解雇予告手当をもらえなかったら?もらえない事例と請求方法について解説

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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解雇をされてしまったとき、本来であればもらえるはずの解雇予告手当が支給されないことがあります。

解雇予告手当は労働者の生活を突然の解雇から守るための制度です。

泣き寝入りをせずに、解雇予告手当をもらう権利を主張することが大切です。

この記事では解雇予告手当がどのようなときにもらえるのか解説しています。
解雇理由や雇用形態にも関わってくるので、自分が解雇予告手当を受け取ることができるのかご確認ください。

受け取れるはずの解雇予告手当をもらえなかった場合の請求する方法や、解雇予告手当の課税関係もまとめています。

労働基準法で認められている解雇予告手当とは?

まずは、解雇予告手当がどのようなものでどのような場合にもらえるのか、確認していきましょう。

解雇予告手当はどんなときもらえる?

解雇予告手当とは、予告なしに即日解雇されたとき、または解雇まで30日未満の期間しか猶予されずに解雇予告をされたときに受け取れる手当です。

実際に解雇予告手当が支払われるタイミングは、予告なしに当日解雇された場合は解雇当日、予告があった場合は予告日から解雇日までとなります。

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解雇予告手当の計算方法・勘定科目は?

解雇予告手当の金額は「平均賃金1日分×(30日-予告から解雇日までの期間)」で導かれます。平均賃金は、賃金締切日を基準に3ヶ月分の賃金総額を3ヶ月分の総日数で割ることで計算されます。もし予告なしに当日解雇されたら30日分、15日前に予告されたら15日分の平均賃金を受け取れます。
平均賃金に含むものは?

平均賃金の算定には、算定期間中に支払われる通勤手当などの諸手当、付与された年次有給相当の賃金、四半期ごとの賞与、退職金なども含まれます。また、平均賃金よりも「3ヶ月分の賃金総額÷3ヶ月分の労働日数×0.6」の額(最低保障額)の方が大きい場合は、最低保障額の値を採用します。

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解雇予告手当・退職金は退職所得になる?

解雇予告手当や退職金は退職にあたり支払われる手当として扱われ、「退職所得」に含まれます。退職所得とは退職により一時金として受け取る所得のことを指し、課税の関係で優遇されます。他に退職所得には、社会保険制度や生命保険会社により給付される一時金、弁済を受けた未払い賃金も含まれます。

所得税はかかる?源泉徴収は必要?

労働者が「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出しているとき、ほとんどの場合は所得税はかからず源泉徴収は不要です。所得税・住民税の対象となる「退職所得」は(退職一時金の額−退職所得控除額)×1/2で計算されます。退職所得<退職所得控除額であれば、これらの税はかかりません。
申告書が未提出の場合は?

「退職所得の受給に関する申告書」を未提出の場合、退職手当の支給額×20.42%が源泉徴収されます。退職所得控除額については、勤続年数20年以下なら40万円×勤続年数、20年を超えるなら800万円+70万円×(勤続年数-20年)で計算します。1年に満たない勤続年数は1年と数えます。

解雇予告手当が法的にもらえないケース

①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、又は②労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合には、解雇予告手当の支払いは必要ありません(労働基準法20条1項但書)。

ただし、この場合は理由について所轄労働基準監督署長の認定を受けなければなりません。この認定を解雇予告除外認定といいます。

また、日雇い労働者やまだ14日以上働いていない試用期間中の者など、労働形態によっては例外的に解雇予告手当をもらえない場合もあるので詳しく確認しましょう。

ケース1:事業の継続が不可能になった場合

やむを得ず事業の継続が不可能になったために行われた解雇では、解雇予告手当はもらえません。

例えば、台風による大雨で事業所が川に流されてしまい、復旧が困難となったときなどは、このケースに該当します。

ただし、本当にやむを得ず事業の継続が不可能になったのかどうかをチェックするために、労基署の解雇予告除外認定を受ける必要があります。

ケース2:労働者の責めに帰すべき事由で解雇になった場合

次に「労働者の責に帰すべき事由で解雇となった場合」も解雇予告手当をもらうことができません。一般的には、「懲戒解雇」がこの場合に該当します。

【懲戒解雇になる理由の例】

  • 会社の名誉にかかわる重大な犯罪行為(殺人など)
  • 業務上の立場を利用した犯罪行為(経理担当の横領など)
  • 重大な経歴の詐称(高卒の人が大卒で入社するなど)
  • 長期間にわたる無断欠勤
  • 重大、もしくは執拗なハラスメント

ただし、この場合も、会社は労働基準監督署に「解雇予告除外認定」を申請して認定を受けなければなりません。

実際は、解雇予告除外認定にはある程度の調査・期間がかかるため、あえて手当を支払う会社もあるようです。

支払いがない場合でも実際に解雇予告除外認定を申請しているケースは意外と少なく、懲戒解雇であっても法的には解雇予告手当の支払いが必要であることは実は結構多いです。
懲戒解雇だから解雇予告手当は支払わないと言われたら、認定を受けているのか確認してみましょう。

労働形態などにより解雇予告手当をもらえない者

試用期間、アルバイト、派遣社員も原則として解雇予告手当の支払い対象ですが、契約内容や労働期間により対象外となることがあります。

支払いの例外は4通りあり、①1つは日雇い労働者です。ただし、1カ月を超えて引き続き使用されていたような場合は解雇予告手当支払いの対象となります。

②2ヶ月以内の期間を定めて使用される者と③季節的業務に4カ月以内の期間を定めて使用される者も対象外ですが、いずれも契約で定めた期間を超えて使用された場合は支払いを受けられます。

さらに、④試用期間中の者も対象外となりますが、14日を超えて使用されていた場合は支払い対象となります

解雇予告手当の支払い対象外のもの支払いが必要になる場合
①日雇い労働者1か月を超えたとき
②2ヶ月以内の期間契約所定の期間を超えたとき
③4か月以内の期間契約(季節的業務)所定の期間を超えたとき
④試用期間14日を超えたとき
解雇予告手当の支払いが必要になる期間

退職勧奨だと解雇予告手当はもらえない

また、退職勧奨の場合は解雇予告手当を受け取ることはできません。退職勧奨に応じて退職した場合は、あくまでご自身の意思に基づいて退職しているためそもそも「解雇」に当たらないためです。

退職勧奨を受けている状況を、解雇と受け止めてしまう方は結構いらっしゃいます。
退職届の提出などを求められているのであればほぼ退職勧奨です。

解雇かどうかは、明確に「解雇」という言葉が使われているか、解雇通知書や解雇理由証明書が発行されているかで判断をしましょう。

ただし、退職勧奨であっても、解雇予告手当を引き合いに出して「解雇予告手当相当の1か月分以上の給料を支払ってもらえるのであれば検討する」などと退職勧奨に応じる条件として交渉をすることは可能でしょう。

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もし支払日にもらえなかったら?解雇予告手当の請求方法

解雇予告手当は、即日解雇などにより支払日が決まっています。
もし、その支払日通りに支払いがされなかった場合は、きちんと請求をしましょう。

請求する手順もまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

【解雇予告手当がもらえないとときの請求手順】

  1. 解雇の証拠を確保して対応手段を考える
  2. 内容証明郵便などで会社に解雇予告手当の請求をする
  3. 労働基準監督署へ相談する
  4. 弁護士や労働組合へ相談
  5. 労働審判や裁判をする

1.解雇の証拠を確保して対応手段を考える

解雇予告手当は解雇の場合でなければもらうことはできません。前述のように、退職勧奨ではもらうことができないので、会社が「自己都合退職」や「合意したうえでの退職」だったとあとから言い訳してきても反論できるようにしておくことが大切です。

【解雇の証拠】

  • 解雇に関する面談等の録音
  • 解雇通知書・解雇理由証明書
  • 解雇が明言されているメールやLINE、チャット など

解雇を通告されたらまずは解雇理由証明書を請求するようにしてください。
労働者が解雇理由証明書を請求したときには、会社は遅滞なく発行する義務があります(労働基準法22条2項)。

また、解雇予告手当を本当に請求すべきについてはよく検討をする必要があります

解雇予告手当は解雇を前提としていますので、自ら解雇予告手当の請求をするということは解雇自体は受け入れる・認めるという主張になります

もし、不当解雇として解雇自体を争うつもりなのであれば、解雇予告手当の請求はせずに、弁護士や労働組合に相談をしてください。

2.内容証明郵便等で会社に解雇予告手当の請求をする

解雇自体は争うつもりはないけど、解雇予告手当の支払いだけはして欲しいということであれば、実際に請求をしましょう。

請求方法に決まりはないので、まずは気軽に口頭で解雇予告手当について会社に聞いてみたり、メールなどで請求をしても良いでしょう。これだけで簡単に支払いに応じてもらえることも多いです。

きちんとした形で請求をするのであれば、内容証明郵便で会社に解雇予告手当の支払いを求める旨の請求書を送付することが一般的です。

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3.労働基準監督署へ相談する

解雇予告手当の支払いがなければ、労働基準法違反ですので労働基準監督署へ申告を行うことが非常に有効です。

もしも調査の結果解雇予告手当の未払いにつき、会社に労働基準法違反が認められれば、労基署は是正勧告書を交付し指導を行います。これに従わず未払いを続けていれば、使用者は刑事罰を受けたり、送検される可能性があります。

解雇予告手当は支払いの要件も金額も明確ですので、労基から指導があれば支払ってもらえることがほとんどです。

4.弁護士や労働組合へ相談

解雇予告手当の場合は請求金額がそこまで大きくないことから、専門家に依頼をすると費用倒れになってしまう懸念もあります。そのためまずはご自身で支払いを求めていくのが良いでしょう。

自身でできることを全てやっても、なお解雇予告手当がもらえない場合には、弁護士や労働組合へ頼ることも検討すべきでしょう。まずは費用面も含め、無料相談などを利用して話を聞いてみてください。

5.労働審判や裁判をする

最終的に、法的措置を取るのであれば労働審判を申し立てして解雇予告手当などの請求を行います。

労働審判とは、労働者個人と使用者の労働関係のトラブルを、迅速・適正に解決することを目指す手続きです。労働裁判官1人と労働審判員2人で組織された労働審判委員会により、原則3回以内の期日で審理し、話し合いによる解決を目指します。解決案に納得がいかなければ、自動的に訴訟手続きに移ります。

労働審判は個人でも可能ですが、弁護士を付けた方が望ましいです。

もっとも、解雇予告手当は法の規定も明確ですし、解雇の証拠がそろっていれば複雑な争いになることは少ないため、請求金額も考慮すれば個人で行うことも十分選択肢でしょう。

労働審判で決着がつかず異議申立てがなされれば裁判をすることになります。

解雇予告手当の支払日と請求期限は?

解雇予告手当の支払日は、即日解雇の場合は解雇を申し渡されるのと同日となります。また、予告を受けた場合には予告日と解雇までの日数が明示されている限り、実際に解雇される日までに支払われればいいと解釈されています。
また解雇予告手当の請求期限は、退職後から2年間までとなります。
支払いが遅延したら?

もしも即日解雇で解雇予告手当の支払いが遅れた場合には、解雇予告手当支払い日に解雇の効力が生じたことになります。例えば退職後10日経ってから手当が支払われたのであれば、元労働者は使用者の都合により10日間休業していたものとして扱われます。その場合、10日分の休業補償を請求できます。

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みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。