有給休暇を強制的にとらされることは違法か?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

・有給休暇の取得を強制されることは違法になる
・休業の場合、有給休暇の取得ではなく休業手当が支払われるべき
・年5日の有給休暇義務化でも、会社側が強制的に有給休暇取得日を決められない

今年に入ってから、休業や事業縮小により突然会社が休みになったという労働者の方も少なくないでしょう。
「仕事がないから、明日は有給を使って」というように、会社側から有給休暇を強制的に取得させられることは法的に問題ないのでしょうか。
そこで今回は、会社が強制的に有給を取得させることの違法性について説明します。

有給休暇の取得を強制されることは違法か?

「仕事がないことを理由に会社から有給を使うように言われた」
このように会社側から、一方的に有給休暇を取得するよう強制されることは違法なのでしょうか。
以下で解説していきます。

すぐにわかる「有給休暇」とは

有給休暇(年次有給休暇)とは、賃金が支払われる休みのこと。
労働基準法39条に規定されており、労働者に与えられた権利です。
有給休暇は労働者が休暇を取ることでリフレッシュし、仕事と生活のバランスをはかることを目的としています。
また、有給休暇は正社員に限定されたのものではなく、以下の条件を満たせばパート・アルバイトでも取得できます。

・半年以上継続して勤務
・全労働日の8割以上出勤

この2点を満たせば有給休暇が付与。
加えて、所定の労働時間が週30時間以上または所定労働日数が週5日以上であれば、10日以上の有給休暇が付与されます。

勤務年数

半年

1年半

2年半

3年半

4年半

5年半

6年半

付与日数

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

勤務年数により上記のように有給休暇が付与されます。
また、有給休暇は付与日から2年以内であれば繰り越しされ、繰り越しされる日数は最大で40日です。
2年を超えた有給休暇は時効により消滅します。

有給休暇は労働者が希望するときに取得できる

労働者が有給休暇を取得する時期について、労働基準法39条4項は以下のように規定しています。

「使用者は、有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。」

このことから、労働者には希望する日に有給休暇を取得できる権利が与えられています。
この権利のことを「時季指定権」といいます。
労働者は「時季指定権」を持つため、会社側が有給休暇の取得時期を強制的に決めることはできません。
ただし、労働基準法39条4項では、

「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」

としています(時季変更権)。
そのため、会社側は繁忙期など労働者に休まれてしまうと困る日に関しては、有給休暇の取得日を変更の依頼が可能です。
ただし、あくまでも有給休暇の取得時期を決めるのは労働者です。
最初から、特定の日に有給休暇を取得するように強制することは違法になります。

休業や事業縮小の場合は休業手当が支払われるべき

休業や事業縮小の場合、会社側は有給休暇を取得させるのではなく、休業手当を支給しなければいけません。
労働基準法26条は以下のように定めています。

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」
一般的な休業や事業縮小は、「使用者の責に帰すべき事由」にあたります。
そのため、会社側が仕事がないことを理由に労働者を休ませる場合、有給休暇を取得させるのではなく、休業手当(平均賃金の60%以上)を支給しなければいけません。

有給休暇の強制取得?年5日の有給休暇義務化とは

2019年4月から、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に年5日の有給休暇を取得させることが義務化(「働き方改革関連法案」)となりました。
この義務化は有給休暇の強制取得にならないのか、以下で見ていきましょう。

年5日の有給休暇取得の義務化について

この義務化は2019年4月より施行され、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に有給休暇を5日以上取得させなければならないというものです。
また、会社側がこの義務を果たすことができなかった場合、30万円以下の罰金を払わなければなりません。
30万円以下の罰金は、労働者1人あたり30万円です。
そのため、労働者10人が年に5日の有給休暇を取得できなかった場合、300万円になります。
ただし、年10日以上の有給休暇が付与される労働者でも対象外になる場合があります。

・年次有給休暇を5日以上取得済みの労働者
・労使協定で取得時季を定めて5日以上付与(計画的付与)している

参考資料:年次有給休暇の時季指定義務(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000350327.pdf

すでに有給休暇を5日以上取得している労働者は対象外となり、会社側は時季指定する必要はなく、また指定することもできません。

年5日の有給休暇義務化は強制取得ではない

有給休暇の基本的ルールとして、労働者には「時季指定権」が与えられ、一方的に「いついつに休みます」と申し出るだけで有給休暇が取得できます。
しかし、年5日の有給休暇取得が義務化されてから、会社側が「いついつに休んでください」と労働者に有給休暇の取得を指定してくる可能性があります(時季指定義務)。
ただし、これは会社側が勝手に時期を決めるのではなく、有給休暇を取得できていない労働者に「いつ休みたいのか」というヒアリングがなされることが必要です。

「使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努めなければなりません。」

参考資料:年次有給休暇の時季指定義務(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000350327.pdf

そのため、年5日の有給休暇義務化は会社側で労働者の有給休暇の日を勝手に決め、強制取得させる義務ではありません。
あくまで、会社が有給休暇を消化できていない労働者に有給休暇を取得させるものです。

有給休暇義務化でも、休業を理由にできない

年5日の有給休暇義務化は、休業など事業縮小したときに有給休暇で埋め合わせることを想定したものではありません。
ということで、会社側に時季指定義務があったとしても、仕事がないことを理由に急に有給休暇をとらせることはできません。
先述したように、有給休暇の日を会社側が一方的に決めるのではなく、事前に面談やメール等を利用して労働者の意見を聞く必要があります。
そのうえで、会社側が有給休暇の取得日を指定します。
「仕事量が少ないから、明日は有給使って」などという突然の指示は、有給休暇の取得を強制しているといえます。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。