数年前の非違行為・業務命令違反・経歴詐称で下される懲戒処分とは

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

懲戒解雇

2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

数年前の非違行為業務命令違反経歴詐称などを理由に、懲戒処分の対象になることがあります。

具体的にどのような行為を行うと懲戒処分の対象になるのか、どのような処分が下されるのか、ということなどをこれから解説していきます。

最後までしっかりと目を通し、懲戒処分に関する知識を身に着けていきましょう。

数年前にあった非違行為で懲戒処分される?

非違行為とは

非違行為とは、非行・違法行為のことです。

非違行為には、無断欠勤、出勤不良、勤務成績不良、遅刻過多、職場離脱、仕事上のミス、法律に違反する行為などが含まれます。

非違行為から数年後に懲戒処分される可能性

懲戒処分の目的が秩序維持であるとすれば、非違行為から長期間が経過した場合には、懲戒処分の必要性が乏しくなる場合があります。

判例では、平成5年から翌年にかけて職場で就業時間中に管理者に対して行われた暴行事件に関して平成13年に懲戒処分がなされたという事案について、裁判の結果、懲戒処分は無効とされたものがあります(最二小判平成18.10.6)。

その理由は、主に以下の通りです。

  • 被害者である管理職以外にも目撃者が存在したので、捜査の結果を待たずに労働者に対する処分を決めることは十分可能であった
  • 期間の経過とともに職場における秩序は徐々に回復しており、退職処分がされた時点においては、企業秩序維持の観点から懲戒解雇処分ないし論旨退職処分のような重い懲戒処分を行うことを必要とするような状況にはなかった

数年前の非違行為でも懲戒処分される場合はある

しかし、企業秩序を断続的であっても継続して乱している場合には、かなり以前の非違行為であっても懲戒の対象となる可能性が高まります。

業務命令違反を理由としていかなる懲戒もされうる?

いきなり懲戒の対象になることは基本的には無い

労働者の勤務態度に問題が生じてくると、上司から明確な命令が発せられることがあり、それでも労働者が命令を守らないときは、懲戒の対象となってしまう場合があります。

しかし、長期雇用システムの下では、懲戒処分として制裁を与えることよりも、労働者を教育することを目的とするケースが大半です。

そのため実務では、懲戒ではない事実上の注意指導や、人事権の行使による配置転換・転勤が行われることが多いです。

配置転換・転勤命令の不服従は懲戒の可能性が高い

しかしながら、配置転換命令や転勤命令など命令権の行使として行われる場合、この不服従に対する懲戒は積極的に行われ、企業秩序維持のためにも最強度の懲戒解雇が選択される場合があります。

有効性の判断は、業務命令自体の有効性の判断、そしてこれが有効であったとして懲戒解雇の有効性の判断とが順次なされます。

懲戒解雇が無効となる場合には、業務命令自体を無効とするか、相当性を理由に懲戒解雇を無効とする場合があります。

しかし、一般的には、人事権に基づく命令権は原則として有効とされるので、業務命令自体が無効とされることはあまりありません。

経歴詐称で懲戒解雇される可能性はある?

経歴詐称で懲戒解雇の可能性はある

長期雇用システムの下では、継続的な信頼関係はその基礎となります。

経歴詐称は、労働契約開始時に信頼関係を裏切っていたことになるため、軽微な懲戒処分では足りず、懲戒解雇がなされることがあります。

一方で、長年の経過により信頼関係が形成されてしまえば、かつての詐称の非違性は小さくなる場合があります。
また十分な労務提供をしている実績があれば、労働契約上の義務は果たしているといえます。

実際には、経歴詐称があっても懲戒にまで至らない場合も少なくありません。

採用の公平を期すために懲戒解雇されることがある

一方で、企業社会全体としては、採用の実態を考えたときに経歴詐称を抑止するためにも、懲戒解雇をせざるを得ない事情もあります。
そのため、懲戒となる事案では懲戒解雇が選択されることがほとんどです。

実務的には、事案の重大性について個別事案に即した判断がなされ、重大な経歴詐称が発覚した場合は、懲戒解雇も可能と考えられています。

経歴詐称で解雇にならないケース

大部分の就業規則では「重要な経歴の詐称」を懲戒事由に限定しています。

裁判例でも一貫して重要な経歴の詐称が懲戒事由となることを肯定しており、主に最終学歴、職歴、犯罪歴などの詐称が該当します。

解雇されるかどうかは、事前に経歴詐称が判明していたら「採用をされなかった」「同一の条件では雇用されなかった」といえる程度のものである必要があります。

そのため、学歴を詐称して入社したが、そもそも会社から提示されていた採用条件が「学歴不問」だった場合は解雇が無効となることもあります。

実際に、試用期間3ヶ月で採用された港湾荷役作業員が、大学を中退しているのに高校卒業とのみ履歴書に記載し、その詐称が発覚してなされた普通解雇が無効となった判例があります(名古屋地決昭和55.8.6)

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