セクハラの損害賠償請求|慰謝料の相場はいくら?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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2020年10月1日以降の自己都合退職者は、失業手当の給付制限期間が短縮される変更があります。

事務所内で上司に腰や胸を触られた、性的な発言をされたり性的な噂を流されている、または性的な関係を拒んだところ、配置転換をされるなど不利益な目にあわされた……このような行為は、典型的なセクハラにあたる可能性があります。

このようなセクハラにあった場合の解決方法の一つとして、その精神的苦痛を回復するために損害賠償請求をすることが考えられます。

この記事は、「あの行為はセクハラにあたるのか?」「セクハラの損害賠償請求はどうやってやるのか?」「いくらくらいの賠償金が受け取れるのか?」とお悩みの方に向けて書かれています。

あなたがされた行為はセクハラにあたる?

職場や飲み会の席で性的な接触や言動を受けたことのある方は多いはずです。

ですが損害賠償請求となると、それほどの行為だっただろうか、相手に悪気はなかっただろうから、お金を貰うほどでは…としり込みしてしまうかもしれません。

まずは「セクハラ」という行為がどのようなものなのか、確認していきましょう。

セクハラの定義とは?

セクハラとは、一般的に相手方の意に反する性的言動のことをいいます。

職場におけるセクハラの類型としては、①対価型セクハラ ②環境型セクハラ の2種類があります。

①対価型セクハラとは、性的要求を拒否したことなど、性的な言動に対する労働者の対応を理由として雇用上不利益な取り扱いをすることであり、②環境型セクハラとは、労働者の性的な情報を流布するなどの性的な嫌がらせにより職場環境を悪化させることです。

セクハラに当たるか否かの基準については明確な具体的基準はなく、個別の状況を斟酌して判断していきます。

例えば、性的な接触に対し明確な拒否がなくとも、それ以外の振る舞いで拒否を示そうとしていたり、相手の社会的地位が高く真っ向から拒否するのが難しい状況にあったなどの事情があれば、「意に反する」性的言動であったと認められる可能性があります。

不快に思うかは個人によって異なるため、当該個人の主観に加え、平均的な一般人の感じ方も考慮して判断されます。

損害賠償請求できる相手は誰?

セクハラをされた場合、まずセクハラをしてきた相手に対して、人格権を侵害されたとして不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求が可能です。

さらに、その相手を使用していた会社(使用者)に対しても、その対応によっては使用者責任(民法715条)に基づいて損害賠償請求することができます。

さらに会社が適切な防止措置や事後措置をとっていなかった場合には、職場環境への配慮義務に違反した、として不法行為や債務不履行に基づく損害賠償請求をすることも考えられます。

会社にはセクハラ防止をする義務がある?

会社は本来、労働者に対するセクハラにより就業環境が害されることのないよう、セクハラ被害にあった者への相談の実施など、必要な措置を行う義務を負っています(男女雇用機会均等法11条)。

実際に会社が講じるべき措置としては、以下のようなものが挙げられています。

  • 事業者の方針の明確化およびその周知・啓発
  • 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるセクシュアル・ハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  • 相談対応や事後対応におけるプライバシー保護、相談や事実確認への協力を理由とする不利益取扱いの禁止の周知

会社が雇用管理上の対応を十分にしていれば、会社に損害賠償請求をすることが認められない可能性もあります。

なお、ここでの対応とはパンフレットの配布や具体的な指摘の無い会議の実施など、通り一遍のものでは義務を果たしたと認められません。

セクハラに基づく損害賠償請求

それでは、実際に損害賠償請求を行う際の手順など具体的な問題を見てみましょう。

セクハラの損害賠償請求をする方法

まずは、相手方にどのような内容のセクハラを受け、いくら請求するのかなどを内容とした内容証明郵便を出し、損害賠償金(慰謝料)の請求をすることが考えられます。

その書類には、セクハラ行為がどのようなものだったのか・いくらの金額を請求するのかを明記します。
この郵便だけで相手方が被害者の真剣さを汲み取り、損害賠償請求に応じることもあります。

内容証明郵便に相手方が応じなかったとき・または話し合いが決裂した時は、多くの場合は弁護士やユニオンの力を借りて民事調停や民事訴訟などの手段で損害賠償請求を行っていくことになります。

セクハラの損害賠償請求の相場はいくらくらい?

セクハラにより請求可能な損害賠償金の相場は、行為態様の悪質さ、被害者の身心のダメージ、その後の職務への影響などで変動しますが、30万円~100万円ほどが認められることが多くなっています。

しかしながら、行為が長期間に及んでいたり、性交渉の強要にまで至っていたり、セクハラが原因で被害者が退職しているなどの事情があると、損害賠償金も増額される傾向があります。

セクハラの損害賠償請求で争いになるのは?

セクハラに基づく損害賠償請求の場合、主な争点となりやすいのは以下の3つです。

  • セクハラの事実の有無(対加害者)
  • それが業務に関連して行われたか(対会社)
  • 会社に職場環境配慮義務違反があったのか(対会社)

それぞれ、被害者としてどのような点に着目すべきかを見ていきましょう。

セクハラの事実を争うときのポイント

セクハラをしてきた相手が、その性的言動の事実自体について争ってくることがあります。

その場合は、以下のような証拠が被害者にとって有利にはたらくことがありますので、可能な限り収集しましょう。

  • LINEなどの履歴
  • 第三者の証言
  • 医師の診断書
  • 防犯カメラなどの映像記録
  • 事故直後のメモなどの記述
  • 録音記録

一方で、「確かにその行為はしたがセクハラには当たらないはずだ」などと行為の解釈の点で争いが生じた場合は、弁護士など専門家に相談して法律的な解決を目指せるとよいでしょう。

業務関連性を争うときのポイント

会社に対して使用者責任に基づく損害賠償請求をするには、セクハラ行為が会社の業務の執行について行われたことが必要です。

この業務との関連性の有無は、行為の場所・時間、加害者の発言等の職務関連性、加害者と被害者の関係などを考慮して判断されます。

例えば勤務終了後、職場外の居酒屋で行われたセクハラであっても、それが新入社員歓迎会などの場であれば業務関連性が認められる可能性が高いでしょう。

また、加害者が上司としての地位を利用してセクハラ行為を行ったことは、業務との関連性を基礎づける重要な事実となります。

職場環境配慮義務違反を理由とする不法行為または債務不履行に基づく損害賠償請求の場合にも、職場環境配慮義務違反を問う前提として、セクハラ行為が業務と関連したものであることが必要です。

職場環境配慮義務違反を争うときのポイント

会社に対して、職場環境配慮義務違反等を理由に不法行為または債務不履行に基づく損害賠償請求をする際、会社側がセクハラ防止措置を適切にとっていたと反論してくる可能性があります。

その場合、以下のような観点から、本当に適切な措置が取られていたかどうかを判断しましょう。

  • セクハラがあってはならない旨の方針を明確にし、労働者に周知・啓発していたか
  • セクハラ防止やセクハラ事案が発生した場合に関する規程を設け、労働者に周知・啓発していたか
  • 労働者からのセクハラに関する相談に適切に対応するための相談窓口を設置していたか
  • セクハラについての相談への対応または事後対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていたか
  • 相談窓口の担当者が、相談に対して適切に対応していたか
  • セクハラの相談の申出があった後、事実関係を迅速かつ正確に確認したか
  • セクハラを確認した後、就業規則等に基づき、行為者に対して懲戒その他適切な措置を講じたか
  • 被害者の労働条件上の不利益の回復等の適切な措置を講じたか
  • セクハラ発覚後、再発防止に向けた措置を講じたか
  • セクハラに関して相談したことまたは事実確認に協力したこと等を理由として、不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定めていたか

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執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。