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現在、95.5%の企業が定年雇用制を採用しており、60歳を定年としているところが最も多くなっています。
解雇や自己都合退職と異なり、定年退職であればトラブルもなく円満に退職できる――というわけではありません。
この記事ではあなたの会社の定年退職制度そのものに、定年時の有給の取り扱い、その後の再雇用について違法性がないかを確認・解説しています。
定年制とは、労働者が所定の年齢に達したことを理由として、自動的にまたは解雇の意思表示によって、その地位を失わせる制度です。
そもそも、定年制はずっと働き続けたい労働者にとってはありがたくない制度です。
また、当初65歳とされていた定年が60歳に引き下げられたとしたら、働ける期間が5年間縮まってしまうことになります。
そのような、定年制にまつわる労働者に不利な変更に効力はあるのか考えていってみましょう。
定年制の導入に関しては、そのための規則条項が合理的なものである限り、違法とはなりません。
定年制の制度自体は、人事の刷新・経営の改善等、企業の組織および運営の適正化の必要性から合理性があると考えられています。
定年制を導入するには、そのように就業規則を変更しなければなりません。
就業規則の作成または変更によって労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されませんが、その規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者はその適用を拒むことはできません。
合理性の有無は、具体的には以下の要素などを総合考慮して判断されます。
また、定年制導入にあたっては①定年年齢は60歳を下回ることは許されない(高年齢者雇用安定法8条)、②男女同一の年齢としなければならない(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律6条4号)等の制限があります。
自動的に解雇となるかどうかは、その会社が採用している定年制の制度によって異なります。
定年制には、定年に達したことによって自動的に退職する「定年退職」制と、定年に達したことを理由として解雇する「定年解雇」制があります。
定年「解雇」の場合には、以下のような制限があります。
仮に60歳での定年制度があったとしても、労働慣行によって65歳で定年となる場合があります。
労働慣行とは、つまり社会や取引の中で同種行為が繰り返され、当事者が特段の意思を表示しなければその取り扱いに従う状況になっていることを指します。
労働慣行がある場合もその慣行は尊重され、原則として当事者がそれと反する行為をすることは許されなくなります。
労働慣行が認められるための要件としては、以下のようなものが挙げられています。
具体的に就業規則で60歳定年制を定める企業において、労働慣行により65歳定年制が認められるためには、60歳で退職扱いとなる者がいないこと・例外なく65歳まで勤務し続けていること・使用者もそのことについて規範意識を有するに至っていることが必要となります。
定年年齢を引き下げることについて、その必要性と労働者が被る不利益などを比較考量して、合理性が認められなければ違法・無効となる可能性があります。
定年年齢に達するまで雇用が続くことが保障されている、とまでは言えません。
ですが特段の必要がない限り解雇をしないのが通常で、定年年齢に達するまで雇用が保障される、という労働者の期待は保護されるべきです。
したがって、このような合理的な期待を侵害する変更は、就業規則の不利益変更として、その有効性に関する判断基準によって審査されることになります。
すなわち、定年年齢の引き下げの必要性と、労働者が被ることになる不利益の程度を比較考量して、引き下げに合理性があるかどうかが判断されます。
多くの会社では、賞与の支給に関して「賞与支給日に在籍していること」という規定を設けています。
ですがその日直前に定年退職された場合、賞与算定期間に勤務していたとしても、賞与が支払われないということになります。
このような取り扱いについても、労働者に当然に賞与請求権が認められるわけではないこと・支給日在籍要件が明確かつ合理的な基準であることから、賞与が支払われないことも違法とは言えません。
定年引上げに伴う賃金引下げは、多くの場合労働者への不利益変更となり、その合理性によって無効かどうかが判断されます。
定年制度の導入・定年年齢の引き下げなど労働者に不利益な変更を制定した就業規則の変更は、その必要性と労働者の被る不利益の程度などを比較考量して合理性があるかどうか決定されます。
それ以外の変更として、定年年齢を60歳から65歳まで引き上げるかわり、50歳以降の賃金を減額する、とした場合、これは労働者に不利益な変更にあたるのでしょうか。
裁判例では、このような就業規則の変更は不利益変更にあたるとするものの、合理性があると判断したもの・合理性がなく無効としたもので分かれています。
実際に労働者への不利益変更に合理性があるかどうかは、賃金の引き下げ幅や実際に影響を受ける社員の人数、会社の経営状態など変更の必要性などから総合的に判断されます。
定年退職する際に、その時点で残っている年次有給休暇の扱いはどのようになるのでしょうか。
年次有給休暇の買い上げとは、労働者が権利として有する年休について、一定の金額を支払う代わりにそれに相当する日数を減じる行為をいいます。
これは労働者が現実に休暇を取得する機会を奪うことになりますから、年休の買い上げは原則として許されません。
ですが定年退職する際に、現実に消化せず残った有給を買い上げしても、それは休暇の機会を奪ったわけではないので、違法とはなりません。
したがってあらかじめ買い上げ金額を定めて、定年退職者の未消化年休を買い上げる制度を設けることは違法にはなりません。
ですが一定の金銭を提示して年休の買い上げを迫ったり、年休を買い上げる旨の予約をすることは違法となります。
年休発生日直後に定年退職をすることが決まっていても、年次有給休暇は問題なく発生します。
よって会社側の対応としては、年休の発生日を繰り上げて消費させること・退職日にも余っている年休を買い上げすることなどが挙げられます。
年休発生の基準日制度を設けた場合、原則として最初に年休が発生した基準日がそれ以降も発生日となることが想定されていますが、年休の発生日を繰り上げることも問題はありません。
計画年休制度とは、企業が労働者の有給取得日をあらかじめ指定できる制度です(労働基準法39条6項)。
計画年休の期間前に定年退職するとしても、計画年休での消化ぶんの年休などを残しておく必要はありません。
高年齢者雇用安定法は、高年齢者が年金受給開始時まで働き続けられる環境の整備を目的としている法律です。
具体的には、労働者を65歳まで高年齢者雇用確保措置として、定年制度を導入する場合には以下のいずれかの措置を導入することを会社に義務づけています(高年齢者雇用安定法9条1項)。
原則として、派遣社員は定年といった年齢とは関係なく一定の期間の経過により契約が終了するため、高年齢者雇用安定法の適用はありません。
ただし、有期雇用契約という形をとっていても、反復継続して契約の更新がなされていて実質的には期間の定めのない雇用である場合があります。
その場合には高年齢者雇用安定法が適用される余地があり、「60歳以降は契約を更新しない」などの定めは違法となる可能性があります。
継続雇用制度とは、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度のことを指します。
高年齢者雇用安定法に基づいて、65歳までの継続雇用制度を導入する場合、その対象者は希望者全員となります。
一定年齢以上の社員の賃金水準を引き下げるということは、就業規則を労働者にとって不利益に変更する場合に当たります。
このような不利益変更は、変更内容に合理性がある場合には例外的に労働者の同意がなくても不利益変更が認められます。
合理性があるかどうかは、変更後の定年年齢、賃金引下げがなされる労働者の数、賃金の減額幅、人件費削減の必要性などから総合的に判断されます。
定年後の再雇用制度とは、労働者の希望に応じて定年退職後に新たに雇用契約を結ぶ制度のことを指します。
この再雇用に関して、会社との手続きで注意しなければいけない点がいくつかあるので見ていきましょう。
再雇用後の年休について、継続勤務年数は退職前から通算することが可能ですが、付与日数は少なくなる可能性があります。
基本的に年次有給休暇は、勤務年数が長いほど多く支給されます。
定年退職後に再雇用された場合、継続勤務年数はリセットされてしまうのでしょうか。
そんなことはなく、原則として定年退職前からずっと継続して勤務していた、と評価されます。
もっとも、定年退職と再雇用との間に相当期間があり、労働関係が断絶していると認められる場合は、勤務の継続性を否定することもあるとされています。
この期間について具体的な基準は定められていませんが、数週間程度の間を置くという程度では継続性が否定されることにはならないと考えられています。
なお非正規・短時間労働者という形で再雇用された場合、年休の付与日数も異なってくる可能性があります。
1週間の所定労働時間が30時間未満・所定労働日数が4日以下の場合、年休の付与日数は通常の労働者よりも少なくなります。
在宅勤務という形で再雇用される場合、それが雇用契約であるのか、それとも請負ないし委任契約であるのかを確認する必要があります。
どちらの契約であるかによって、どの法律で労働者が保護されるかが異なるためです。
雇用契約であるか、請負ないし委任契約であるかは、契約の名称にとらわれず、実態により判断されます。
在宅勤務者についても、仕事の依頼に対する諾否の自由がなく、業務の内容や遂行方法について指揮命令を受け、勤務場所や時間の拘束があり、業務遂行を他人に代替させ得ないという場合、または、報酬の額や計算方法などが一般従業員と同一であるときは、雇用契約をしている労働者に当たると考えられます。
ご自身が労働者である場合には、労働時間などについて労働基準法が守られていなければいけないこと、労災保険の適用があること、会社には安全配慮義務が課せられることなどに注意が必要です。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。