パワハラの損害賠償請求|慰謝料の相場はいくら?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

上司に気に入られていないらしく職場で必要以上の叱責を繰り返されている、到底不可能なノルマを課せられている、私生活のことについて根掘り葉掘り聞かれる……。

これらの行為は、いわゆるパワー・ハラスメント(パワハラ)に該当するかもしれません。

被害者の方にとっては職場の相談窓口などを通じてパワハラ行為をやめてもらうのが一番ですが、他の有効な解決手段として損害賠償を請求することが考えられます。

損害賠償請求はパワハラ行為への抑止となるだけでなく、金銭を獲得することができればそれにより精神的ダメージの回復も図れるというメリットもあります。

この記事では、実際にパワハラにあたりうる行為とは何なのか、そのパワハラ行為に基づく損害賠償請求のやり方について解説していきます。

どんな行為がパワハラにあたる?

  • 「今の仕事ができないなら,他の人と交代させる」
  • 「給料に見合う仕事ができていないと判断したら給料を減額する」

こちらの二つの発言のうち、片方は損害賠償請求が認められたパワハラ発言です。

正解は「給料に見合う仕事ができていないと判断したら給料を減額する」の方です。

ですが、二つの発言にはあまり差が無いと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、実際にパワハラ的な言動を浴びせられていると、パワハラではなく自分が至らないから叱られているだけだ、とご自身を追い詰めてしまう方も少なくありません。

どのような行為がパワハラにあたるのかを、まずは確認してみましょう。

パワハラの定義とは?

パワハラとは、①職場の優越的な関係に基づき、②業務の適正な範囲を超えて、③身体的もしくは精神的な苦痛を与えたり、労働者の就業環境を害するものを指します。

パワハラとして認められるためには、①~③の定義を全て満たすことが前提となります。

かつ、同じ発言であってもパワハラに当たる場合と当たらない場合があります。

①~③の定義に加えて、言動の目的や経緯、頻度、企業文化、業務内容との関連性、労働者の属性や業績、心身の状況などを総合的に考慮して、果たしてその言動がパワハラか否かが個別に判断されます。

パワハラにあたる具体的な行為

パワハラの類型として、厚生労働省は以下の6つの類型を挙げています。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

それぞれの具体例としては、以下のような行為が典型的なパワハラとなります。

  1. 殴打や足蹴り、物を投げつける行為
  2. 人格を否定するような言葉、他の労働者の面前での威圧的な叱責を繰り返し行う
  3. 意にそわない労働者に対する別室への隔離や自宅研修の強制、集団無視
  4. 業務上明らかに不要、不可能な仕事の強制、私的な雑用の強制
  5. 誰でも遂行可能な程度の低い業務を行わせる、嫌がらせで仕事を与えない
  6. 個人情報の暴露、職場外での行動の監視行為

自身の受けている行為がパワハラにあたるのかどうか、お迷いの方は職場の相談窓口や、外部機関に相談をして客観的な意見を聞いてみるとよいでしょう。

パワハラで損害賠償請求できる相手は誰?

パワハラは一般的には民法上の不法行為(民法709条)にあたり、人格権や名誉感情などを侵害されたことに基づいて損害賠償請求をすることができます。

損害賠償のうち、主なものは精神的ダメージに対する慰謝料ですが、もしもパワハラにより通院することになっていたら、その治療費なども請求することができます。

パワハラをしてきた本人に請求できる?

請求の相手方としてはもちろんパワハラをしてきた上司などの張本人に対して、不法行為責任に基づく損害賠償請求をすることができます。

本人の発言を録音したものや、パワハラ的言動の示されたメールなどの書面、不当な業務内容を指示する書面などがあると非常に有利となります。

会社にも損害賠償請求できる?

上司などに不法行為責任が認められると、その責任は上司を雇っていた会社にも及びます(民法715条使用者責任)。

また、パワハラの内容によっては使用者責任のみならず安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求が出来る場合もあります。

例えば、被害者からパワハラについての相談を受けたにも関わらず、それを漫然と放置した結果、被害者が精神疾患を患ってしまったような場合が考えられます。

パワハラ事案での会社の責任とは?

2020年の6月1日から、会社(事業主)がパワハラを受けた労働者からの相談に対し、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じる義務を負うようになりました(労働施策総合推進法30条の2)。

これまではセクハラについて会社の防止措置などの義務はありましたが、パワハラについては法律の無い状態でした。

具体的に会社が講じるべき措置には、以下のようなものが挙げられます。

  • 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  • 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
  • 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

以上のような措置を会社がとっていない、と言えるのであれば、パワハラでの損害賠償請求が認められやすくなる方向に繋がるでしょう。

パワハラを理由とする損害賠償請求の実践

それでは実際に、上司から受けた行為がパワハラである、会社にも責任がある、そう思われたあと具体的にどう動くかを考えてみましょう。

パワハラの損害賠償金の相場はいくら?

一般的なパワハラ行為での損害賠償金(主に慰謝料)の相場は、およそ20万円~100万円と幅広いです。

実際の慰謝料の金額は、パワハラ行為の内容、苛烈さ、行われた状況、行為の続いた期間、被害者ならびに加害者の会社での立ち位置などで大きく変動します。

また、パワハラ行為が長期間に及んでいたり、その結果被害者が精神疾患に罹患してしまったなどの事情があったため、数百万円の慰謝料が認められた事例もあります。

パワハラの損害賠償請求をする手順

実際に損害賠償請求を行おうとするときの手順は、以下の通りです。

  1. パワハラの中止を求める
  2. 会社や上司との交渉
  3. 法的手段(民事調停、訴訟など)

意外に思われるかもしれませんが、いきなり訴状を出して訴訟を行う、ということはまずしません。

最初はパワハラをしてくる上司よりも上の上司への相談、必要に応じて内容証明郵便での損害賠償請求の意思表示を行います。

このとき、会社の人間と顔を合わせるのが辛い、法律的な書類の書き方がわからないなどの不安要素があるのなら、弁護士を代理人にたてるとよいでしょう。

損害賠償の支払いや業務の変更、他部署への異動など、被害者の方が望まれることは千差万別です。

それらが相談・交渉によっても受け入れられなかった場合、民事調停や訴訟などの法的手段に訴えていくことになります。

パワハラではなく業務の適正な指導と主張されたら?

パワハラに基づく損害賠償請求の場合、しばしばパワハラとされる行為が、適切な指導・教育であったと会社側が主張してくることがあります。

その主張の正当性を検討するにあたっては、以下の要素を確認する必要があります。

  • 労働者に指導・教育が必要な状況であったこと
  • 指導・教育が労働者の職務遂行の改善という目的のものであったこと
  • 指導・教育の内容が相当な方法で行われたこと

具体的には、人事考課の資料や労働者のミスを示す資料、指導・教育内容を示す報告書、他の従業員に対しても同様の指導・教育の実施があったかなどによって、本当に適切な指導・教育であったかを判断していきます。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。