不当解雇・退職勧奨の
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会社に勤めていれば、誰しも人事異動の命令をされる可能性があります。
人事異動のうち配置転換は一般に同一事業所内での異動、転勤は事業所を変えるような異動を指すことが多くなっています。
例えば「営業職から開発職へ」と命令するのが配置転換、「東京本社から仙台支社」と命令するのが転勤にあたる、ということになります。
実際に配置転換や転勤を命じられたとき、異動はしたくないと感じた場合や、その命令が理不尽な場合にも従わなければいけないのでしょうか。
この記事では、転勤・配置転換命令に疑問をお持ちの方に向けた「異動命令に従わなくていい」場合などの解説をしています。
目次
通常、会社は入社時の労働契約に基づいて配置転換命令・転勤命令を出す権利を持ちます。
よって「営業職に限る」「勤務地は東京に限る」などの職務限定の合意や勤務地限定特約がなければ、会社は労働者に合意をとることなく配置転換命令・転勤命令を出せます。
ですがそのような合意・特約が無ければ、どんな異動命令を出されても従う義務があるというわけではありません。
あなたに出された配置転換・転勤命令が違法、無効とならないか、見ていきましょう。
職種が代わったことで、労働者の賃金が減ってしまうような配置転換命令は有効なのでしょうか。
まず、職種と賃金が連動する規定を置いている場合、労働者の職種を変更したことで、結果的に賃金が減額されたとしても配置転換は違法とはなりません。
なぜならその場合、配置転換とその結果の賃金減額は一体のものとして考えられるためです。
ただし、労働者にとって不利な結果をもたらす以上、きちんとその旨の規定をあらかじめ定めておく必要があり、また不利益の程度や内容に照らし命令権限の濫用にあたる場合は違法・無効となります。
一方で職種と賃金が連動していない場合に配置転換を行い賃金を大幅に引き下げるような処分は、相当の理由がない限り違法・無効となる可能性があります。
一般的に労働者と使用者が雇用契約を締結する場合、ほとんどの労働者は会社から命令された業務および勤務場所で就労することになっています。
したがって会社は遠隔地であっても転勤命令を発する権利があり、その際に労働者の同意は必要ありません。
ですが業務上の必要性がない配置転換・不当な動機目的に基づく場合・労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じる場合など、配置転換命令が権利の濫用となるときは同意のない遠隔地への転勤は違法・無効となります。
また、「東京本社でのみ勤務する」など勤務地限定の合意がある場合には、会社の有する転勤命令権もその合意に拘束されるため、この場合は、労働者の同意がなければ転勤を命じることができません。
この勤務地限定の合意があるかを判断するための基準として、以下のものが挙げられます。
労働者が転勤命令を拒否し、双方での説明や交渉を経てもなお転勤を承諾できなかった場合、強制的に転勤させられたり、解雇がなされることも考えられます。
なおその場合であっても、そもそも転勤命令が違法・無効な場合にはそれに伴う強制的な転勤や解雇も違法・無効となり、会社に損害賠償請求をすることが考えられます。
転勤命令が違法・無効である場合とは、勤務地限定の特約が結ばれている場合、業務上の必要性がない配置転換・不当な動機目的に基づく場合、労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じる場合など、転勤命令を出すことが会社側の権利濫用となる場合です。
さらに転勤命令自体は合法であったとしても、強制的に転勤させる行為や解雇する行為が違法・無効となる場合もあります。
具体的には、転勤を強行することについての説明が不十分であったり、解雇にあたり必要性や理由の合理性が認められない場合は、それらの行為が違法・無効となります。
会社側にそのような違法行為がある場合、労働者は会社に対して損害賠償請求することができます。
転勤は勤務地が代わる関係上、配置転換よりも労働者の負担は大きくなります。
そのため家族や友人との関係、キャリアの積み重ねなどの観点から、どうしても転勤は受け入れられない、という考えに至る人も多くいます。
転勤命令にどうしても従えない場合、会社から解雇を言い渡されたり、または自分から退職することも考えられます。
その場合に労働者は解雇を拒否できるのか、また退職する場合の対応について考えてみましょう。
会社は原則として、単身赴任を伴う配転命令であってもこれを発令することができ、この配転命令が権利の濫用に当たらなければ解雇をすることも可能です。
ですが単身赴任は一般的に労働者を家族と引き離し、慣れない土地に一人転勤させるという点で一層の経済的・精神的不利益等を負わせるものです。
よって会社は労働者に対して単身赴任を伴う転勤を命じるに際しては、単身赴任手当の支給や帰省旅費の支給など、労働者の不利益を軽減・回避する措置をとるよう配慮すべき信義則上の義務があると言えます。
そのため、そのような措置の検討をせずにただ単身赴任を拒否したから、という理由で解雇を命じることは違法・無効となりえます。
会社を退職する場合の理由には、自己都合退職と会社都合退職の2種類があります。
この理由がどちらになるかによって、退職後に受け取れる失業給付金の金額や、会社によっては退職金の金額に影響が出る場合もあります。
例えば自己都合退職の場合、失業給付金を受け取れるまでに2ヶ月の給付制限期間がありますが、会社都合退職の場合にはそのような期間がなく、迅速に失業給付金を受け取ることができます。
そこで、もしも会社から「〇〇支店に転勤して」と命じられ、それが受け入れられず退職するような場合退職理由がどちらになるかが問題となります。
勤務地限定の合意がない場合、基本的にはその労働者は転勤命令に従わなければならないため、自己の都合により退職を選択したものとして自己都合退職と考えるのが一般的です。
さらに転勤を拒否したことで懲戒解雇され、その処分が相当と認められるような場合にも自己都合退職となります。
一方、転勤を断ったことで退職勧奨を受けたような場合には、会社都合退職であると解釈されます。
また、通勤困難な地への転勤・労働者の意思に反して転勤を余儀なくされたことによる退職の場合には、特定理由離職者として、会社都合退職をしたのと同様に失業給付金の受け取りについて有利な扱いを受けられます(雇用保険法13条3項)。
基本的には共働きの労働者が転勤に伴い、配偶者が退職したとしても、会社はその損害について賠償をする義務などはありません。
なぜなら、配偶者が退職するか否かは本人の意思にかかっており、転勤命令がくだされたから退職した、とは言えないためです。
ただし、会社側が転勤命令をくだした労働者の配偶者に対して就職の斡旋をしたとか、社宅への入居を許可するなどの配慮をしているかどうかは、会社側の権利濫用を判断する際の考慮要素となります。
仮にそのような措置をとっていない場合は、権利濫用と判断されやすくなります。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。