不当解雇・退職勧奨の
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前の仕事をやめて、新たな仕事に応募するというのは非常に勇気のいることであり、労働環境を大きく変えるチャンスです。
ですが、実は応募や採用過程の段階で、コンプライアンス意識の低さが出てしまっている企業もあります。
この記事では、応募/採用過程において、法律的に問題のある事項をまとめてみました。
実際の応募方法に違和感を覚えている方、事前に言われていたのと職務内容が異なっていた方、面接での質問が差別的だと感じられた方に向けて書かれています。
目次
新しい職に応募するとき、様々な媒体で労働条件を見比べることになります。
そんな中で、「こんな記載をしていたらNG」と言えるような注意点を集めました。
なお、募集対象が特定されているかどうか、文書か口頭かを問わず、いずれも労働者となることを勧誘する行為である限り、「募集」に当たります。
労働者の募集を行う者は、求職者に対して以下の労働条件を明示しなければなりません(職業安定法5条の3)。
なお募集広告に記載された内容と実際の労働条件との間に差異があったとしても、直ちに違法というわけではありません。
実際にインターネット上での募集ですと、募集掲載時と応募時で労働条件が変わっている場合もあります。
入社にあたっては改めて労働条件を確認し、実態に納得したうえで就労するようにしましょう。
会社がどのような人物をどの程度採用するか、また、どのような選考基準によって選抜するかは、原則として自由です。
ですが雇用における性差別を防止するという観点から、性別にかかわらず雇用の機会は均等に与えられていなければなりません(男女雇用機会均等法5条)。
具体的には、以下のような措置は法律違反となります。
したがって、「男性のみ」「女性のみ」を募集することは許されません。
そのような募集・採用行為は違法な行為として、労働者は会社に対して損害賠償請求をすることも可能です。
なお、以下のような職業については、性別を限定して募集を行っても許される場合があります。
原則として、男女別に採用予定人数を設定し、それに従って採用選考をすることは違法となります。
ですが例外的に、例えば、総合職における女性の数が著しく少ない企業が、総合職の女性の数が一定数に達するまで、一時的に総合職の女性を優先的に採用するといった措置(ポジティブ・アクション)をとることを認めています。
何故ならば、固定的な男女の役割分担意識に根差すこれまでの企業における制度や慣行が原因となって、雇用の場において男女労働者の間に事実上の格差が生じていることを解消することに繋がるためです。
このような事情の存否については、女性労働者が男性労働者と比較して4割を下回る程度に少ない状況にあるか否かによって判断することが適当とされています。
他にも、男女の採用数に差をつける以下のような募集は違法となります。
コース別採用とは、「総合職」や「一般職」等のコースを設定し、各コースによって賃金、配置、昇進などの面において差を設け、各コース別に人員の採用を実施する制度です。
総合職と一般職の労働条件の差は、性別による差異ではなく、職務内容の差や転勤の有無を根拠とした区別なので、このような採用方法自体は違法ではありません。
しかしコース別採用に付属しがちな以下のような募集・採用に関しては、違法と判断されます。
また、性別とは関係ない基準を設けておきながら結果的に片方の性別に不利益がもたらされるような扱いを間接差別と呼びます。
間接差別として、以下のような募集・採用も違法となる可能性があります。
募集の文面に問題がなくとも、面接や入社の際に、会社の姿勢に違和感を覚えることがあるかもしれません。
実際の面接・入社の際に労働者が気を付けるべきポイントについて解説します。
募集条件が示された時点と採用時との間には、時間的な間隔が置かれるので、募集条件において示された条件と採用時の労働条件とが食い違うということもあります。
例えば、募集時の求人票には日給3万円と書かれていたのに、実際は日給1万円だったという場合をかんがえてみましょう。
求人票記載の賃金額は最低限の保障という意味ではなく、あくまでも見込み額の記載にすぎません。
ですので、現実に採用された時点で締結される労働契約における賃金額が求人票記載の賃金額を下回っていたとしても、原則として、その差額を請求することはできません。
しかし、応募者は募集条件として示された内容が大きく変更されることはないだろうと期待して応募しているので、企業側はこの期待に著しく反してはならないとされています。
したがって、実態とかけ離れた条件を示して募集する場合や、募集条件と現実の労働条件との差をぎりぎりまで伝えない場合には、その会社側の行動は違法となる可能性があります。
会社は、業務の目的の達成に必要な範囲を超えるような個人情報の収集は、本人の同意がない限り許されないとしています(職業安定法5条の4)。
具体的には、特別の業務上の必要性があり、収集目的を示して本人から申告してもらう場合を除いて、以下のような事項を収集するのは違法となる可能性があります。
また、応募者の適性・能力のみを採用基準とすることを目指す観点から、採用選考では以下のような事項を尋ねたり実施したりするのは避けるべき、と通達されています。
なお以上のような質問や実施をすることが、直ちに違法行為となるわけではありません。
ですが労働者としては、採用過程において、適性と能力の判断に無関係で不適切な事項について質問や実施をしてくる会社は危ないのではないか、という風に考えることも大切です。
前の職場をやめて新しく就職する際、退職理由を聞かれる場合があります。
退職理由を尋ねられても、それは違法ではありません。
前職において従事した業務内容や勤続年数、あるいは退職理由などは、採否の決定や採用後の労働者の配置等に関する決定に影響を及ぼす事項です。
ですので会社は、原則的には採用選考過程における前職を退職した理由についても聞けることになります。
ですが、会社が前職の職場に対し、本人に黙って退職理由をわざわざ確認するような場合には労働基準法ならびに個人情報保護法の点で問題になる可能性があります。
労働者の立場からは、プライベートなことは詳しく言う必要は無いことを知っておき、今後の就労に問題の無い範囲で話すとよいでしょう。
応募者の健康状態を判断資料とする目的で、健康診断を実施させようとする会社もあります。
このような健康診断に対しては厚生労働省や裁判所でも考えが分かれており、必ずしも違法とは言えません。
ですが、労働者自身の同意なくHIV検査や肝炎検査、色覚調査などを行うことは、プライバシーを侵害する違法行為となり得ます。
プライバシーの観点から受け入れられない診断については、拒否するようにしましょう。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。