社内恋愛・服装を会社で注意されたら?|服務規律規定の解説

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ひげを生やしてはいけない、社内のパソコンを私用に使ってはいけない、兼業してはいけない……。

働いていると、会社からこのような規定を定めていることは珍しくなく、多くの方が特に疑問なく受け入れています。

ですがこのような労働者の行為を制限するような服務規律規定は、本当に有効となるのでしょうか?

この記事では、自由な服装でいたい、自由に働きたい…という意思を制限する規定の有効性について考えていきます。

会社からの注意、従わなければいけないのはどれ?

企業は、企業の存立と事業の円滑な運営上必要なことを就業規則に定め、労働者に具体的な指示・命令ができます。

そこで多くの企業では、労働者のとるべき行為規範を「服務規律(服務規程)」として就業規則に定めています。

服務規律の内容として、主に以下のようなものが含まれています。

  • 遅刻、早退時の手続き
  • 服装規定
  • 職務専念規定
  • 上司の指示、命令への服従義務
  • 職場秩序の維持
  • 職務上の金品授受の禁止

それでは、実際にこのような規定に基づいて、会社からどのような命令がくだされる可能性があるのかを見ていきましょう。

ひげを生やしてはいけないと言われたら?

会社から「ひげを生やすな」「髪を切れ」「もっと目立たない服装にしろ」など、服装規定をもとに注意されたら、従わなければいけないのでしょうか?

いかに規定があるといえども、会社は労働と関係のない規制をすることはできません。

加えてひげをどう生やすか、どんな髪型や服装を選ぶかは、労働者の自己決定の自由に属します。

よってひげなどの規制については、会社運営上の必要性があり、かつ必要性に見合った合理的な範囲でなければなりません。

例えば、在宅勤務や人前に出ないクリエイティブ職などについても厳密な服装規定の順守を求めることは、不当な制約となる可能性があります。

もし実際に注意を受けた場合は、ご自身の職務内容・人前に出る頻度・そのファッションが社会的にどの程度受け入れられるものか・実際に業務に支障が出ているかなど、規制の必要性と合理性を考える必要があります。

もしも不当な制約と認められるような場合であれば、注意に従う必要もなく、それを理由になされる懲戒処分などは無効となります。

職場恋愛をやめろと言われたら?

社内の他の社員と恋愛関係となったところ、会社から注意を受けた、または「別れろ」と言われるなど、職場恋愛を禁じるような規定は有効なのでしょうか。

誰と恋愛をするか、というのは労働者の高度な人格的利益であり、十分に尊重されるべきであり、会社といえどおいそれと禁止することは許されません。

ですが一方で、職場恋愛は業務が滞る、セクハラやストーカー問題を招く、人事の平等性が担保できなくなる、秘密漏洩が起きやすくなるなどのリスクを孕んでいるのも確かです。

そこで、職場恋愛によって生じうるリスクの危険性、当事者の地位や職務、恋愛関係の発露の態様などを考慮し、個別具体的に検討された限定的な注意であれば、労働者はその注意に従わなければなりません。

具体的には、以下のようなプライベートでない場での注意は一般的に許されやすいと言えます。

  • 就業時間中の私的な恋愛メールや電話の禁止
  • 企業施設を、恋愛など私用目的で利用することの禁止

また職場恋愛にとどまらず不倫にあたる場合は、民法上の不法行為(民法709条)に当たりうる行為ですので、より広い注意が許される可能性があります。

メールやネットの私的使用をやめろと言われたら?

会社から「私用で会社のパソコンを使うな」「仕事に関係のないサイトを見るな」など、職務専念規定をもとにされる注意は有効なのでしょうか。

会社のパソコンなどの機器は会社の財産なので、事業目的のみに使用させる、ということを当然に制限できます。

また、就業時間中は労働者は職務専念義務を負っています。

よって個別に私的なインターネット使用などを禁止する規定がない場合でも、労働者は原則として会社のパソコンを私的に使用するのは差し控えるべきです。

なお、実際に私的使用されているかを確認する監視・点検の手段は時として違法となる場合があります。

具体的には、監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益と比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合には、プライバシー権の侵害となる可能性があります。

携帯電話の番号を申告しろと言われたら?

緊急事態が発生した場合の連絡先として、個人的に使っている携帯電話の番号を申告しろ、という命令も基本的には違法となりません。

携帯電話の番号は労働者の個人情報であって、プライバシー権によって保護されます。

よって企業の円滑な運営上の必要性と労働者のプライバシーを比較考量して合理的と言えなければ、携帯電話の番号を申告する必要はないと言えます。

もっとも、携帯電話の番号自体はプライバシーとしての重要性はそこまで高くないこと、緊急時の連絡のほか労働者の安否を確認する必要なども認められることから、携帯電話の番号を申告しろ、という命令には基本的に従う必要があります。

違反行為の調査への協力義務はある?

例えば、上司から「〇〇くんがサボっている場面を見たことがあるか」など、同僚(あるいは自分)の労働契約違反になりうる行為について尋ねられた場合、その調査に協力しなければいけないのでしょうか。

そのような調査協力義務を負うかは、職務や違反行為の性質、内容、違反行為の機会と職務執行の関係性などから判断されます。

一般的には、そのような調査を行うことも職務に含まれると思われる管理職については、職務の範囲で調査義務を負います。

そうでない労働者については、たとえば〇〇さんのサボり行為により直接業務に支障が生じた立場であったり、あるいは実際に見た・聞いたと思われる立場と考えられれば、労働契約に付随する義務として、必要かつ合理的な範囲で調査協力義務を負います。

会社からの私生活の規制…認められる?

就業規則のなかには、労働者の地位・身分に基づく規律として以下のような規定が含まれる場合があります。

  • 信用の保持
  • 兼職、兼業の禁止
  • 秘密保持義務

このような規定は、会社外でも社員としての体面を汚してはならない、家でも会社の承認を得ないで副業してはならない、退職しても業務上得た秘密を漏らしてはいけないなど、少なからず労働者の私生活にも制限が及びます。

このように、社内のみならず私生活にも及ぶような規定は有効となるのでしょうか。

執筆活動で利益を得る行為

個人的な執筆・講演活動、個人ブログで利益を得ることも兼業に当たると考えられ、会社に兼業禁止規定がある場合にはその制限を受けることになります。

本来、勤務時間外の行動については会社の支配は及ばず、また社会的にも兼業・副業を促進する動きがあります。

そこで、以下のように労務の提供に格別の支障をきたす場合に限って、労働者の兼業を禁止する規定も有効となります。

  • 兼業が不正な競業に当たる
  • 営業秘密の不正な使用・開示を伴う
  • 労働者の働きすぎにより生命・健康を害するおそれがある
  • 兼業の態様が使用者の社会的信用を傷つける

例えば個人ブログで利益を得るような副業においても、本業と競業するような場合や営業秘密を利用しているような場合、睡眠不足で労務提供がままならないような場合などには、会社からの兼業禁止命令に従わなければなりません。

また兼業禁止規定がなければ、職務専念義務に違反したかも検討することになります。

兼業禁止規定違反、職務専念義務違反と判断された場合は、懲戒処分が下される可能性もあります。

ですが兼業をしていたというだけで解雇されることはほとんど無く、労働者の兼業行為と比べて懲戒処分が不当に重いのならば、人事権の濫用として当該処分は無効となり、労働者は損害賠償義務を請求できる可能性もあります(労働契約法3条5項、15条)。

抜き打ちの所持品検査はプライバシーの侵害?

例えば、会社で備品が無くなった・売上が計算より少ないといったことが起こった場合、会社が労働者の所持品検査を行おうとすることも考えられます。

ですが所持品を強制的に暴くことは労働者のプライバシーを侵害する行為です。

よって、以下の要件を満たす限定的な場合に限り、所持品検査をすることが許されると考えられています。

  • 就業規則などに明確な根拠規定がある
  • 検査をする合理的な理由がある
  • 一般的に妥当な方法と程度で検査が行われる
  • 制度として職場従業員に対して画一的に実施される

例えば、所持品検査が労働者一人のみに対して行われようとしている場合・事件への対応として突発的に所持品検査が行われるような場合は、そのような検査は違法となります。

服務規律規定に従わなかったらどうな

服務規程に従ったこと、あるいは従わなかったことが人事評価に影響することがあります。

どのような人事評価がありうるのかを知っておき、不当な評価を課せられることを避けるようにしましょう。

人事評価結果へ異議を述べることはできる?

人事評価結果が対象者に通知されるか、異議申立て制度があるか、その申立先がどこになるかは、基本的には会社が自由に決定することができます。

ですが一般的に、人事評価が労働者にもたらす影響が大きければ(能力主義人事)異議申立てがしやすく、労働者にもたらす影響が小さければ(年功序列人事)異議申立て制度がない、などの傾向があります。

具体的には人事評価制度によって月額賃金の増減がかなり生じたり、賞与金額に大きな差が生まれたり、さらには降格、解雇となるような場合には、人事評価結果への異議申立てができるのが妥当と言えます。

より労働者に影響が大きい場合には、評価結果の事後的な是正も認められる場合があります。

不当な注意に従わず解雇されたら?

もしも服務規律規定違反の注意をされ、解雇を言い渡されたような場合はどうなるでしょう。

会社は労働者に対しその地位や処遇に関する決定権限、いわゆる人事権を有しており、採用、配置、人事考課、昇進、昇格、降格、休職、出張、出向などを決定できるのに加えて、解雇を命じることもできます(労働契約法16条、労働基準法19条乃至21条、104条2項)。

ですが解雇は特に一方的に労働契約を打ち切るという強い効果をもたらす関係から、客観的に合理的な理由があり、相当な処分であると認められなければその解雇は違法・無効となる可能性があります。

例えば服装が乱れている、という注意に対し一度従わなかったというだけで懲戒解雇をするようなことは、不相当に重い処分として無効となることが考えられます。

またはそもそも服装の乱れが業務に支障をきたさないような職種である場合、解雇の理由に客観的な合理性がないとして解雇が無効になる場合もあります。

さらに会社に故意または過失があって、労働者に損害が発生していれば、労働者は会社に損害賠償請求をすることもできます(民法709条、715条)。

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