労働契約を結ぶ前に!契約書のチェックポイント6つ

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新しい会社への入社が決まると、様々な手続きに追われ忙しい日々を過ごすことになるでしょう。

その手続きの一つに、労働契約書に署名・押印することが含まれている場合も多いはずです。

ですがあまり中身をよく見ず、まあ問題ないだろう、という気持ちでそのまま提出してしまう人が大多数なのではないでしょうか。

実は、この労働契約にこそ、その後会社で納得して過ごすための全てが詰まっていると言っても過言ではありません。

この記事では、新しい会社への入社が決まった方、実際に労働契約を結ぶ場面にいる方、労働契約書に書いてある内容に疑問を持った方に向けて書かれています。

労働契約を結ぶときに気を付けるべきこと

労働契約は口頭であっても問題なく締結されますが、基本的には言った言わないの争いを避けるため、後から確認できるように書面で受け取るのが基本です。

その書面の中に必要なことは書かれているか、またちゃんと互いに想定している労働条件が書かれているかを確認しましょう。

労働契約に書かれていなきゃいけないことって?

企業は労働契約を締結する際、労働者に対して労働条件を明示しなければなりません(労働基準法施行規則5条1項、労働基準法15条1項前段)。

その場合、書面で明示すべき条件は以下の通りです。

  • 労働契約の期間に関する事項
  • 就業場所及び従事すべき業務に関する事項
  • 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  • 賃金(退職手当臨時に支払われる賃金及び賞与等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

一方で、賞与や退職金については、書面による明示までは義務付けられていません。

就業規則と労働契約の内容が異なっていたら?

労働契約は、就業規則に定める労働条件の基準に達しない部分は無効となり、その部分は就業規則が優先されます(労働基準法93条、労働契約法12条)。

例外として、特段の事情がある場合には就業規則の定めを下回る労働契約の合意も、就業規則の合理的解釈の下で限定された規定部分についてのみ、有効であると判断される例もあります。

特段の事情として認められる具体的な例とは、退職金や給与を現状のまま支払い続けていると倒産する可能性がある、というような場合が該当します。

もし労働契約に当事者間で思い違いがあったら?

新たに労働契約を結ぶとき、または既に結んだ労働契約を変更する際に、労働者と会社との間に解釈の行き違いが生じることが考えられます。

労働契約の合意にあたり思い違いがあった場合、そのような合意は錯誤により無効とならないか、ということが問題となります(民法95条)。

契約に合意する気持ちを固めるにあたっての思い違い、いわゆる動機の錯誤については、以下の3つの要件を満たす場合にはその労働契約は無効であると主張することができます。

  1. 合意に至った動機が相手に表示されている(黙示でも可)
  2. 法律行為の重要な部分についての錯誤である
  3. 労働者に重大な過失がない

例えば福利厚生や基本条件に上乗せする労働条件など、比較的重要性の低いものについての思い違いでは、②部分について錯誤の認定は慎重になされ、錯誤無効が認められない可能性が高くなります。

一方で、賃金等生活に関わる重要な労働条件についての思い違いがあった場合には、錯誤無効が認められる可能性が高くなります。

この規定ってセーフなの?労働契約に含まれる義務

労働契約には、労働者側が受け取ることのできる賃金や福利厚生などの利益のみが書かれているわけではありません。

なかには、労働者に様々な義務を課す規定が含まれていることも多くあります。

ですが、労働者と会社とでは行使しうる権限に大きな差があり、会社が一方的に義務を負わせてくることが認められない場合もあります。

ご自身に不利な義務を不当に負うことのないよう、契約内容を確認することが重要です。

会社が被った損害を労働者に賠償させる規定

例えば、「労働者の不注意により会社に損害が生じた場合、全額賠償しなければいけない」というような規定は無効となります(民法95条)。

一般に、契約上の義務に違反して相手に損害を与えた場合は、その者は損害賠償の責任を負います(民法415条,709条)

ですので、労働者が労働契約上求められる義務に違反して会社に損害を与えた場合にも、会社から損害賠償請求をされても拒めない気もします。

ただし実際のところ、会社が労働者を使って利益を得ている以上、いかに労働者の責任によって損害が発生しても、それを全て労働者に負担させるのは不公平です。

そこで損害の公平な分担という見地から、信義則上相当と認められる限度においてのみ、労働者は責任を負うことになります。

実際にどの程度の損害賠償責任を負うことになるかは、以下の要素によって決定されます。

  • 労働者の帰責性(故意・過失の有無・程度)
  • 労働者の地位・職務内容・労働条件
  • 損害発生に対する企業の寄与度(事業の性格・規模、施設の状況、指示内容の適否、事故予防・リスク分散の有無等)

いずれにせよ、具体的な事情にかかわらず損害を労働者に全額賠償させる規定は無効となります。

留学費用を返還させる規定

「労働者が留学するのなら、会社がその費用を貸与する。留学から3ヶ月間勤務した場合は、その費用を返さなくていい」言い換えれば「3ヶ月以内に退職するなら留学費用を返せ」という規定は、有効なのでしょうか。

まず、会社が労働者の退職について違約金や損害賠償金を定めておくことは許されません(労働基準法16条)。

そこで、その留学が社名による業務でなく、労働者本人の自主的な修学であれば、そのような規定は有効であると解釈されています。

実際には、以下のような要素を総合考慮して、業務かそうでないかが判断されます。

  • 留学制度の目的
  • 留学先の大学・学部の選択が労働者の自由意思によるものか
  • 留学先の大学・学部の選択が労働者の自由意思によるものか
  • 留学先での科目の選択が労働者の自由意思によるものか、選択した科目に業務との関連性があるか
  • 留学中に義務付けられた報告の業務との関連性

秘密保持義務・競業避止義務の規定

労働契約の中に含まれる秘密保持義務・競業避止義務は、在職中は当然に有効となります。

秘密保持義務とは、企業の製造上・営業上その他業務上の秘密を保持する義務であり、競業避止義務とは、同業を開業したり同業他社に従事したりすることを禁止する義務です。

労働契約では、その人的・継続的な性格から相互に相手方の利益に配慮して誠実に行動することが要請されていることから、在職中は企業に対して秘密保持・競業避止義務が認められます。

一方で退職後にもそのような義務を求める規定は、企業の営業の自由と労働者の職業選択の自由を比較衡量し、合理的と認められる範囲で有効となります。

この義務に反すると、会社からその行為の差し止め請求、損害賠償請求をされることがあります。

社員の種類別:労働契約の注意点

労働契約を結ぶ労働者は、正社員、契約社員、短時間労働者、と様々な種類があります。

労働者としての種類によって、労働契約で基本に重ねて注意すべき点が新たに生まれてきます。

それぞれどのような点に注意しなければならないか、見ていきましょう。

①短時間労働者

短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者をいいます(パートタイム・有期雇用労働法2条1項)。

会社は短時間労働者に対しては、通常明示すべき労働条件に加えて、短時間労働者にとって重要な(1)昇給の有無、(2)退職手当の有無、(3)賞与の有無を文書の交付等で明示しなければなりません(パートタイム・有期雇用労働法6条1項, パートタイム・有期雇用労働法施行規則2条1項)。

②有期雇用労働者(契約社員)

有期雇用労働者とは、会社と期間の定めのある労働契約を締結している労働者(パートタイム・有期雇用労働法2条2項)。

いわゆる派遣社員も、有期雇用労働者に含まれます。

会社は有期雇用労働者に対しては、通常明示すべき労働条件に加えて、(1)更新の有無、(2)更新がある場合は更新の基準を文書の交付等で明示しなければなりません(パートタイム・有期雇用労働法6条1項, 「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年10月22日 厚生労働省告示357号)1条))。

契約を更新するか否かの判断基準は、契約満了時の業務量、労働者の勤務成績、態度、労働者の能力、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況などが考えられています。

③未成年者

一般に会社は、15歳未満の労働者、または15歳に達してからまだ3月31日を迎えていない労働者を雇用することを禁じられています(労働基準法56条1項)。

さらに、未成年者が労働契約を締結するには法定代理人の同意が必要となります(民法5条1項、823条1項)。

よって、未成年者が労働契約を締結するには、未成年者本人が親権者の同意を得て締結する以外の方法はありません。

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