その行為も違法!育児介護休業法上、違法となる行為について

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

・育児介護休業法の重要な役割としては「不利益取扱いの禁止」、「ハラスメント防止体制整備義務」が挙げられる
・マタハラやセクハラは様々な態様が考えられる
・育児介護休業法の禁ずるハラスメントがあった場合、当事者だけでなく会社にも金銭を請求できることがある

労働者として労働をしていると様々な困難にあうこともあります。その中でも育児や介護については長年会社に勤めていると特に関わる機会も多いものです。
育児や介護はもっぱら家庭の問題ではありますが、労働に支障をきたすことも多い以上、会社に全く関係がないというわけでもありません。
そんな中、「育休」という言葉にも代表される通り、私生活と労働の調和を目指した動きが活発になっています。
本記事においては、「育休」などに関連して、育児介護休業法について、最近の改正を踏まえながら解説をしていきます。

育児介護休業法とは

労働法関連に明るい方の中でも、育児介護休業法についてはあまり知らないという方も少なくないと思います。
確かに労働基準法や労働契約法に比べて育児介護休業法は目立たないかもしれませんが、特定の分野においては労働基準法や労働契約法よりも重要になってきます。
ここでは育児介護休業法の目的とその主な役割について概説していきます。

育児介護休業法とは

育児介護休業法は、正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」とするもので、その名の通り育児休業や介護休業等にかかわる労働者の権利を保障するものです。
その目的は少し前に述べた通り、「職業生活と家庭生活との両立」(育児介護休業法1条)とされています。

不利益取扱いの禁止

育児介護休業法の重要な役割の一つとして、事業主に対して育児休業や介護休業、子の看護休暇、介護休暇等について、その取得や申出に対する不利益取扱いを禁じていることにあります。
(育児介護休業法10条、16条、16条の4、16条の7、16条の10、18条の2、20条の2、23条の2)

マタニティハラスメント等について体制整備義務

育児介護休業法25条は以下のように定めています。

第二十五条 事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。


少しわかりづらいですが、同条はマタニティハラスメント等のハラスメントに関して、会社に相談窓口の設置のように一定の措置を命じたものです。
この明文規定によって、労働者に何らかのハラスメントがあって、使用者が何の措置も講じない場合に労働者からハラスメントの加害者だけでなく、労働者から使用者に対して損害賠償請求(民法415条1項など)がしやすくなったといえます。

不利益取扱いの禁止の対象

育児介護休業法の重要な役割の一つとして不利益取扱いの禁止が挙げられることは前述しました。それでは、具体的にどのような行為が育児介護休業法が禁ずる不利益取扱いにあたるのでしょうか。

不利益取扱い禁止となる休業等

不利益取扱いをすることが禁じられる休業等は以下のものが挙げられます。

  • 育児休業(育児のために原則として子が1歳になるまで取得できる休業)
  • 介護休業(介護のために対象家族 1 人につき通算 93 日間取得できる休業)
  • 子の看護休暇(子の看護のために年間 5 日間(子が2人以上の場合 10 日間)取得できる休暇)
  • 介護休暇(介護のために年間 5 日間(対象家族が2人以上の場合 10 日間)取得できる休暇)
  • 所定外労働の制限(育児又は介護のための残業免除)
  • 時間外労働の制限(育児又は介護のため時間外労働を制限(1 か月 24 時間、1 年 150 時間以内))
  • 深夜業の制限(育児又は介護のため深夜業を制限)
  • 所定労働時間の短縮措置(育児又は介護のため所定労働時間を短縮する制度)
  • 始業時刻変更等の措置(育児又は介護のために始業時刻を変更する等の制度)

不利益取扱いの例

さらに厚生労働省によると、不利益取扱いとしては以下のようなものが挙げられるとしています。

1 解雇すること。

2 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。

3 あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。

4 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規雇用社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。

5 就業環境を害すること。

6 自宅待機を命ずること。

7 労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、又は所定労働時間の短縮措置等を適用すること。

8 降格させること。

9 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。

10 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと。

11 不利益な配置の変更を行うこと。

12  派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒む こと。


これらの不利益取扱いは、当然マタニティハラスメントやセクシャルハラスメントなどハラスメントにもなりえます。
育児休業を申請した男性Aさんが後日出勤した時に、上司がをAさんに「男なのに育児休業をとろうとするとは思わなかった。君には期待していたコースから外れてもらう」と言い、彼を配置転換をした場合には、育児介護休業法10条に正面から反することになります。
このような不利益処分は育児介護休業法に反するものであるため無効になったり、損害賠償請求(民法709条、415条1項など)の対象となったりします。

育児介護休業法のハラスメント防止措置について

育児介護休業法は、上のように上司等が直接マタハラやセクハラをすることの禁止にとどまらず、そのようなマタハラやセクハラ等により労働者の職場環境が害されることがないように会社に対して何らかの対策を講ずることを義務付けています。

育児介護休業法が想定するハラスメント

育児介護休業法25条は文言だけ見ると少し難しいように感じますが同条は主にハラスメントに関する規定です。
厚生労働省によると、同法が想定するハラスメントとしては「制度等の理由による嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」に分かれるとしています。

制度等の理由による嫌がらせ型

これは前述した、不利益取扱いともかなり近いものです。
すなわち、育児休業や介護休業などの育児介護休業法上の制度を利用・または利用しようとしたことに基づくハラスメントを指します。
先のAさんの例のように育児休業をとろうとしたことに対して配置転換を言い渡されたというような場合でなくとも、単に育児休業をとろうとしたら「男のくせに育休などとらんでいい」と育児休業をとらせてもらえない場合もハラスメントにあたります。

状態への嫌がらせ型

この型は典型的なマタハラに代表されるように、女性が妊娠していることや、出産したこと等に関する言動により就業環境が害されるものをいいます
例えば女性が妊娠したことを上司に伝えたところ、「妊娠したなら退職だね。特に業務もできないだろうから」と言うように労働者の意向を無視して不利益な結果を押し付けるものはハラスメントにあたる可能性が高いです。

育児介護休業法に反するハラスメントを受けた際、できる民法上の請求

育児介護休業法に反するようなハラスメントを受けた際には、ハラスメントの当事者に対してハラスメントを行ったことを原因として損害賠償請求(民法709条など)を行うことが考えられます。
さらに、そのハラスメントが法的効果を有するもの(解雇や配置転換など)である場合には当該処分等を無効にすることも考えられます。

また、他の労働者などにハラスメントを受けた場合、ハラスメントを使用者が行っていなくても、育児介護休業法25条等防止措置違反として、民法415条1項の債務不履行責任に基づいて会社に損害賠償請求することも考えられます。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。