不当解雇・退職勧奨の
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軽い気持ちで上司の悪口を喋っていたのが本人にバレた、個人的なブログで会社の愚痴を書き込んだら呼び出された……。
友人との会話、メール、SNSなどインターネット上での投稿で、日々の出来事に交えて上司や会社の悪口にもあたるような言葉を表現している方も少なくないでしょう。
もしもそれが会社にバレてしまったら、クビになることもありえるのでしょうか?
この記事では、上司や会社への悪口が何故バレてしまうのか、クビになる可能性はあるのかについて解説していきます。
悪口と一言で言っても、ちょっとした愚痴でしかないものから、犯罪にあたりうるようなもの、単なる噂話から社内の重要な秘密にあたるものまで様々です。
まずは実際どのような形で悪口が上司に伝わってしまうのか、どんな悪口を言ったら犯罪行為にあたってしまうのかを見て、ご自身の置かれている状況がどの程度深刻なものかを把握してみましょう。
まず口頭でおしゃべりをしていたような場合、たまたま上司本人に聞かれてしまったり、または別の社員が耳に入れたのを上司に報告する、という場合があります。
インターネット上での発言の場合には、その発言が広まって会社の人間の目についてしまったとか、これまで見逃されてきたものの会社側の許容限度を超えてしまった、ということが考えられます。
実際、会社は採用過程の時点から労働者のSNSなどを把握していることも少なくありません。
さらには、インターネット上の行き過ぎた悪口に対して法的措置を行ったところ、発言主が社員と判明したという事案もあります。
仕事や職場に関する不満を口にしてガス抜きをすることは大事ですが、本人に繋がりうるような場では口にしないこと、次に述べるような行き過ぎた発言には気を付けるべきでしょう。
悪口はその内容や言い方によって、以下の罪に該当する可能性があります。
さらに上記の犯罪行為にあたらなくとも、上司のプライバシーにあたる事実を悪口として広めてしまったり、発言によって上司が傷ついたと主張するような場合は、民事上の損害賠償請求を起こされるというリスクもあります(民法709条)。
上記のような犯罪行為にあたる・あたらないに関わらず、会社からクビ(解雇)を言い渡されることがあるのには、悪口行為が以下の問題点を孕んでいるためです。
実際に信頼関係が破壊されたなどと言えるのかはともかく、上司の悪口を言うことが以上のような点で会社から問題視されることがある、ということです。
それでは、上司の悪口を言っていたことで実際に「クビ」と言い渡された場合のことを考えてみましょう。
まず、その「クビ」がどのような性質のものなのか確認すべきです。
言葉としては同じでも、実際に要求されていることとしては以下の2パターンが考えられます。
具体的には、会社から一方的に「君を解雇する」「もう来なくていい」と、労働契約の終了を告げられた場合は解雇にあたります。
一方で、「会社をやめてほしい」「他の会社の方がいいんじゃないか」と、労働者自身になんらかの行動を求めているのであれば退職の勧奨にあたります。
このどちらにあたるかによって、その後とるべき対応や法律的な問題が変わってきます。
まずは、クビ宣言が解雇の通知であるのか、退職の勧奨であるのかを確認しましょう。
「クビ」が退職の勧奨である場合、労働者はそれを拒否することができます。
何故なら、会社からの「労働者に自主的にやめてもらえないだろうか」というお願いなのですから、当然労働者側には断る権利があります。
一方で「クビ」と言われたことが正当な解雇の通知であった場合、労働者は拒否することができません。
民法上の原則として、契約は片方から一方的に解除することができるためです(民法540条)。
ですが解雇の通知を拒否できないとしても、その解雇自体が違法・無効である可能性もあります。
もしも解雇が違法・無効である場合は解雇の撤回を求めることができたり、退職するとしても解決金を受け取れる可能性があります。
解雇の違法・無効を争うパターンについては、「上司への悪口で結局クビに、この解雇は無効?」で解説します。
「クビ」が退職の勧奨であり、労働者が拒否し続けたとしてもその後「業務命令に従わなかった」という理由で解雇が通知される場合があります。
そうなると、労働者は解雇を拒否することができなくなります。
ですがその場合も、解雇自体の有効性を争うことで解雇を撤回させたり、会社から金銭を受け取れる可能性があります。
詳しくは「上司への悪口で結局クビに、この解雇は無効?」をご覧ください。
ここからは、上司へ悪口を言っていたことがもとでクビ(解雇)を言い渡されたが、解雇の違法・無効を主張していきたい方に向けてその方法や実際の判例を解説していきます。
会社が一方的に言い渡してくる解雇は、以下の2つの条件を満たしていなければ解雇権の濫用として違法・無効となります(労働契約法16条)。
例えば、「あのハゲ」というような一般的には些細な悪口を言ったというだけでは、会社の秩序を乱したとか信頼関係が壊れたとか、私生活での非行とは言えず、解雇をする客観的に合理的な理由があるとは到底言えません。
または、悪口についてなんら会社が注意やその他手段をとっていなかったのに急に解雇を言い渡されたような場合は、本当に解雇するしかなかったのか、解雇することが社会通念上相当であると言えるのかは非常に疑問です。
よってクビ(解雇)が違法・無効となるかについては、悪口の態様や会社の業務への影響、クビを告げるまでの経緯、会社側の対応などを考慮して、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるかを判断していきます。
さらに懲戒処分として行われる懲戒解雇である場合は、悪口を言ったことが就業規則に記載されている懲戒事由に該当する必要もあり、一層解雇をするハードルは高くなっています。
クビと言い渡されたものの、家族や友人のためにも今の会社に解雇されたくないとお考えの場合は、解雇の撤回を求めることが考えられます。
解雇の撤回を求める方法の流れとしては、以下のようになっています。
いきなり訴訟を起こすのではなく、まずは会社に対して「こういった理由で解雇は無効と考える。早急に私に対する解雇を撤回してほしい」という旨の内容証明郵便を送ります。
会社がそれに応えて解雇撤回の決定をしてくれたら、晴れて職場に戻ることができます。
さらに解雇日から撤回までの間、支払われなかった賃金についても請求することが可能です。
もっとも会社がすんなりと撤回に応じてくれることは少なく、その場合は弁護士などの力を借りたりしながらも労働審判・訴訟で争っていくことになります。
クビを言い渡され、そのような解雇は不当だと思うものの気まずさや申し訳なさから解雇自体は受け入れてもいい、とお考えの場合は会社からの慰謝料や和解金の請求といった方向に活動することが考えられます。
もしも会社からの未払い賃金や残業代がある場合、それらもまとめて請求することが多くなっています。
その場合も、おおまかな手順は解雇撤回を求める場合と変わりません。
もっとも、損害額の算定などお一人で争っていくのは難しい分野も含まれています。
会社という力のある組織を相手にするのですから、お一人でなんとかしようとせず、気軽に次に述べるような相談窓口を利用しましょう。
内容証明郵便、労働審判、訴訟…という手段をとるにあたって、ご自身やインターネット上の知識だけでは不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合は、ユニオン(会社外の労働組合)や、労働問題を取り扱っている弁護士事務所に対して、ご自身の解雇について相談をすることができます。
もし不安が小さくとも、専門家から見ると「そもそもクビになるような悪口ではない」「会社の対応がおかしい」と思われるようなケースも多々あります。
まずは事態を客観視するためにも、外部に相談してみることが大事です。
一般的には、解雇の有効・無効の判断にあたっては以下の要素が考慮されます。
それでは、「上司や会社の悪口を言ったらクビにされた」という事案で、実際に解雇が有効・無効のどちらになったかを見ていきましょう。
この事案は上司に対し「課長を何年やっている」「課長の資格はない」と面と向かって言ったほか、繰り返し周囲との衝突を繰り返していた労働者の解雇を有効としたものです(東京地裁H19.9.14)。
ただし悪口だけで解雇されたわけではなく、日ごろからの問題行動の繰り返し、会社からの指導に対する批判的な態度、周囲との軋轢を招く勤務態度などがあいまって、上司との信頼関係が回復不可能なほどに破壊されてしまっている、と判断されました。
また、この判例のなかではたとえ正論であっても、物の言い方やあからさまに苦情を入れる態度が問題となりうることが示唆されています。
たとえ悪口にあたる内容が正当なものであったとしても、その発言態様や勤務態度次第で解雇となりうる、ということがわかります。
この事案は雑誌記事などを通して、高校の理事長に対し生徒への人権侵害や学校予算の不明朗性について述べていた教師の解雇を有効としたものです(最判H6.9.8)。
実はここでのいわゆる悪口にあたる記事内容は、真実ではない、ないし真実と信じるに足る証拠はないものでした。
そのような虚偽・誇張された内容による誹謗中傷により、労働契約上の信頼関係は著しく損なわれたとして、解雇は有効と判断されました。
悪口にあたる内容が虚偽であったり、また真実と信じるに足りる十分な証拠がないような場合は、解雇が有効と認められやすくなります。
この事案はインターネットの掲示板2ちゃんねるで、同僚の論文に対し「捏造」「相当やばい」などと書き込みをし、注意されたもののその後自主退職しなかった大学の准教授への解雇を無効としたものです(東京高判H29.9.7)。
悪口の内容が抽象的であったこと、注意を受けた後は掲示板への投稿をやめていること、掲示板への投稿により実際の大学運営への支障があったとは認められないことなどから、客観的にみて合理的な理由がないとして解雇が無効と判断されました。
なお、裁判の中で「2ちゃんねるへの書き込みは一般に信憑性がない(から、悪口を書き込んでも重い問題とはならない)」という主張がなされていますが、「書き込みの内容や具体性、表現によっては真実と読み取られうる」と判断しています。
「信じる人はいないだろう」と思っての発言であっても、その内容によっては解雇事由として問題となりうることに注意しなければなりません。
この事案は人材派遣会社において、有給の申請方法をめぐり上司に「ばかやろう」と発言した外国人社員に対する解雇を無効としたものです(名古屋地裁H19.5.9)。
会社側はその発言などについて職場秩序を乱したと主張しましたが、1回限りの悪口について、客観的に合理的な解雇事由があるとは言えないと判断されました。
悪口の内容だけではなく、それが突発的になされたものか継続的に行われていたかも判断要素となる、ということです。
またその他の解雇の判断要素として、悪口を言っていた状況や聞いた人数が挙げられます。
実際に、執行部と対立していた労働者が「理事長は変なことをしている」と従業員3名に話した事案について、その対立状況や言動の相手方が少数にとどまることなどを理由に、解雇を無効と判断しています(鹿児島地裁H3.5.31)。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。