会社都合で整理解雇されたら?4要件を確認して不当解雇と戦おう

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

会社都合で整理解雇された…整理解雇が適法かは4要件でわかる

整理解雇は、業績が悪化している会社が、事業を継続させるために人員整理をする解雇です。

コロナの影響で経営が苦しくなった企業が整理解雇に乗り出すことも多くなっていますが、どんな場合でも認められるわけではありません。
過去の裁判では、4つの要素を検討し、適法か否かを判断しています。

整理解雇の4要件とは?中小企業では?

整理解雇が認められるためには、①人員整理の必要性、②解雇回避努力義務の履行、③被解雇者選定の合理性、④手続の妥当性が必要です。

①人員整理の必要性

整理解雇をするには人員削減をしなければ経営を維持できないという事情が必要です。必ず倒産する、という程度までは求められませんが、少なくとも債務超過や赤字累積など、具体的に経営を維持する困難さがあることが必要です。
そのため、単に売り上げた少ないというだけでは、この要件を満たしません。

②解雇回避努力義務の履行

解雇を回避するための努力を最大限していなければ、整理解雇はできません。配転や出向、一時帰休などの措置を具体的に提案していることが必要ですし、希望退職の募集をかけることも求められます。また、雇用調整助成金など、公的な手続きを使わずに安易に解雇することも努力義務を怠っていると評価されます。

③被解雇者選定の合理性

上記2つの要件が満たされたとしても、解雇される者を「客観的で合理的な基準」で選ぶ必要があります。単に好き嫌いで選ぶ場合はもちろん、業務上必須でないにも関わらず、性別や年齢だけを基準に安易に選ぶことは合理的ではないと考えられます。一般的には、欠勤日数や遅刻回数、命令違反回数、勤続年数などを基準にすることが多いです。

④手続の妥当性

また、整理解雇をする際には対象者に整理解雇がなぜ必要か、その時期や規模、方法について十分な説明を行い、誠意をもって協議をする必要があります。そのため、いきなり整理解雇を言い渡された場合などは、この要件を満たしません。事前に整理解雇の可能性を伝えていても、協議を拒否していたようなケースも同様に違法となります。

以前は4要件を全て満たさなければ解雇は無効だとされていました。
しかし、最近はそれぞれの要素を総合的に判断するという裁判例も増えています。そのため、1つの要素が不十分でも、他の要素が重大な場合に解雇が認められるケースもあります。(東京地決平12.1.21ナショナル・ウエストミンスター銀行事件など)


とはいえ、解雇は働く人の職を一方的に奪うものですので、これらの要素を満たすことが強く求められることには間違いありません。(熊本地判平16.4.15などは4要件を厳格に満たす必要があると明示しています。)

整理解雇で退職金・手当はもらえる?

整理解雇時も退職金や手当をもらえることがあります。法律上必須とはされていませんが、就業規則などの社内規則で退職金等の定めがないか、確認することが必要です。懲戒解雇と異なり、会社側の都合で解雇されるため、退職金などが上乗せさせるケースもありますので、会社と協議をしたり、労働組合から働きかけてもらうことも大切です。

退職届を求められたら拒否すべき?

整理解雇はあくまで「解雇」なので、一方的に会社から押し付けられるものです。ただ、現実的には「解雇」ではなく「合意退職」で済ませてしまおうとする会社もあります。働く人が会社と合意で退職した場合は、解雇予告手当などがもらえなくなったり、自主退職として失業保険で不利になることもあります。
退職届を求められても提出を拒否する、合意書などへのサインもしっかりと拒否しましょう。

会社都合の整理解雇と自己都合退職の違いは?

「会社都合」とは解雇の理由が会社側にあることで、業績悪化を理由とする整理解雇は会社都合解雇の代表例です。一方で「自己都合」とは職務外での病気など、働く人に退職の理由があることです。
会社都合の整理解雇と、自己都合退職には大きな違いがあります。

失業保険はすぐ受け取れる?

失業保険は基本的に、離職票の提出と求職の申込みをハローワークで行った日(受給資格決定日)から通算7日間(待期期間)が経った後から受け取れることになっています。しかし、自己都合退職の場合は、この待期期間終了後、さらに3か月間給付を受け取ることができません。そのため、自己都合退職の合意書などに安易にサインをしないよう、しっかりと拒否をすることが大切です。

解雇予告手当を受け取れることも?

解雇予告手当とは、会社から「解雇日の30日以上前の予告」なく解雇された場合に受け取れる手当です(労働基準法20条2項)。あくまで30日以上前に予告がないことが必要なため、それ以前のタイミングで整理解雇の予告を受けていれば、受け取ることはできませんが、日数を確認して受け取れる場合には忘れず請求しましょう。

履歴書に会社都合退職・解雇とあると不利?

履歴書に会社都合退職・解雇と書いても不利にはなりません。会社都合退職・解雇とはあくまで「会社側の事情」が理由となるため、働く人個人に問題がなかったといえます。新しい会社としては、退職や解雇という事実より、その理由を重視しますので、整理解雇のような「働く人に責任が全くない事情」での退職であれば、不利にはなりません。

不当な会社都合の整理解雇を相談&裁判するときの手続きは?

会社都合の整理解雇の相談先は?

会社都合だとしても、不当に整理解雇をされてしまった場合は、まず最寄りの労働組合に相談してみましょう。解雇の事案を多く扱ったことのある労働組合であれば、その整理解雇が不当なものかどうかをすぐ判断することができます。不当な場合はそのまま「団体交渉」を依頼することで、是正や解決を目指すことができるでしょう。

また、労働基準監督署に相談をすれば、法律違反があるような場合に電話での指導をしてくれることもあります。労基署からの監督は一定のプレッシャーがかかりますので、自発的に整理解雇を見直してくれる場合もあるかもしれません。

また、金銭的に余裕がある場合は、最初から労働問題に強い弁護士に依頼することも選択肢としてあるでしょう。 

整理解雇で裁判をするときの手順は?

整理解雇について裁判で争う場合の手順として、まずは労働問題に強い弁護士を探しましょう。裁判では上記の4要件を主として争うため、判例を熟知し、「どの程度であれば要件を満たすのか」という相場観を知っている弁護士である必要があります。

委任を受けた弁護士は、訴状を裁判所に提出し、①社員たる地位の確認、②バックペイ、③慰謝料などの請求をすることになります。会社側の主張に反論しながら進めていきますが、裁判は1審の判決がでるまで半年や1年程かかることも珍しくありません。高等裁判所に控訴などをすれば、さらに時間がかかります。

整理解雇の和解金の相場は?

上記のように裁判を判決が出るまで行うと、非常に長い時間がかかります。
整理解雇の場合、その間に会社が倒産しないように気をつけなければなりません。
このような事情から、裁判ではなく和解で迅速に解決を目指す場合も多いです。和解であれば両者が合意さえすれば成立しますから、早ければ数日で解決してしまいます。

その際には和解金が支払われますが、一番問題になるのがその額です。
個別事情によりますが、一般的には3~6か月分が整理解雇の和解金相場といえます。
もし会社が上記の4要件を全く満たしていないような場合は、これよりも高額になっていきますし、逆に手続きをしっかりと踏めば、少額になることもあります。

たとえば、整理解雇といいつつ、単なる嫌がらせだった場合には12か月分程度になることもあるでしょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。