出張命令には従わなくちゃいけない?出張をめぐるトラブル事例

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「〇カ月も出張を言い渡されたけどいかなきゃいけない?」「出張旅費は出ないと言われた」「転勤は無いと言われたのに転勤してこいと命じられた……」

社会人として働いていると、一見して納得できない出張や、転勤などの配置転換を命じられることもあります。

そのような業務命令には、従わなくていいものと、残念ながら従わざるをえないものがあります。

従うべきかはどこで分かれるのか、この記事ではそのような出張・出張旅費・転勤・配置転換のよくある疑問にお応えします。

出張命令には従わなければいけない?

出張命令は会社の業務命令の一つで、原則的には労務提供をする義務の一環で出張命令をされたら従う必要があります。

一方で事前面接や業務説明、雇用契約を通じ「出張はしない」という旨で双方が確認しているような場合は、出張命令に従う必要はありません。

また、いかに事前に出張があることを了解していたとしても、どんな出張命令にも従わなければいけない、というわけではありません。

長期間の出張を命じられたら?

長期間の出張命令には、従わなくていいこともあります。

使用者は労働者に対して、業務命令権の一環として出張を命令することができます。

ですが会社側が出張命令を出す権利を濫用する行為、例えば嫌がらせのような不当な動機・目的に基づく出張命令や、労働者に生活上の著しい不利益が生ずるような出張命令を出したときは、違法になる場合があります。

長期の出張命令については、実質的に転勤と近しいものであり、家族と同居する労働者などにとっては著しい不利益になることが十分考えられます。

よって出張の期間、長期である必要性、職務内容、現在の自宅との距離、長期出張に対する会社からのフォローなどの要素を総合的に考慮して、なお労働者に著しい不利益が生ずると認められるような場合は、その出張命令は違法となる可能性があります。

海外への出張を命じられたら?

海外出張は通常の出張と比べて長期になりやすく、また馴れない環境によって労働者の身心面での負担が大きくなります。

そのため長期出張の場合と同様に、不当な動機・目的に基づく出張命令や、労働者に生活上の著しい不利益が生ずるような出張命令は違法である可能性が出てきます。

また、日本企業がその労働者を臨時に海外へ出張させ、その業務に従事させている場合には、労働基準法が適用されて労働時間などの制限がかかります。

なお海外派遣の場合は、国外の事業に所属しながらも現地の使用者の指揮命令に従って業務をすることになるので、労働基準法は適用されません。

フレックスタイム制での出張の取り扱い

フレックスタイム制の場合は、原則として時刻を指定されない出張を行うことになります。

フレックスタイム制とは、全員が勤務しなければならないコアタイムと、その時間内であれば労働者の裁量によりいつ出勤しても退勤してもよいフレキシブルタイムが定めたものです(労働基準法32条の3)。

フレックスタイム制においては、会社は労働者に対して始業・終業時刻を指定することはできません。

したがって、時刻を指定して出張を命令することはできませんが、時刻を指定せずに出張を命令することはできます。

もっとも出張先の業務の時刻が決まっている場合には、会社から事前に説明があり、時刻通りに出勤するよう同意を求められることになります。

この時、出勤時刻の指定に合理性があれば、労働者としては指定に従って出勤すべきでしょう。

専門業務型裁量労働制での出張の取り扱い

専門業務型裁量労働制とは、一定の業務に限って労使協定の締結と労働基準監督署長への届け出を要件として、労使協定において定められた時間労働したものとみなされる制度です(労働基準法第38条の3)。

専門業務型裁量労働制の適用対象労働者に対しても、出張命令を出すこと自体は問題ありません。

ただしその業務をどう行うかは労働者の裁量に任されているため、出張業務の業務遂行方法や時間配分について具体的な指示を出すことは許されていません。

また出張先の労働時間については、出張先で労使協定で定めた業務に就く場合は、労使協定で定めた時間について労働したとみなされます。

しかし、労働基準法38条の3の労働時間のみなしをすることができるのは労使協定で定めた業務に就かせたときだけなので、対象以外の業務に就いた場合には労働基準法は適用されません。

したがって、この場合、実労働時間によって管理が行われます。

出張費用に関するトラブル

通常、出張をするうえで欠かせない交通費や宿泊費は、会社が経費として支払います。

また会社によっては、日当などの手当を支給している場合もあります。

出張にかかった交通費をごまかしていたのがバレてしまったような場合、また出張日当をカットすると言われたような場合、どう対処すればよいのでしょうか。

出張旅費のごまかしをしたらどうなる?

例えば出張のための乗車券を割引運賃で購入した後で、正規運賃の旅費を請求したことが会社にバレてしまったような場合、どのような処置が考えられるのでしょうか。

出張時の交通費について実際に要した費用を支給する、と決められている場合、労働者はその規定に違反して不当に会社から利得を得たことになります。

したがって、不当に得た差額については民法703条によりその利益を返還する義務があります。

さらに会社に対して虚偽申告を行った、ということで懲戒処分がなされる可能性もあります。

ただし、以前にも差額を取得していた労働者がいたにもかかわらずそれは黙認され、ご自身だけ懲戒処分を受けるようなことは懲戒処分権の濫用にあたり許されない可能性があります。

なお、実際にかかった費用ではなく定額の出張日当として金銭が支払われている場合は、労働者は会社に対し差額を返還する義務はなく、また懲戒処分をされることもありません。

出張日当の支払い廃止の変更は有効?

会社から、これまで支払っていた一定額の出張日当について今後支払わないことになった、という決定がなされたとして、その決定は有効なのでしょうか。

出張規程に基づき一定額の出張日当を支払うということは、交通費等の実費としての性格を有するものではなく、労働の対償としての性格を有するもので、賃金に当たると考えられます。

よって、規定を変更し出張日当を不支給とすることは、労働条件の不利益変更の問題となります。

労働条件の不利益な変更は原則として無効ですが、以下の要素などを考慮したうえで変更の理由・内容が合理的と考えられれば例外的に有効となります。

  • 不利益の程度
  • 変更の必要性
  • 変更後の就業規則の内容
  • 変更に関連する代償措置等
  • 労働組合との交渉の経緯
  • その他の従業員の対応
  • 社会一般の状況

出張日当を廃止する必要性が高ければ高いほど、不利益の程度が大きくても合理性があると判断されます。

よって出張日当廃止の理由、それまで支払っていた金額、出張が行われる頻度や実態、経費削減の必要性などを考慮して、廃止することに合理的な理由があり、合理的な廃止内容であると認められれば、出張日当廃止の変更も有効となります。

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