのかどうかを相談し、不当解雇に当たる可能性が高い場合は、解雇無効の申立てを行うことになります。

解雇を受け入れる場合、解雇日の30日以上前に解雇予告が通知されていないのであれば、解雇日までの残日数に応じた金額を解雇予告手当として支払ってもらえます。

また、懲戒解雇が行われた場合であっても、退職金の一部または全額分を請求できるケースがあります。

これから解雇の種類や、不当解雇がなされた後に解雇を無効にする流れ、退職勧奨をされた際の対処法などを解説していきます。

最後までしっかりと目を通し、会社をクビになった場合・クビになりそうな場合の対応方法を学んでいきましょう。

「クビ」の種類4つと適用条件

一口にクビ(解雇)と言っても、解雇には大きく分けて以下の4つがあります。

  1. 普通解雇
  2. 整理解雇(普通解雇の一種)
  3. 懲戒解雇
  4. 諭旨解雇

いずれの解雇もそう簡単になされるものではありません。

これからそれぞれの解雇の意味・解雇が認められる要件などを解説していくので、ぜひご参考になさってください。

(1)普通解雇

普通解雇は、傷病により業務遂行能力が失われたとき、著しい勤務成績不良、協調性の欠如、業務命令違反などの理由でなされる解雇です。

普通解雇は容易に認められるものではなく、平均よりも職務遂行能力が劣っていたり、数回のミスをした程度ではまず認められません。

また、仮に就業規則に定められている普通解雇事由に該当する行為を労働者がしてしまったとしても、客観的に合理的な理由社会通念上相当であると認められる理由が無ければ、解雇権の濫用とみなされます(労働契約法16条)。

実際に、2週間に2度の寝過ごしで放送事故を起こしてしまったアナウンサーに対して普通解雇がなされたものの、解雇はいささか苛酷であり、合理性と社会通念上の相当性を欠くとして、当該解雇は解雇権の濫用であるため解雇の意思表示は無効になる、と判断された判例があります(『高知放送事件』最二小判昭52.1.31)。

そのため、客観的に見て軽微なトラブルで普通解雇が宣告された場合、解雇の無効を申立てることが可能です。

もしも会社から普通解雇を宣告されたら、各都道府県の労働局やみんなのユニオン、弁護士などに相談し、その解雇が不当解雇に当たるのかどうか判断してもらうことをおすすめします。

(2)整理解雇

整理解雇は使用者の経営上の理由によってなされる解雇で、普通解雇のひとつです。

整理解雇は通常、景気が後退したときや、業績が悪化した際などに検討されます。
一般的には、リストラ・早期退職者の募集という形で行われることが多くなっています。

使用者から整理解雇をなされたとしても、次の4つの要件をすべて満たしていない場合、解雇権の濫用であるとして解雇無効の申立てをすることが可能です。

①人員削減の必要性があるか

労働者を解雇せざるをえないほどの経営不振に陥っていなければ、整理解雇が認められない可能性が高まります。

経営不振を理由に整理解雇がなされる際は、具体的かつ客観的な経営悪化の証拠と、何人程度の人員削減が必要なのかを使用者から説明されなければなりません。
そのため、抽象的に「経営不振のため」「業界全体の動向が下り坂なので」と言われて整理解雇がなされた際は、後で解雇の無効が認められる可能性があります。

②解雇回避努力が尽くされたか

急な解雇は労働者にとって非常に大きな負担となります。
そのため、配置転換、出向、一時帰休、希望退職の募集、役員報酬カット、新規採用の削減や中止など解雇回避努力義務の履行が試みられずにいきなり整理解雇が実施された場合は、解雇権の濫用であるとみなされる見込みがあります。

ただ、解雇回避努力義務は画一的に判断されるものではなく、個別具体的な事情に応じて判断されます。

たとえば、「労働者の勤務先だった工場が閉鎖されることになったものの、企業側には労働者に対して用意できる現実的に可能な配転・出向先が存在していなかった。
また、老朽化した工場を閉鎖することは合理的な判断であり、労働組合との団体交渉の中で使用者は解雇の必要性を説明していて、退職金の上乗せや、会社の費用負担での再就職支援会社の利用も提案していることから、使用者が解雇回避努力を欠いているとまでは言えない」と判断した判例があります(『東洋水産川崎工場事件』横浜地裁川崎支判平14.12.27)。

上記の判例のように、労働者にとって納得のいく解雇回避努力がなされなかったからといって、ただちに解雇権の濫用に該当するわけではありません。
会社の規模や労働者の能力・立場などによって「どの程度の解雇回避努力がなされるべきのか」という基準が変わってきます。

③被解雇者の選定が合理的か

整理解雇がなされる際、使用者は客観的で合理的な基準を設定し、解雇する人員の選定を行わなければなりません。

基準を設定せずになされた整理解雇や、客観的かつ合理的ではない基準による整理解雇は無効とされるでしょう。

たとえば、「労働組合員を中心に解雇する」「経営陣のお気に入り以外を解雇する」などは合理的な理由ではないとして適切な選定方法とはみなされません。

逆に、適切な選定方法とみなされうる理由としては、「欠勤日数が多い者」「非正規雇用の者」「協調性がない者」などが挙げられます。

④手続きが妥当か

整理解雇が実施されるまでの間に、使用者から労働組合または労働者に対して整理解雇の必要性とその時期・規模・方法などの説明がなされなければなりません。

加えて、使用者は誠意をもって協議を行う必要があるため、整理解雇を実施する旨が一方的に伝えられて交渉の余地が無かった、という場合は不当解雇の可能性が高まります。

(3)懲戒解雇

懲戒解雇は、労働者の企業秩序違反行為への罰である懲戒処分の中で最も重い処罰です。

具体的な企業秩序違反行為とは、採用判断に重要な影響を与える経歴を詐称していた、2週間以上の無断欠勤をした、重大犯罪を犯した、重大なハラスメント行為を繰り返していた場合などが挙げられます。

懲戒解雇がなされた場合、退職金が減額される、または全額支払われない旨が多くの会社の退職金支払規定に定められています。

解雇予告期間を設けられずに懲戒解雇がなされた場合でも、使用者が所轄労働基準監督署長から解雇予告除外認定を受けていれば、解雇予告手当が支払われることもありません。

加えて、「前職を辞めた理由」が懲戒解雇になるため、転職活動や再就職活動にも悪影響を及ぼします。

このように、懲戒解雇は非常に重い処罰なので、普通解雇の客観的に合理的な解雇理由・解雇が社会通念上相当という条件に加えて、「就業規則に懲戒処分に関する事項があらかじめ記載されている」という厳しい条件が設定されています。

よって、懲戒解雇を通知されたとしても例えば「あまりにも処罰が重すぎる」として懲戒解雇の無効を主張できるケースがあります。

採用判断に影響しない学歴詐称(募集要項では学歴を指定していなかった等)、数回の無断欠勤や遅刻、私生活上の非違行為などであれば、懲戒解雇を無効にできる見込みがあります。

(4)諭旨解雇

諭旨解雇とは懲戒処分のひとつで、懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇よりも一段階軽い処分です。

企業秩序を乱したり、重大犯罪を犯した場合など、懲戒解雇がなされてもおかしくない事案でありながら、処分を若干緩やかにした解雇が諭旨解雇です。

会社によっては、懲戒解雇では退職金が支給されないものの、諭旨解雇の場合なら退職金の全額または一部が支給される旨が退職金支払規定に定められているケースがあります。

諭旨解雇も懲戒処分の一種なので、懲戒解雇と同様に解雇の有効性を争うことが可能です。

会社をクビになったらやるべき6つのこと

会社をクビになったら、または解雇通知を出されたら、以下のことをするべきです。

  • 解雇予告通知書、解雇理由証明書を請求する
  • (不当解雇の場合)解雇無効を主張する
  • (解雇を受け入れる場合)解雇予告手当を請求する
  • (〃)退職金を請求する
  • 未払い賃金、未払い残業代の請求をする
  • 失業保険の手続きを行う

以下、具体的にどのような意味があるのか確認していきましょう。

(1)解雇予告通知書と解雇理由証明書を請求する

会社をクビにされた場合、まずは会社に解雇予告通知書解雇理由証明書の交付を請求します。

解雇予告通知書には解雇予告日、解雇日、解雇理由などが記載されていて、こちらの通知書でいつ解雇されたのかを確認することができます。

解雇理由証明書には具体的な解雇理由が記載されていて、解雇の有効性について争う場合には、証明書の記載に基づいて第三者機関が解雇の有効性を判断したりします。

ただ、解雇予告自体は口頭でも問題は無いため、解雇予告通知書が交付されない場合もあります。

解雇理由証明書に関しては、労働者が解雇予告日から退職日までの間に請求すれば使用者は遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条2項)。

ただし、労働者側から自分で請求しなければ、会社側に解雇理由証明書を交付する義務は発生しないことに注意しなければなりません。

なお、解雇理由証明書を解雇日までに請求しなかったとしても、解雇予告日から2年間は証明書の交付を請求することができます(労働基準法115条)。

(2)不当解雇なら解雇の無効を会社側に申立てる

解雇を宣告されたとしても、それが不当解雇だと思う場合、解雇の無効を会社側に申立てることが可能です。

上でも解説しましたが、たとえば以下のようなケースだと不当解雇の可能性が高まります。

  • 「能力不足だから」というだけの理由で解雇された
  • 配転や希望退職の募集、報酬カットなどがなされずに整理解雇された
  • 客観的に見て軽微な非違行為で懲戒解雇・諭旨解雇がなされた

解雇の無効を申立てる際は、まず、就労の意思があることを会社側に書面を送るなどして伝えます。

就労の意思を伝えても会社側が解雇を撤回しない場合、以下のような手段で解雇の無効を主張することになります。

  • みんなのユニオンなどの労働組合に加入して団体交渉をする
  • 裁判所に労働審判を申立てる
  • 訴訟を提起して解雇無効を主張する
  • 各都道府県の労働局に労働紛争解決のあっせんを依頼する

もしも解雇が無効であると認められた場合、解雇日から判決日まで就労していれば得られたはずの賃金(バックペイ)が支払われるでしょう。

また、不当解雇にあたり労働者の権利が侵害されるような不法行為が存在した場合、会社に対して慰謝料などの損害賠償請求が認められる可能性もあります。

(3)解雇予告手当を請求する

解雇の無効を申立てず、解雇を受け入れる場合、解雇予告手当を請求できるケースがあります。

解雇がなされる際は、解雇日の30日以上前に解雇予告が通知されなければなりません。
もしも30日以上前に解雇予告が出されなかった場合、解雇日までの残日数に応じた金額を解雇予告手当として支払ってもらうことができます(労働基準法20条)。

そのため、「今日でクビだから明日から会社に来なくていい」などと使用者から即日解雇を宣告された場合は、少なくとも30日分の解雇予告手当が支払われます。

解雇予告日の10日後が解雇日と設定された場合は、少なくとも20日分の解雇予告手当が支払われます。

なお、解雇予告手当は以下の計算方法で算出されます。

解雇予告手当の計算方法

1日分の平均賃金 × 解雇予告期間が30日に足りなかった日数

平均賃金は原則として「直近3ヶ月間に支払われた賃金総額を、その期間の総日数で除した金額」となります(労働基準法12条1項)。

なお、その3ヶ月の間に傷病による療養期間や産前産後の休業期間があった場合、平均賃金が低く算出されないようにするため、法律上の調整が入ります(労働基準法12条3項)。

注意点として、労働者の責に帰すべき事由での解雇(懲戒解雇)であり、会社が労基署の除外認定を受けているような場合は、解雇予告手当は支払われません(20条1項但し書き、3項)。

(4)退職金を請求する

多くの企業では、「懲戒解雇の場合は退職金は支払わない」という旨を就業規則で定めています。

ですが懲戒解雇されたとしても、退職金を請求できるケースがあります。

裁判例上、退職金が全額不支給になるのは「当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があること」が条件となっています。
つまり、重大な犯罪行為や企業秩序を著しく乱す行為などでなければ、懲戒解雇がなされたとしても退職金は(一部)支払われる見込みがあるということです。

たとえば、鉄道会社の従業員が痴漢行為を行い、懲戒解雇された事例では、当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不審行為ではないとして、本来の退職金の支給額の3割が認められています(『小田急電鉄事件』東高判平15.12.11)。

そのため、もしも懲戒解雇がなされて退職金が不支給になったとしても、事案によっては退職金の一部または全額分の支払いを求めることが可能です。

(5)未払い賃金、未払い残業代の請求をする

もしも会社側に未払いの賃金や残業代が残っている場合、退職金などと同時に請求するのが一般的です。

実際に請求するときは、その賃金の種類(月給、手当、賞与など)・金額・金額を示す証拠などを確認し、内容証明郵便を送るのが効果的です。

またこれとは別に、解雇無効を主張しておりそれが認められた場合、解雇無効が確定するまでの間の賃金を請求することもできます。

(6)失業手当(失業保険)の申請をする

まだ転職先が見つかっていない場合には、再就職までの期間の生活を安定させるために失業手当(失業保険)の受給手続きを行うことが考えられます。

このとき、離職理由が自己都合退職か会社都合退職かで、給付のための条件と給付開始時期・給付期間が異なってきて、会社都合退職の方が有利に取り扱われます。

解雇は、一般に会社都合退職にあたります。

離職日以前1年間に雇用保険の被保険者期間が通算6ヶ月以上ある方が解雇後にハローワークで失業手当の申し込みを行えば、7日間の待期期間を経た後失業手当(雇用保険の基本手当)が支給されます(実際に口座に振り込まれるのは申請に行ってから約1ヶ月後)。

ただし、労働者の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合、7日間の待期期間+3ヶ月間は失業手当が支給されない点にご注意ください(雇用保険法33条)。

なお、失業保険の受給手続きにあたっては離職票の提出が必須となりますので、会社に交付を依頼する必要があります。

退職勧奨されたとき・クビにされそうなときの対処法

退職勧奨に安易に合意してはいけない

会社側から退職勧奨をされても、素直に応じる必要はありません。

既に解説した通り、解雇が認められる条件は非常に厳しいです。

そのため、会社側はいきなり解雇を宣告するのではなく、退職勧奨という形で労働者に自己都合退職を促すことがあります。

退職勧奨に応じて退職してしまった場合、後から不当解雇として争うことが困難になります。

そのため、会社側から退職勧奨をされたとしても、安易に合意はしないようにしましょう。

ただ、場合によっては何十回も執拗に退職勧奨をされたり、何時間も会議室に拘束されたり、罵声を浴びせられることもあります。
そのような強迫に当たるほどの強要がなされ、嫌々ながらも退職に合意した場合、退職強要であるとして民法96条に基づき退職の意思表示を取り消すことが可能です。

退職強要をされて退職に合意してしまった場合、みんなのユニオンなどの労働組合、弁護士、労働局などに相談すれば、今後の対処法などを提示してくれるでしょう。

「自己都合退職しないならクビにする」は退職強要になりうる

退職強要に該当する事例を1件紹介します。

労働者が横領などの問題を起こしてしまった結果、使用者から以下のような退職勧奨をされるケースがあります。

自己都合退職をしないなら、告訴するか懲戒解雇にする。
そうなるとあなたの将来や子供の就職に支障が生じるだろうから、自己都合退職にしたほうがいい」

このように、告訴や懲戒解雇がなされた場合の不利益を説かれ、畏怖した労働者が退職に合意したものの、告訴や懲戒解雇後の不利益を説いて退職を迫るのは強迫行為であるとして退職の意思表示の取消を認めた判例があります。(『ニシムラ事件』大阪地決昭61.10.17)

そのため、上記のようなことを言われて退職に合意してしまったとしても、後から解雇の無効を申立てることが可能です。

会社から提示された改善案を実施する

解雇される前に、通常は会社側から当該労働者に対して指導・教育がなされます。

その指導・教育を受けた結果、勤務態度を改めれば、労働者が解雇される根拠は弱まるでしょう。

しかし、指導・教育が何度もなされたにも関わらず、労働者が改善しなかった・改善しようとしなかった場合、解雇後に解雇の無効を認めてもらうことは難しくなります。

実際、上司の指示に従わない、周りの判断を仰がずに独断で事務処理を行う、などの行為が問題視されて4回のけん責処分を受けたものの、態度に変化が見られなかったため、就業規則の「勤務成績又は能率が著しく不良で、就業に適しないと認めるとき」に当たるとして解雇が認められた判例があります(『カジマ・リノベイト事件』東京高判平14.9.30)。

会社側から指導・教育がなされずにいきなり解雇された場合は不当解雇の可能性が高まりますが、そうではない場合、労働者は改善努力をして解雇されるリスクを抑えるべきでしょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。