労災事故による慰謝料は会社に請求できる?慰謝料の種類や要件を解説

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

・労災保険では被災者に対して慰謝料は支払われない
・労災保険が適用されるからといって必ずしも慰謝料が認められるわけではない
・安全配慮義務違反・使用者責任の過失を証明するのは被災労働者

労災事故が起きた際は、労災保険が適用されることが一般的です。
しかし、労災保険は治療費や入院費、休業補償金は支給されるものの、精神的な苦痛による慰謝料までは支給されません。

ただし、慰謝料は要件を満たしていれば、会社に請求することが可能です。

今回の記事では、労災事故における慰謝料の種類や相場、請求可能となる要件について解説します。

労災事故における慰謝料の種類

労災事故において会社に請求できる慰謝料は3種類あります。
それぞれ確認しましょう。

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、入院や治療のための通院での精神的苦痛に対して支払われる慰謝料のことです。
原則として、入院期間と通院期間をもとに計算されます。

ただし、通院に関しての慰謝料は、「症状固定」までの期間のみが対象です。
症状固定とは、一通りの治療を受けてそれ以上は治療を継続しても症状の改善が見込めない状態のことをいいます。

後遺傷害慰謝料

症状固定になった時点で、残った障害については「後遺障害慰謝料」を請求をすることが可能です。

後遺障害慰謝料を請求するには、労災保険において後遺障害の認定を受ける必要があります。
労災では、後遺障害は1級から14級の等級にわけて認定しています。

どのような後遺障害が何級にあたるかは厚生労働省がこちらに記載しています。

後遺障害の慰謝料の相場は、弁護士基準(裁判基準)では以下の表の通りです。

後遺障害等級

後遺障害慰謝料

後遺障害等級

後遺障害慰謝料

第1級

2800万円

第8級

830万円

第2級

2400万円

第9級

670万円

第3級

2000万円

第10級

530万円

第4級

1700万円

第11級

400万円

第5級

1440万円

第12級

280万円

第6級

1220万円

第13級

180万円

第7級

1030万円

第14級

110万円

必ずしもこの金額が慰謝料として支払われるとは限りませんが、おおよその目安として参考にされると良いでしょう。

死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、労働者が労災事故により亡くなった際に、亡くなった労働者の遺族に対して支払われる慰謝料のことをいいます。

死亡慰謝料の金額は、弁護士基準(裁判基準)では以下の通りです。

  • 被災労働者が一家の支柱の場合:2800万円
  • 被災労働者が母親、配偶者の場合:2500万円
  • 被災労働者が独身の男女の場合:2000~2500万円

  • 上記の通り、一家の家計を支える立場であるほど、死亡慰謝料は高くなる傾向があります。

    どのような場合に労災事故の慰謝料を会社に請求できる?

    労災事故の際に、請求可能な3種類の慰謝料について確認しました。
    では、労災事故が起きた際にどのような場合でも、被災した労働者は会社に慰謝料を請求することができるのかというと、実はそうではありません。
    まず、労災保険が適用されるには、労働者が会社からの指示でその業務を行い(業務遂行性)、その業務を行っていたことが原因で起こった事故(業務起因性)であると認められる必要があります。

    しかし、業務遂行性と業務起因性が認められれば会社に慰謝料を請求できるわけではありません。
    会社に労災事故による慰謝料を請求するには、以下の3つの要件のどれかに当てはまる必要があります。

    • 会社に安全配慮義務違反がある
    • 会社に使用者責任がある
    • 会社に工作物責任がある

    • それぞれ、詳しく見ていきましょう。

      会社に安全配慮義務違反があるケース

      会社には、労災事故を防ぐために安全装置の設置や指導を行い、労働者の安全への配慮をする義務があります(労働契約法第5条)。

      日ごろから施設の設備や備品の点検を怠っている職場環境では、安全配慮義務違反となる可能性が高いでしょう。
      また、長時間の残業を強いられて、精神的また肉体的にも疲れが溜まって注意力が散漫となり起きた労災事故も安全配慮義務違反となる可能性が高いと言えます。

      会社に使用者責任があるケース

      他の労働者が原因で労災事故が起きた場合、会社は労働者が被った損害を賠償する責任があります。
      これを使用者責任と言います(民法第715条)。

      たとえば、リフトカーで倉庫内のものを移動させていた労働者が、不注意によって他の労働者に衝突してケガをさせてしまった場合は、ケガをしてしまった労働者は会社へ使用者責任を問うことが可能です。

      このような他の労働者の過失によって起きた労災事故でケガや死亡した際は、会社へ使用者責任に基づく慰謝料請求ができます。

      会社に工作物責任があるケース

      会社内のエレベーターなどの施設や工事現場の足場の倒壊、土砂の崩落などによる労災事故でケガや死亡した場合も会社に対して慰謝料の請求が可能です。

      民法第717条により、会社は工作物責任を負うからです。

      工作物責任とは、土地に接着して人工的に工作物を設置又は保存した際に、瑕疵があってそのせいで他者がケガなどをしてしまった場合に起こる所有者の責任のことをいいます。

      瑕疵とは、簡単に言うと工作物が壊れてしまっているなどして、本来の安全性を欠いた状況のことです。

      このような本来の安全性を欠いた工作物が原因で起きた労災事故は、所有者である会社に対して慰謝料の請求が可能となります。

      労災事故の慰謝料請求を弁護士に相談するメリット

      労災事故で会社に慰謝料を請求できるのは、会社が安全配慮義務違反であること、使用者責任があること、工作物責任があることのうちどれか1つを満たす場合であることがわかりました。

      では、これらの要件のうち1つでも満たしている場合は、被災者本人がご自身で慰謝料を請求することは可能なのでしょうか。また、弁護士に相談・依頼するとしたらどのようなメリットがあるのか確認しましょう

      慰謝料請求の要件は労働者が証明する必要がある

      工作物責任は無過失責任ですが、安全配慮義務違反や使用者責任は過失責任です。
      そして、会社に過失があったことの証明は、被災した労働者がしなければなりません。

      そのため、会社に慰謝料を請求するには、安全配慮義務違反の有無を内容に応じて立証する必要があります。

      使用者責任においても、事故を起こした労働者が負うべき注意義務の内容や注意義務違反の具体的な内容を立証していくことになります。

      これらを被災された労働者の方が一人で証明するのは、不可能ではありませんが非常に困難であると言えるでしょう。

      弁護士に相談・依頼することで、弁護士がご自身の代わりに会社や他の労働者の過失を立証するのは大きなメリットだと考えられます。

      適正な慰謝料額を請求できる

      交渉なしに会社が適切な慰謝料額を支払うことは少ないと言えるでしょう。
      会社はできる限り、被災した労働者に対する慰謝料は少なくしたいと考えるのが通常です。

      後遺障害が残った際や死亡した際のおおよその慰謝料額は上記しましたが、実際は労災事故の悪質性やその後の会社側の対応などで大きく慰謝料額が変わることも多いです。

      そのため、労災事故における慰謝料の金額はケースバイケースで個別に考える必要があります。
      労働トラブルを専門にした経験豊富な弁護士は、会社と交渉し、また裁判になっても適切な慰謝料額の請求を行うことが可能です。
      この点も弁護士に相談・依頼するメリットでしょう。

      最初の相談は無料のところが多い

      直接のメリットではないかもしれませんが、弁護士の法律相談は初回は無料で行っているところも多いです。
      そこで、初回相談では会社に慰謝料を請求できそうかを最初に相談して、今後の見通しを立てるのが良いと思います。

      また、完全成功報酬型を採用している弁護士事務所もあります。
      そのような弁護士事務所は、着手金を一切とらないで和解や裁判で勝訴して得られた慰謝料の一部を成功報酬として得るため、慰謝料の請求が認められなかった場合、お金はかかりません。

      ただし、通常の完全成功報酬型ではない弁護士事務所に比べて、解決したときの成果報酬は高めになっている場合が多いので注意が必要です。

      監修者


      みんなのユニオン

      執行委員岡野武志

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      みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。