解雇理由別:懲戒解雇されたらチェックすること一覧

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懲戒解雇は、従業員が会社の秩序を乱すような行為をしたとき、会社がする一方的な労働契約の打ち切りのことです。

しかし解雇という処分は非常に重いものであるため、①解雇の規定がきちんと定められていること、②従業員の行為が懲戒事由に該当すること、③解雇という処分が妥当であること、という厳しい条件があります。

この記事では懲戒事由となりうる行為を5つ挙げて、それぞれで懲戒処分が無効となるかどうかを解説していきます。

1.経歴詐称による懲戒解雇

経歴詐称とは、学歴や職歴、保有資格や職位などを偽ることを指します。

会社側には、広く採用の自由が認められています。
そのため、採用のために必要かつ合理的な範囲で申告を求めた事項については、採用希望者は真実を告知する信義則上の義務を負うことになります。

たとえば、経歴は採用の判断にとって重要な事項ですから、経歴詐称は信義則上の義務に違反していると考えられます。

経歴詐称のときに検討する要素

経歴詐称を理由として懲戒解雇された場合、まずは就業規則に懲戒処分に該当する行為として経歴詐称が挙げられているかを確認します。

そのうえで、さらに以下の点について検討します。

  1. 経歴詐称の事実が証拠として残っているのか
  2. 経歴詐称が採用方針との関係で重要な意味をもつかどうか
  3. 経歴詐称がなければ採用しなかったと言えるか
  4. 経歴詐称によって実際に業務に支障が出たと言えるか
  5. 当該経歴詐称によって効果的な人員配置、研修等が阻害されたと言えるか

例えば、ある特定の技能を持っている者を積極的に採用する方針では無かった、取引先から技能不足によるクレームが来ていない、業務が正常にこなされていたなどの事情があれば、懲戒解雇が無効となる可能性があります。

2.無断欠勤・遅刻による懲戒解雇

無断欠勤や遅刻・早退などの勤務態度の不良を、一般的には職務懈怠と呼びます。

そんな職務懈怠も程度によっては、懲戒解雇の理由になりうることがあります。

無断欠勤・遅刻のときに検討する要素

通常、無断欠勤や遅刻早退は、従業員側の債務不履行、つまり求められる勤務態度をとらなかったということに過ぎず、会社の秩序を乱したとまでは言えません。

ですから、これらを理由に懲戒処分が許されるのは、欠勤等が企業秩序を乱したとか、士気を低下させたといった、職務懈怠の程度がかなり重く、極めて悪質な場合に限られます。

よって、無断欠勤・遅刻・早退を理由とする懲戒解雇については以下の点を検討する必要があります。

  1. 無断欠勤、遅刻、早退の頻度や分量
  2. 注意、警告による勤務態度の改善はされなかったか
  3. かかる職務懈怠が会社の秩序を乱した、士気を低下させたなど極めて悪質であったといえるか

何度か欠勤が重なっただけで懲戒解雇できる、となると労働者は非常に不利な立場に立たされます。

よって、職務懈怠を理由とする懲戒解雇には、当該従業員の欠勤等によって職場が振り回され、業務に支障をきたし、職場の他の労働者が士気を失ったなどの状況を示す証拠が必要です。
具体的には上司や同僚等の陳述書などが無ければ、懲戒解雇が無効となる可能性があります。

3.業務命令違反による懲戒解雇

日々の業務における指揮命令や時間外労働命令から、配転命令、出向命令などの業務命令に違反することも、懲戒事由となる可能性があります。

業務命令違反のときに検討する要素

前提として、懲戒解雇の理由となった業務命令は適法なものでなければなりません。
例えば、残業代を節約するためタイムカードを切るな、というのも業務命令に当たりますが、このような労働基準法違反の命令に従わなかったからと懲戒解雇されることは通常許されません。

その上で、業務命令違反については以下のような要素を検討します。

  1. 労働者が実際に業務命令に違反した証拠があるかどうか
  2. その業務命令に労働契約上の根拠があるかどうか
  3. 業務命令違反につき、やむを得ない理由や正当化する事情がないか
  4. 当該業務命令違反により、業務や企業秩序に影響が出たかどうか
  5. 業務命令違反に対しての注意・軽い懲戒処分を行ったが改善しなかった事実があるか

通常、命令業務に従わなかったというだけで懲戒処分にあたるほどの悪質性・重大性が認められることはほとんどありません。

よって、解雇処分に至る前に戒告や減給など軽い懲戒処分があったか、それを行っても業務が改善されなかったので懲戒処分以外の選択肢がなかった、と言えるような場合にのみ、懲戒解雇が認められる可能性があります。

また、業務命令に従わなかったことについて労働者側にやむを得ない事情や酌むべき事情がある場合には、懲戒解雇が懲戒権の濫用として無効とされる場合もあります。

4.社内の犯罪・不正行為による懲戒解雇

横領や背任、窃盗、暴行、顧客情報の漏洩などの社内での犯罪行為による懲戒解雇は、比較的無効が認められにくい理由です。

一方で、セクハラやパワハラ、取引先との不正な関係、部下の不正行為の見逃しなどの犯罪行為には至らない程度の不正行為による懲戒解雇はよく争いとなります。

実際、裁判となったようなセクハラの事案であっても、懲戒解雇は不相当に重すぎるとして解雇無効としたものも少なくありません。

社内の犯罪・不正行為のときに検討する要素

まずは実際に犯罪行為、不正行為があったのかどうかの認定が正しくなされていることが前提となります。

その上で、犯罪行為・不正行為については以下のような要素を検討します。

  1. これまで類似の犯罪行為、不正行為に対して厳しく対応してきたか、または厳しく対応する姿勢を示してきたかどうか
  2. 当該犯罪行為、不正行為はどの程度悪質であったか
  3. 当該犯罪行為、不正行為により、業務や企業秩序に影響が出たと言えるか
  4. (過去にも同様の行為があった場合)懲戒処分を行ったが改善しなかったかどうか

例えば、会社が普段からコンプライアンス研修を開催したり、違反の報告体制を整えたりなどしていなかったにもかかわらず、不正行為を急に指摘されて懲戒解雇されたような場合、そのような処分は重すぎると判断されるかもしれません。

5.私生活上の非行による懲戒解雇

勤務時間外に飲酒運転で逮捕・起訴され有罪判決を受けたというような私生活上の非行が、懲戒事由とされることがあります。

本来私生活上の非行は、直接労働契約とは関係ない事情ですが、企業秩序に直接関係する行為や、企業の社会的評価を毀損するおそれのある非行行為は、懲戒処分の対象になる可能性があると考えられます。

私生活上の非行のときに検討する要素

実際に様々な私生活上の行為を理由として懲戒処分が行われた場合、以下の点を検討する必要があります。

  • 非行により逮捕勾留があったかなど、刑事的責任の程度
  • 労働者の行為と職務内容に関連性があるかどうか
  • マスコミ報道、取引先からの問い合わせ等の状況
  • 労働者の行為が企業の非行防止の取り組みに反するかどうか
  • 当該行為により、業務や企業秩序に影響が出たかどうか

例えば、運転手が飲酒運転で事故を起こした場合や、教員が児童買春を行った場合など、職務に関連する行為の場合には、懲戒解雇が有効となる可能性が高くなります。

さらに、当該行為が新聞やテレビ等で報道されたという事情があると、会社の社会的信用を低下させたことが認定されやすく、懲戒解雇が有効であると判断されやすくなってしまう傾向があります。

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