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賃金がいつ・いくら・どのように支払われるかは労働者にとって最大ともいえる関心ごとであり、適正な賃金を受け取ることは重要な権利です。
ですがその支払い基準や支払い時期、計算方法など、会社の対応に疑問を抱いたことはないでしょうか。
「この時に賃金は発生しないの?」「給与の支払いが遅れてる」「この賃金に関する規定は違法なのでは?」そんな疑問が浮かんだときは放っておかず、窓口に相談をするようにしてください。
賃金とは、労働の対償として使用者が労働者に支払うものです。
そもそも、この時に賃金は発生するのか? 支払ってはもらえないのか? という疑問が生じうるシチュエーションについて考えてみましょう。
入社前研修であっても、賃金が支払われなければならないことがあります。
入社前研修への参加が「労務の提供」にあたるのであれば、会社には賃金支払い義務が生じます。
具体的には入社にあたっての誓約書等により参加が義務付けられている、入社後の業務遂行における必要不可欠な知識や技術の習得を目的としているなどの事情があれば、使用者の指揮命令下にあるとして労務の提供に該当します。
その際の支払い金額については原則として最低賃金以上の賃金でなくてはなりません。
なお例外として会社が試用期間としての適用除外許可を受けている場合には、最低賃金未満での賃金の支払いが認められます(最低賃金法7条)。
なおインターンシップなどの場合は、その目的は賃金の獲得ではなく、就業体験そのものや知識見聞の獲得にあります。
よって使用従属関係が認められないことも多く、その場合には賃金は支払われなくとも違法ではありません。
賃金は、労働者に直接支払われます(労働基準法24条1項)。
これは賃金の中間搾取を避けるための規定であり、仮にそれを許す旨の労使協定を結んでいたとしても例外は認められません。
よって、労働者の家族・債権者・代理人・委任を受けた者であっても、賃金の支払いを代わりにうけることはできません。
唯一、使者が賃金を代わりに受け取ることは問題ありません。
使者とは、自らの判断で行動することなく、本人の手足となって動く者をいいます。
使者にあたるかどうかは、「使者に賃金を受け取らせる」という労働者本人の意思が明白で、かつ本人が来社できないなどの事情があり、その意思に基づいて使者が来たような場合には、使者に対する賃金の支払いも行われるべきです。
自宅待機の理由によって、賃金が支払われるか否かが分かれます。
原則として賃金は、労働者が労務を提供した時に支払われます。
したがって、懲戒処分など労働者自身の都合・責任により自宅待機となった場合は、賃金は発生しません。
一方で事業所の改修、会社から命令された自宅待機期間など会社側の都合による場合は、賃金が発生します。
この時、会社側は最低でも平均賃金の60%以上の手当を支払わなければなりません(労働基準法26条)。
平均賃金の計算方法に関する疑問はこちらをご覧ください。
通常、手当などを含むお給料は決まった日に支払われます。
ですがある日、会社の都合でその振込が遅れたり、一部が次の給料日にくりこされたりしたような場合には、どのような問題が発生するのでしょうか。
原則として賃金の全額を支払わないのは違法ですが、その合理性や次回支払いまでの期間を考慮して、認められる場合もあります。
原則として、賃金はその全額を労働者に支払わなければならず、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません(労働基準法24条)。
例として、給与の中の割増賃金部分についてのみ翌月の給料日に支払う、という規定がおかれているとします。
このような当月中の給与の一部を翌月給与支給日に繰り越して支払うような行為については、労働基準法に反し違法であるとも考えられます。
しかし、結局翌月の給料日までには賃金の全額が支払われること・割増賃金部分はその月の勤務実績に基づき変動しうること・実際の支払いが行われるまでの期間が不当に長いとは言えません。
よって、割増賃金部分だけを翌月支払いとする規定も、それだけで違法になるとは限りません。
労働者は会社に対し、未払い額に法定利率を乗じた額の遅延損害金を支払うよう請求することができます。
就業規則などで定めた給料日に賃金の全部または一部を支払わないことは、会社が契約内容を果たさなかったことになります。
よって、労働者は賃金未払いに対して損害賠償請求をすることができ、またそれにあわせて遅延損害金も請求できます。
この時の遅延損害金の金額は、「未払い賃金の金額×0.06*×(支払期限の翌日から実際の支払日/365日)」の計算式で計算されます。
(*2020年4月1日以降は0.03となる(民法404条))
なお賃金などの請求権には2年間(2020年4月1日以後に支払期日が到来する労働基準法の規定による退職手当以外の請求権の時効は当分の間3年)の時効があるため、遅延損害金もその範囲内でのみ発生します。
原則として、賃金の支払いが遅れるのは労働基準法24条に違反します。
なお、賃金の支払日は就業規則や労働協約によって決定・変更することができます。
よって十分な準備期間をおいたうえで就業規則を変更し、賃金の支払日を変更することは違法ではありません。
一方で賞与は必ずしも決まった期日に支払う必要はなく、また雇用契約上支給日が定められていても、労使合意によって支給日を変更することができます。
なお、賞与の支給が大幅に遅れたことで支給日在籍要件を満たすことができなかった退職者については、賞与の支払いが認められる可能性があります。
退職手当は、通常の賃金の場合と異なり、あらかじめ就業規則で定められた支払時期に支払えば足りるとされています。
退職手当も賞与と同様に、労使合意により支払時期を遅らせることができます。
平均賃金は、残業代や休業手当、解雇予告手当の金額を考えるときに必要になってきます。
給与所得者の場合、多くの場合は以下の計算式で計算されます(労働基準法12条)。
直前の賃金締切日から3ヶ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額÷その期間の総日数
この時の賃金総額には諸手当は含まれるかわり、臨時の賃金などは含まれません。
また、この期間の業務上の負傷疾病による療養期間・使用者の帰責事由による休業期間などは含まれません。
それでは、この計算式にまつわる疑問に答えていきます。
平均賃金とは、原則としてこれを算定すべき事由の発生した日(賃金締切日がある場合は直前の締切日)以前の3カ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額を、期間の日数で割った金額をいいます。
ですが雇入後3カ月に満たない労働者の場合は、3カ月の期間をとって算定することができません。
そこでそのような労働者については、雇入後の期間中の賃金の総額で算定します。
さらに雇入れ後にまだ一度も賃金が支払われていない労働者の場合は、あらかじめ支払う賃金額が定められている場合にはその額・定められていない場合には、その日に当該事業場において同一の業務に従事した労働者の一人平均の賃金額から計算されています。
平均賃金の算定基礎となる賃金は、直前3カ月間の算定期間中に労働者に対して支払われた賃金の総額ですが、算定事由発生時点ですでに債権として確定していた賃金も含みます。
この時、もしも賃金協定締結など賃金の値上げ(賃上げ・ベースアップ)がなされ、以前の賃金に追加支払いをすることが決まっていた場合はどうなるでしょうか。
平均賃金算定事由が発生した後に賃上げが決まったときは、旧賃金ベースで平均賃金を算定します。
一方で平均賃金算定事由が発生する前に賃上げが決まったときは、新賃金ベースで算定し、追加支給分も「賃金の総額」に算入します。
賃金や手当、昇給などについて実際にいくらになるか考えようとすると、様々な疑問が生じてきます。
それらの支払いに関する疑問に、一問一答形式でお答えいたします。
例えば本社が東京で事業所が他県にある場合、労働者の最低賃金はどちらの県の基準が採用されるでしょうか。
本社と支店、工場等が別の場所にある場合、それぞれ別個の事業となり、その支店や工場の所在する地域の最低賃金が適用されます。
同様に派遣中の労働者の最低賃金については、派遣先事業の事業所の所在地の最低賃金や業種別最低賃金で決定されます。
原則として、賃金は通貨で支払わなければなりません(労働基準法24条)。
通貨以外による支払いが認められる例外は以下のとおりです。
具体的には、あらかじめ労働協約を締結したうえで自社製品や住宅の貸与などが考えられます。
なお、職場に労働組合がない場合は労働協約を結べませんので、通貨以外の支払いはできません。
またストック・オプション制度として、企業が従業員等に対し自社の株式を将来あらかじめ設定された一定の価格で購入できる権利を与える場合もあります。
ですがあくまで株を購入するかは労働者側の選択によること、なんらかの利益が現実に支給されているとも言えないため、ストック・オプションは賃金として扱われません。
通勤手当を現金ではなく定期券で支給することは、賃金を通貨で支払う、という原則に違反しているようにも思えます。
通勤手当は、①労働者の生活を維持するために使用者がその雇用する労働者に支給するものであり、②労働契約上その支給条件が明確なものであれば、労働基準法上の賃金として扱われます。
よって、通勤手当を定期券で支給することは、あらかじめ労働協約で決定していなければなりません。
会社は、出来高払制その他の請負制で使用する労働者に対し、「労働時間に応じて一定額の保障」を行わなければなりません(労働基準法27条)。
これは、労働者が業務に従事し時間を費やしたにもかかわらず、売り上げ低迷等により手取り賃金が著しく低くなることを防ぐ趣旨です。
なお、労働基準法27条にいう「労働時間に応じた一定額の賃金」とは、労働時間に応じた時給のことです。
したがって、保障給の定めのないオール歩合制は労働基準法27条に違反して許されません。
就業規則には、必ず昇給の有無、昇給時期、昇給率、昇給の条件等を記載しなければいけません。
ここで、昇給が会社の義務となるのかは就業規則の書き方によります。
例えば「従業員の基本給につき毎年〇月に〇円の昇給を行う」と規定される場合には、毎年の定昇給が確定しており、期間が経過するごとに具体的な昇給を請求できる雇用契約上の権利が発生しているので、会社が定期昇給をしない行為は違法となります。
一方で、「技能・勤務成績良好な者につき、会社の業績等を勘案し原則として毎年4月に行う」等の記載しかなく、かつ、一定額を定期昇給するなどの労使慣行もない場合、会社は定期昇給をしなくとも違法とはなりません。
現在、賃金に男女差を設けることは禁止されています(労働基準法4条)。
さらに直接男女差に基づいて差を設けてはいなくとも、実質的一方の性の構成員に相当程度の不利益を与え、しかもその基準に合理性・正当性が認められない間接差別も認められません。
具体的には、給与の決定に関し世帯主かどうか・勤務地非限定とするかどうかを基準とする賃金制度が、その運用方法も含めて女性であることを理由とする賃金差別であると認められた例があります。
また賃金規定以外にも、以下のような規定は違法となる可能性があります。
パートタイム・有期雇用労働法により、同一企業内において、通常の労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されました。
就業の実態が同じと言えるかを判断する際には、以下のような要素が考慮されます。
これらをもとに待遇の内容、待遇の目的などから、待遇差が不合理であるかどうかを判断します。
一方で所定労働時間が短かったり、個人の勤務成績による差異に関しては不合理な待遇差であるとは言えません。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。