こんな賃金カットは許される?お給料が減らされすぎていないか注意!

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日々の遅刻や欠勤、降格、または会社の事情により賞与や手当を含む賃金が減らされることがあります。

ですがそのような賃金カット・賃金控除は、労働者に大きな不利益をもたらすものですので、会社には賃金カットにいたる手続き・賃金カットできる金額について厳しい制限が課されています。

もしかすると、今月あなたになされた賃金カットは許される範囲を超えて、違法となっているかもしれません。

賃金カット・賃金控除に関する手続きや金額の範囲を知り、実際に対応しなければいけない場合に備えましょう。

賃金カットのために行われる手続きとは?

実際の賃金カットにあたっては、会社はどのような手続きを踏まなければならないのでしょうか。

不適切な手続きは、会社の重大な違法行為になりえますので、よく確認するようにいたしましょう。

賃金カットの手続き、違法じゃない?

会社により、実際に労働者の賃金カットがされるまでの手続きは、会社内の労働組合の有無などによって変わります。

まず労働組合のない事業場では、就業規則で賃金の規定を変更し、そのことについて全労働者の同意がとれれば賃金カットをすることが可能です。

または全労働者の同意がとれなくとも、就業規則の変更を労働者に周知し、かつその変更が労働者の不利益と比較して合理的なものであると認められれば、同様に賃金カットができます(労働契約法9条、10条)。

次に労働組合のある事業場における組合員の場合は、その労働組合と賃金カットについて交渉し、労働協約を結ぶことによって賃金カットがなされます。

労働組合のある事業場における非組合員の場合は、労働組合が無い場合と同様に就業規則の変更をしたうえで個別の同意をとるか、または変更を周知し、その変更が合理的であることが必要です。

なお、就業規則の変更をせずに賃金カットについて労働者と合意をしたとしても、その合意は無効となります(労働契約法12条)。

パートタイム労働者の時給引き下げの時の手続きは?

労働組合に加入していないパートタイム労働者も、時給を減らされる形で賃金カットをされることがあります。

パートタイム労働者の時給引き下げについても、他の労働者の場合と同じく就業規則を変更したうえで、個別の同意がなければ賃金カットできないのが原則です。

賃金カットが必要で、かつ変更内容が合理的である場合には、労働者が合意しなくとも賃金カットは適法、という扱いになります。

なお時給減額というのは労働者にとって非常に大きな不利益になりますので、より高い必要性とそれに見合った合理性が会社には求められます。

こんな時に賃金カットされるのは違法?

賃金カット、と言われると大事のように感じますが、実際は遅刻や欠勤などで基本給が減らされることや、手当の廃止なども賃金カットにあたります。

しかしどんな場合であれ、結果的に労働者の収入が減るという大きな不利益をもたらすのは確かです。

よって、会社が行う賃金カットについては本来様々な制限があります。

もしかしたら、最近ご自身になされた賃金カットは違法であったかもしれません。

自己都合による欠勤、早退、遅刻による賃金カットはどう計算する?

労働者が自己都合により欠勤、早退、遅刻した場合にそのぶんの賃金をカットすることは違法ではありません。

なぜなら労働者の賃金請求権は、労働者が会社に対し労務の提供を行うことで発生するため、休んだ部分に賃金が発生しないのは当然であるためです。

その場合の賃金カットの計算のやり方に特に決まりはなく、一般的には定められた額の賃金を所定労働時間数で割る方法で導かれることが多くなっています(労働基準法施行規則19条参照)。

なお労働者が裁量労働制の適用を受けている場合、いつ出勤・退勤して仕事をするかは労働者に任せられているため、遅刻・早退による賃金カットをすることはできません。

遅刻・早退による賃金カットが定額なのは違法?

遅刻・早退した場合にいくら賃金をカットするかについて、金額の決め方に定まった基準はありません。

ですが減給の制裁にあたっては、以下の制限が設けられています(労働基準法91条)。

  • 1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない
  • 総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない

ここでいう「減給の制裁」とは、職場規律に違反した労働者に対する懲戒処分として、本来受けるべき賃金から一定額を差し引くことをいいます。

遅刻、早退または欠勤した労働者に対し、労働の提供のなかった時間に相当する賃金だけ差し引くことは「減給の制裁」には当たりません。

ですが「遅刻1回につき2000円」など、遅刻や早退等により働かなかった時間分の賃金を超えて控除するような場合は、その超えた部分が「減給の制裁」とみなされ、労働基準法の制限を受けます。

業務上傷病による療養や育児・介護休業期間に賃金カットはされる?

多くの会社は、業務で負ってしまった怪我の治療や育児、介護などにより必要がある場合、休職できることが制度として定められています。

そのような不就労の時間にあたり、会社が賃金を支払わないことは許されるのでしょうか。

①傷病治療のため不就労時間には、労務の提供がないので、会社は賃金を支払う義務はありません。

業務上傷病の治療目的の場合、労働基準法76条の休業補償の対象となります。

労働者が所定労働時間の一部のみ労働した場合、平均賃金と当該労働に対して支払われるべき賃金との差額の6割が休業補償として支払われます。

②育児休業・介護休業期間に賃金が支払われるかは、労使合意によって決定されます。

最後に、③労働者が裁判員に選ばれたときなど、公の職務執行のために会社を休んだ場合に賃金が支払われるかも、労使合意によって決定されます。

労働組合の組合費を勝手に控除されるのは違法?

労働者が組合員であるとき、労使協定に基づいて会社が賃金から組合費を控除し、控除した組合費を労働組合に引き渡すことをチェック・オフと呼びます。

賃金は原則としてその全額を支払わなければならないため、労使協定を結ばずに労働者の賃金に対しチェック・オフが行われることは違法です(労働基準法24条)。

また、労働者がチェック・オフの中止を申し出た場合、会社は賃金控除を継続することはできないと考えられています。

会社が賃金をカットできる金額には限界がある?

遅刻や欠勤、降格、配置部門の変更などで賃金カットを受ける機会はいくつかありますが、会社がカットできる金額については制限が設けられています(労働基準法91条)。

具体的にどのような制限があるのか、見てみましょう。

減給の限界とは?

労働基準法91条は、制裁としての減給について以下のように定めています。

  • 1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない
  • 総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない

仮に1日あたりの平均賃金が10,000円の場合、会社は遅刻1回につき1日ぶんの半額にあたる5,000円以上の減給をしてはなりません。

また違反行為が積み重なったとしても、減給の総額が月給(月給制の場合)の10分の1を超えてはなりません。

ですが具体的な金額を考える前に、そもそも様々な賃金カットの行為が「減給」にあたるかがまず問題となります。

例えば年俸制など、次期の賃金が当期の成果等に左右される場合に賃金が低くなったとしても、それは労働契約に基づき次期賃金額が変更決定されたということにすぎず、制裁的な「減給」には抵触しません。

同様に、職務内容によって賃金が固定されているような場合、職種や職務内容が変更されることに伴い賃金が変わることも労働契約に基づいて賃金額が変更されていることになり、減給とはなりません。

逆に遅刻や早退への制裁としての賃金カット、懲戒処分による賃金カット、従来の格付けが高すぎるという判断に基づき、従来格付けされていた職能等級の見直しにより減給がなされる賃金カットなどは、労働基準法91条の制限をうけます。

会社の損害に応じて賞与をカットするのは違法?

例えば労働者側の不注意によって会社に100万円の損害を出してしまった、よって支給する予定であった賞与をカットすることは違法とはならないのでしょうか。

賞与とは、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額があらかじめ確定されていないものを指します。

したがって賞与の一部カットが、賞与額の決定前段階でなされており、あくまで人事評価の結果と言えるのであれば、違法とはなりません。

これに対し、当期の賞与額が決定した後に賞与をカットするような場合は制裁としての減給にあたるため、労働基準法91条による制限を受けます。

出勤停止により賃金が大幅減額されるのは違法ではない?

たとえば月間の所定労働日数が20日程度のとき、3日以上の出勤停止処分を課すと月収が10%以上低下することになります。

このような処分により結果的に賃金が減っても、労働基準法91条に抵触せず、違法ではありません。

なぜなら、出勤停止処分を課すことによる減収と、減給処分とは別個の問題であり、減給処分について定めた労働基準法91条には抵触しないためです。

ただし、出勤停止処分を課すことがあり、それにいたる事由や処分の程度が就業規則で明示されていなければ、出勤停止処分を課すことは違法となる場合があります。

会社と労働者のお金の貸し借りに関する疑問

急に大きなお金が必要になった…というときに、選択肢として「給料を前借する」という考えが浮かぶかもしれません。

ですが、実際にそのような行為が可能なのでしょうか、またはトラブルの原因とはならないでしょうか。

会社から借金することはできる?

給料の前借、ということは比較的広く行われています(社内貸付制度など)。

ですがお金を貸していることを盾として、返済し終わるまで退職を許さないというような、金銭の貸借と労務の提供とが密にかかわり、身分的拘束を伴うものは禁止されています(労働基準法17条)。

よってその貸付の原因、期間、金額、金利の有無等を総合的に判断して、「労働する代わりに金を貸す」という旨のものではないことが極めて明白な場合には、労働基準法17条の規定は適用されないと判断しています。

したがって、労働者の生活をサポートするようなもので、金額面、金利面で問題がなければ、給料を前借することも問題はありません。

なお返済方法についてですが、労使協定を結んでいれば賃金から一定額控除する方法での返済も許されます(労働基準法24条)。

または労働者の完全な自由意思に基づくことが客観的に明らかな個別合意に基づく場合にも、賃金から一定額控除することは違法とはなりません。

会社からの借金と賃金・退職金を相殺できる?

会社から金銭を借りたとき、多くの場合は賃金から一定額を控除してもらい毎月の支払いとする、という形をとることが多くなっています。

ですが、例えば会社から「賃金の9割を支払いにあててもらう」などと要求されたならば、労働者の手元に賃金がほとんと残らず、苦しむことになってしまいます。

そこで、賃金や退職金の4分の3に相当する部分については、使用者側から相殺することはできないと定められています(民法510条、民事執行法152条)。

つまり、賃金が20万円である場合、会社側はその4分の3である15万円については、労働者に渡さなければならないということになります。

ただし両当事者がお互いに合意している場合には、上記のような制限を超えて相殺を行うことは許されます。

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