地震は労災対象?通勤災害の適用範囲・副業中の休業補償給付も解説

更新日:

監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

労災

2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

このページでは、労災に関するいくつかの疑問にお答えしていきます。

  • 勤務中の地震でも労災は適用されるのか?
  • 終業後に会社に残って組合活動などをした後の帰宅も通勤災害の対象になるのか?
  • 副業しているとき、休業補償給付はどのように計算されるのか?

これから上記の事柄について解説していくので、気になる方はぜひご参考になさってください。

勤務中の地震によるケガで労災は適用される?

通常は勤務中の地震で労災は適用されない

業務遂行中に地震によって建物が倒壊して負傷した場合、その原因は地震にあるので、一般的には業務起因性はなく、業務上の災害とは認められません。

地震によって発生した災害の業務上外に関しては「地震に際して発生した災害の業務上外について(昭和49年10月25日 基収2950号)」で厚生労働省の基本的な考え方が通達されています。

「地震に際して発生した災害の業務上外について」では、「労災保険における業務災害とは、労働者が事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験法則上認められる場合をいい、いわゆる天災地変による災害の場合にはたとえ業務遂行中に発生したものであっても、一般的には業務起因性は認められない。

けだし、天災地変については不可抗力的に発生するものであって、その危険性については事業主の支配、管理下にあるか否かに関係なく等しくその危険があるといえ、個々の事業主に災害発生の責任を帰することは困難だからである。」

とされています。

しかし、この通達では、上記の一般論に続けて、地震の場合でも業務起因性が認められるケースにも言及しています。

「しかしながら、当該被災労働者の業務の性質や内容、作業条件や作業環境あるいは事業場施設の状況などからみて、かかる天災地変に際して災害を被りやすい事情にある場合には天災地変による災害の危険は同時に業務に伴う危険(又は事業主の支配下にあることに伴う危険)としての性質を帯びていることになる。

したがって、天災地変に際して発生した災害も同時に災害を被りやすい業務上の事情(業務に伴う危険)があり、それが天災地変を契機として現実化したものと認められる場合に限り、かかる災害について業務起因性を認めることができる

ただし、天災地変が非常な強度を有しているような場合には、業務起因性を認めてもらうことは困難です。

なぜならば、事業主の管理下の有無に関わらず災害を受ける危険があり、業務上の危険な事情がなくとも被災したとみなされる可能性が高いからです。

避難行為中の災害に労災は適用されるのか

なお、地震による避難行為中に災害に遭った場合、通常は労災が適用されます。

上記通達では、「天災地変その他業務と関連する突発的事情によって臨機応変に行われる避難行為については、当該行為の合理性ないし必要性の有無を考慮し、その是非を判断する必要があり、一般的に業務行為中に事業場施設に危険な事態が生じた場合において当該労働者が業務行為の継続が困難と判断しその危険を避けるために、当該施設より避難するという行為は、合理的行為として認められる」として、合理的行為を行う際に被った災害は、一般的に業務起因性が認められるとしています。

終業から数時間後に帰宅した場合も通勤災害の対象になる?

短時間の居残りであれば通勤災害と認められる

通勤災害における通勤は、「就業に関し」行われる住居と就業の場所との間の往復行為です。

「就業に関し」とは、移動行為が業務に就くため又は業務を終えたことにより行われるものであることを必要とする趣旨であり、移動行為が業務と密接に関連して行われることが必要とされています(昭和48年11月22日 基発644号)。

終業時刻後に組合活動をして帰宅した場合は、移動行為が「就業に関し」なされたといえるかという問題があります。

しかし、上記通達では、「業務の終了後、事業場施設内で、囲碁、麻雀、サークル活動、労働組合の会合に出席した後に帰宅するような場合には、社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせると認められるほど長時間となるような場合を除き、就業との関連性を認めても差し支えない」としています。

そのため、会社施設内に居残って組合活動などをした後であっても、長時間のものでない限り通勤災害として取り扱われます。

居残り後の帰宅で事故に遭った事例

認定事例では、勤務終了後、社内の自分の使用机で労働組合の会計の仕事に約1時間25分従事した後、バイクで帰宅する途中で飛び出した犬と接触し、道路に投げ出されて負傷した事例があります。

この事例では、「本件の組合用務に要した時間は、就業規則との関連性を失わせると認められるほど長時間といえない」として、通勤災害としています(昭和49年3月4日 基収317号)。

これに対して、勤務終了後、会社別館1階にある組合事務所で約4時間組合用務を行った後、帰宅途中に交通事故に遭い死亡した事例があります。

こちらの事例では、「勤務終了後、業務外の用務に従事して約4時間を経た後の被災者の帰宅行為が、なお業務と密接な関連をもって行われたものであると解することは困難であるといわざるを得ない」として、通勤災害とは認められないとしています(平成元年7月31日 昭62労113号)。

終業後2時間を超えると通勤災害は認められづらい

種々の認定事例をみると、業務終了後の組合活動の時間がおよそ2時間を超えると、社会通念上就業と帰宅との直接的な関連性が失われると考えられています。

また、通勤災害と認められる業務終了後の活動は、事業場施設内でのものである必要があります。

副業しているときの労災保険の休業補償給付はどう計算される?

休業補償給付の給付基礎日額の求め方

業務災害の保険給付は、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付の7種類があります(労災保険法12条の8第1項)。

このうち「休業補償給付」は、1日について「給付基礎日額」の6割とされています(14条1項)。

この「給付基礎日額」は、労働基準法12条の平均賃金に相当する額とされています(労災保険法8条1項)。

平均賃金は、算定事由発生前3カ月間に支払われた賃金総額を、その期間の総日数で除して算定します(労働基準法12条1項)。

今回の場合、平均賃金を算定するための「賃金総額」とは、被災した副業先で支払われた賃金のみか、それとも本業で支払われた賃金も含めるかが問題となります。

なお、就業規則において労働者の兼業が禁止されている場合があります。
仮に兼業禁止に違反して副業をしていたとしても、就業規則に違反したことのみで副業先との雇用契約が無効とはならないため、副業先の労災保険の適用に影響はありません。

災害が生じた事業場の賃金をベースに給付額が算定される

労働者が2つの事業所でそれぞれパートタイム労働者として使用され、両事業場の使用者からそれぞれ賃金が支払われているとします。

その場合、「賃金の総額」とは、両使用者から支払われた賃金の総額ではなく、算定事由の発生した事業場で支払われた賃金のみをいうとされています(昭和28年10月2日 基収3048号)。

したがって、2つ以上の事業場で兼職する労働者がそのうち1つの事業場で業務上の災害を負った場合の休業補償給付額は、業務上の災害を負った事業場で支払われた賃金をベースに算定されます。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

詳しくはこちら

みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。