12種類の解雇理由からわかる解雇の有効・無効の基準

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会社から解雇を言い渡されたときは、まず解雇理由を確認することが大事です。

解雇理由は失業保険を受け取る際の条件に関わってくるだけでなく、もしかするとその理由には合理性が認められず、解雇は無効となるかもしれません。

実際に様々な解雇理由を想定してみて、解雇が許されるかどうか考えてみましょう。

会社は労働者を簡単には解雇できない!

会社は、労働契約の当事者として労働者を解雇することができます。

ですが一方的に労働契約を打ち切ることは労働者への打撃が大きいため、実際には以下のような法律などで会社の解雇権は制限されています。

第十六条 
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法16条

つまり、解雇の理由が①客観的に合理的であり、かつ解雇処分が②社会通念上相当であるという、2つの条件を満たさなければ解雇は無効となります。

「客観的に合理的」な解雇理由かどうかは、おおよそ以下の4類型にあてはまるかで判断されます。

  • 労務提供の不能、労働能力または適格性の欠如、喪失
  • 職場の秩序を乱す
  • 経営上の必要性(整理解雇)
  • ユニオン・ショップ協定に基づく解雇

さらに上記のような客観的に合理的な理由があるとしても、その事由が重大であり、他に解雇回避の手段がなく、労働者側に考慮されるべき事情が無いような場合でなければ、社会通念上相当とは言えないとして、解雇が無効となります。

それでは、実際に考えられる解雇理由を見ていきましょう。

協調性不足による解雇は認められる?

例えば「協調性がない」という理由は、労働の適格性の欠如または企業秩序を乱す行為に該当する可能性があります。

ですが協調性は人間関係の問題であるので、注意を重ねる・配置転換を行って人間関係をリセットするなどの回避手段があります。

よって協調性不足のみを理由に、上司からの注意や配置転換の試みなどがなされることなく、有効な解雇がなされることはごく少ないと考えられます。

ですが複数回の注意や配置転換があったものの改善が行われない、協調性不足が業務に著しい支障をきたしている、協調性不足の結果職務規律違反や業務命令違反が繰り返されている、などの事情があれば、解雇は有効になりやすくなる、と言えます。

遅刻・欠勤など勤務態度不良による解雇は認められる?

遅刻・欠勤が多い」という理由では、通常の範囲であれば解雇に至ることはあまりありません。

なぜなら遅刻や早退があっても、労務提供に大きな影響があるわけではなく、また無断欠勤も数回であれば他の日に適切に就労することで一応は労務を提供しているといえるためです。

ですが是正のために注意し反省を促したにもかかわらず改善されないなど、今後の改善の見込みがない場合、力不足や不適格性など他の解雇理由もあわさっている場合などには、解雇が有効となる可能性もあります。

労働組合に加入しないことによる解雇は認められる?

労働組合に加入していない」ことを理由として、会社から解雇を言い渡されることがあり、このような解雇は意外にも有効となることがあります。

一般的には会社は社員が労働組合に入るのを良く思わない、というイメージがありますが、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。

それは、ユニオン・ショップ協定によるものです。

ユニオン・ショップ協定とは、会社と労働組合とが締結する労働協約において、職場における労働者は必ず労働組合に加入しなければいけない、会社は加入しない労働者を解雇する義務を負う、と定めているものです。

このような定めは労働者の結社の自由を侵害しているようにも思えますが、一般に労働組合に加入することは労働者に有利となることから、ユニオン・ショップ協定自体に違法性はありません。

ですが例外として、労働者が他の組合に所属している場合や、新たな労働組合を結成した者についてまで特定の労働組合に加入していないのを理由に解雇することは認められません。

内部告発をしたことによる解雇は認められる?

会社の労働基準法違反を労基署に連絡したところ、「内部告発にあたって会社の秘密を漏洩した・名誉を毀損した」という理由での解雇は、内部告発の態様によって有効かどうかが決まります。

公益通報者保護法は、公益通報(いわゆる内部告発)をしたことを理由とする解雇を無効としています(公益通報者保護法3条)。

なお、内部告発行為は会社の企業秩序を乱すことも確かですので、内部告発を行った労働者が保護されるかについて、以下の4つの条件を満たしていることが必要となります。

  1. 告発内容の真実性
  2. 告発の目的
  3. 告発の手段・方法の相当性
  4. 通報先による個別の保護要件

第一に、告発内容が虚偽ではなく真実である、または真実であると信じる相当の理由があることが大前提となります。

第二に、告発行為の目的が法律違反や不正の是正にあり、会社への報復などではないことが求められます。

第三に、企業内部で違法行為を是正するための窓口が設けられているなど、より穏当で効果的な手段があったり、または告発内容の証拠を不正に入手していたなどの事実がないことを求められます。

第四に、公益通報者保護法においては内部告発者の通報先がどこかによって解雇から保護されるかが決まってきます。

例えばまさに通報対象事実が起こっている社内への通報であれば、その事実が「まさに生じようとしていると思料する」場合で足ります。

一方で労基署など行政機関に対する公益通報は、思料するだけでなく、信ずるに足りる相当の理由が必要とされます。

さらにマスコミなど第三者への通報は、思料することまたは信ずるに足りる相当の理由があることに加えて、労務提供先や行政機関に通報すれば解雇等の不利益取り扱いを受ける、または証拠隠滅のおそれがあると信ずるに足りる相当の理由があるなど、より厳しい要件が必要となります。

転勤命令の拒否による解雇は認められる?

会社から急に淡路島に転勤しろと命じられた、それを断ったら解雇をちらつかされたなど、「転勤命令を拒否した」という理由での解雇も有効となってしまう場合があります。

まず転勤命令を出すこと自体は、労働者の不利益が通常甘受すべき程度であれば、違法とはなりません

有効な転勤命令の場合、その転勤命令を断ることは業務命令に違反し企業秩序を乱しうるため、解雇理由として一応の合理性があります。

よって実際に解雇が違法とならないかは、そもそもの転勤命令によって労働者が被る不利益の程度、転勤命令を拒否したときに十分な打診や説明があったか、解雇以外の方法が無い状況だと言えるのかなど、解雇することの相当性によって判断されます。

労働者に非がある場合の解雇の有効性

職場で喧嘩をしてしまった、窃盗行為をしてしまった、セクハラをしてしまったなど、労働者に明確な非があって解雇を言い渡される場合もあります。

ですが、たとえ上記のような事実があったとしても、解雇まですることが社会通念上相当とは認められないこともあります。

解雇を言い渡されたときも落ち着いて、様々な事情を検討してみましょう。

同僚を殴ったことによる解雇は認められる?

職場で上司や同僚に対して暴力をふるうことは傷害罪(刑法204条)に該当し、さらに周囲へ直接の損害を及ぼしていることから企業秩序を乱す行為であり、またカっとしやすいという点から適格性の問題も浮上してくる、非常に解雇になりやすい事実であると言えます。

ですが以下のような事情が複数あれば、解雇することの相当性までは認められない、と判断される場合もあります。

  • 日常の勤務態度に問題がない
  • 相手方にも責任がある
  • 暴行の態様が軽い
  • 傷害の結果が軽い
  • 暴行に至った経緯が偶発的
  • 職場の秩序への影響が小さい
  • 刑事事件として立件されていない

社内でものを盗んだことによる解雇は認められる?

社内の備品や売上を盗むことは窃盗罪(刑法235条)または業務上横領罪(刑法253条)に該当し、職場の秩序を強く乱す行為です。

金銭を盗んだという事実が証拠などから明らかであり、その労働者が金銭の取り扱いを職務としているような場合は、基本的に解雇は有効となります。

ですが一方で、以下のような事情が複数あれば、解雇することの相当性までは認められない、と判断される可能性もあります。

  • 窃盗、業務上横領の証拠が無い場合
  • 金銭以外の窃取で、被害額が高額とは言えない
  • 職務とは関係のない窃取行為
  • 謝罪、被害弁償などを行っている

会社を誹謗中傷したことによる解雇は認められる?

個人ブログで会社のことを悪く言っていたのがバレてしまい、「会社を誹謗中傷した」という理由で解雇されることも十分ありえます。

会社に対して誹謗中傷を行うことは、名誉毀損罪(230条)や侮辱罪(刑法231条)が成立する可能性があります。

この時の合理性・相当性の判断としては、誹謗中傷の内容、程度、発表の場、職務との関連性、営業秘密を含んでいるかどうか、真実の内容か、発言の態様、業務上悪影響があったかなどが総合的に考慮されます。

愚痴を漏らしていたぐらいであれば解雇は不相当とも言えますが、一方で会社の機密漏洩にあたる行為をしている場合、誹謗中傷の程度が著しい場合、会社からの削除要請に応じない場合、実際に業務に支障が出ているような場合には、解雇が有効となる場合があります。

セクハラ行為による解雇は認められる?

セクハラをした」という理由は、即座に解雇が認められそうなイメージがありますが、実際は判断が分かれています。

基本的には、セクハラの行為態様が悪質であったり、被害者が退職してしまった・精神疾患に罹患したなど行為の影響が大きかったり、会社の再三の注意や呼びかけを無視してセクハラをしていたり、報道がなされ会社の名誉を傷つけた場合などは、解雇が有効となる可能性が高いと言えます。

一方で、以下のような事情があれば、解雇することの相当性までは認められない、と判断される可能性もあります。

  • セクハラ行為を示す明確な証拠が無い
  • セクハラの態様が比較的軽微(強制わいせつにあたらない)
  • 被害者と個人的な交際関係があった
  • セクハラ行為に関し弁明の機会がなかった
  • 解雇以前に会社からの注意などがなかった

なお、いずれの場合であっても行為態様などによって解雇が有効となる場合はあります。

病気・怪我を理由とする解雇

病気や怪我で仕事が出来なくなってしまった場合、あるいはその療養により欠勤が続いているような場合、「もう来なくていい」と言われる……。

そんな病気や怪我を理由とする解雇が認められるかは、病気や怪我の原因などによって変わってきます。

私的な病気を理由による解雇は認められる?

病気・怪我で仕事が十分にできない」という理由でなされる解雇は、解雇するまでにそれ以外の方法を会社が十分検討したかによって、無効となることがあります。

前提として、病気や怪我それ自体が解雇理由となるわけではなく、健康を害して労務提供ができなくなったことが解雇理由となります。

また、病気や怪我があっても従前と異なる業務であれば十分な仕事ができたり、休職期間を取れば元の職務に戻れるような場合などもあります。

そのような場合に会社が配置転換を検討していなかったり、休職期間を提案せず解雇を言い渡したり、治癒の見込みがないという立証をせずに休職期間途中で解雇するようなことは違法・無効となりやすいと言えます。

また、休職期間満了時に治癒しない場合に当然退職扱いとする就業規則がありますが、このような規定自体は有効です。

ですがその場合であっても、会社は配置転換や軽易作業への復職を検討させるべきであると言えます。

業務上の怪我・病気による解雇は認められる?

上記の例は私的な傷病でしたが、もしも会社の業務によって病気・怪我をした場合に、会社がそれを知友に解雇することには厳しい制限があります。

会社は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間およびその後30日間は解雇してはならないとしています(労働基準法19条1項)。

つまり会社の業務として荷物を運搬していた時に足を骨折してしまった、というような場合、その休業期間や休業期間満了後30日間は、会社は労働者を解雇することができません。

なおここでの「休業」とは、全部休業を指し、出勤しながら療養のために一部休業している場合は「休業」とはならず、解雇制限はありません。

さらに例外として、やむを得ない事由で事業継続不可能になった場合・打切補償を会社が支払った場合・労災保険上の傷病補償年金を受けた場合にも解雇制限が適用されなくなります(労働基準法81条、労災保険法19条)。

打切補償とは、療養開始後3年を経過しても負傷または疾病が治癒しない場合に、会社が平均賃金の1200日分を支払うことで、その後の療養補償、休業補償等の労働基準法上の補償義務を打ち切る制度です。

うつ病など精神疾患による解雇は認められる?

うつ病で十分な仕事が難しいから」など、精神疾患による解雇が有効かどうかは、基本的には業務上のものではない病気・怪我のときと同じように判断されます。

よって、精神疾患があること自体は解雇理由となりませんが、精神疾患により労務提供できない場合は、解雇理由となります。

その際は通常の傷病の場合と同様に、疾患の労務提供への影響度合いなどを鑑みつつ、配置転換や休職などが活用できないかが考慮されるべきです。

それに加えて、うつ病など精神疾患については当事者以外の症状の把握が難しいため、主治医の意見なども解雇の有効無効の考慮要素となります。

また、精神疾患も業務上疾病であると認められれば、法律上の解雇制限が課されます。

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