【労働者向け】有給休暇取得の義務化が開始!義務化の概要を総まとめ

更新日:

監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

20190122110542 e9644a56b0a409ebbdc09f34cf16a4a976ec4642 1

この記事でわかること

・有給取得の義務化が2019年から開始された
・有給取得の法令を違反する企業には罰則が科される場合も
・法令を違反してまで有給をとらせないブラック企業には要注意

働く側が「有給(年次有給休暇)」を使うことは、法律によって定められた当然の権利です。有給を上手く使用することで、働く側は適度にリフレッシュをしながら仕事に専念できるものです。

ただし、いざ有給を取得(消化)しようとしても、職場の周りの目や上司からの圧力を気にしてしまい、なかなか有給を有効活用できずにいる方も多いと思われます。

その結果「有給を使わずに権利が消滅してしまった」「休みたくもない日に有給を使ってしまい無駄になった」このような経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

しかし、2019年に労働基準法が改正されたことにより、一定の要件を満たす従業員は、会社からの指示で必ず有給を取得しなければならなくなりました。

今回は「有給休暇取得の義務化」について、その概要と対象者、義務化によって会社と働く側の間で発生する可能性のあるトラブルについて解説します。

誰でもわかる「有給取得の義務化」とは?

労働基準法の改正により、2019年4月1日より使用者(企業側)は、10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して「毎年5日間」の時季を指定した上で有給休暇を取得させることが義務づけられました。

ここでは「有給休暇取得の義務化」の概要を項目に分けてご説明します。

有給取得義務化の目的

「有給取得の義務化」は、企業内における有給の取得率を改善し、労働環境を是正することを目的に制定された企業に対する取り組みです。

この取り組みの背景には、日本における有給取得率の問題が存在します。昔から日本における有給取得率は、他の先進国と比較して非常に低いものでした。

その原因は、社内の雰囲気や上司・同僚からの圧力によって、「有給を付与されても消化できない」という環境が常態化してしまっていたことが原因とされています。

しかし、2019年の義務化によって、これまで会社から付与された有給を取得できずにいた方でも、会社から強制的に有給の取得を促される形で、有給を使うことが可能になりました。

したがって、勤務先が有給の義務化を理解し、法令に則った会社運営を行っている企業であれば「1日も有給を取得できなかった」ということは無くなります。

有給取得義務化の法的根拠

なお、有給取得の義務化は「労働基準法」という法律が根拠になっています。そのため、社会全体の自発的な緩い取り組みでは無い点が重要です。

有給の義務化に関する法律は以下のとおりです。少し長くなりますが、目を通しておくと理解も深まるためオススメします。

【労働基準法第39条7項】

”使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。


ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。”

有給取得義務化の対象者

有給取得の義務化は、社会で働くすべての方々を対象とはしていません。

具体的には「年間10日以上の有給が付与される労働者」が有給取得義務化の対象者になります。

年間で、10日以上の有給が発生・付与されるための要件は以下のとおりです。該当しない場合には、これまで通り自分で有給の取得を申し出る必要があります。

雇用形態

要件

正社員

6ヶ月以上勤務で全体の8割以上出勤

契約社員

フルタイムで6ヶ月以上勤務

アルバイト・パート

    週30時間以上勤務で6ヶ月以上勤務
    週30時間未満で週4日出勤かつ3年半以上勤務
    週30時間未満で週3日勤務かつ5年半以上勤務

法令を違反した企業に対する罰則

「有給取得の義務化」には、法令を違反した使用者に対する罰則も設けられています。

取得させる義務のある労働者に年5日の有給休暇を取得させなかった場合には、30万円以下の罰金に処せられます(労基法第120条)。

法令に違反した場合に科される罰金は、有給を取得できていない労働者1人あたりの金額になります。

例えば、有給が取得できていない社員が100人いた場合、3000万円以下の罰金が科されることになるという、大変大きなペナルティを会社側が背負うことになります。

有給を会社から指示されるしくみ

有給取得の義務化にともない、付与された有給を働く側がまったく消化していないと、会社側から5日の有給の消化日を指定されることになりました。

具体的な流れを確認しましょう。

有給が付与される

当然ですが、まずは有給が会社から付与されます。この段階では、会社側から有給の消化日を指定されることはありません。

また、消化日の指定は、有給を使う兆しの無い対象者に対して行われるものです。

したがって、有給が付与されてから、会社側から声がかかるまでの間に有給をすでに5日間消化している場合は、有給を新たに消化させる義務はありません。

一定期間後に会社側から声がかかる

有給が会社から付与された後、消化する兆しの無い社員に対して、担当者からメールや面談を通してヒアリングが行われます。

ヒアリングでは「いつ頃休みたいか」といった希望日を担当者と話し合います。

使用者は原則、労働者の希望日に従って有給を取得させる必要があります。「お前はここで休め」といった会社側からの一方的な指定はできません。

働く側の意思を尊重した上で消化日が決定

ヒアリングの後、「働く側の意思」を充分に尊重した上で、消化日が決定します。

対象者は決定した指定日に従い、有給の消化を行います。

有給の義務化で会社と労働者の間で発生するトラブル

有給取得の義務化は、先述のとおり会社に対する厳しい罰則が設けられている取り組みです。

しかしその一方で、法の抜け穴を探し制度を悪用するブラック企業が一定数存在します。

有給の義務化によってブラック企業と労働者の間で発生するトラブルをご紹介します。

時季指定を除いた5日間を消化させてくれない

ひとつめは、「時季指定を除いた5日間を消化させてくれない」というトラブルです。

ご説明のとおり、企業は年間で5日間の有給を、対象の社員に消化させる義務があります。そして、万が一その義務に違反した場合には、厳しい罰則が科せられる可能性があります。

しかし逆の意味で捉えると、罰則の恐れがある最低5日間さえ消化させてしまえば、それ以上は有給を習得させる必要は無いと捉える、ブラック経営者も残念ながら存在するようです。

このようなブラック経営者とのトラブルに巻き込まれてしまった場合には、専門機関や弁護士への相談が重要です。

休日と有給がすり替えられた

2つ目は「休日と有給がすり替えられた」というケースです。

会社が独自に設けている「夏季休暇」や「正月休み」などは、特別休暇と呼ばれます。

このような特別休暇であった日を廃止して営業日に変更し、その分を有給休暇へとあてがう悪質な行為が行われているという報告が存在します。

特別休暇と有給休暇を入れ替えてしまえば、働く側からすれば年間の休日は増えないわけですから、損をすることになります。

このような悪質な手法を用いる企業に勤務されている方は、できるだけ早めに相談機関へのお問い合わせをお勧めします。

この記事では2019年より施行された有給休暇の義務化について労働者視点で解説しました。

有給の取得は労働者が有する当然の権利です。しかし解説の通り、未だに理解が進まないブラック企業が跡を絶ちません。

もし、そのような有給の義務化に関するトラブルに巻き込まれてしまった場合には、しかるべき専門機関や労働問題に詳しい弁護士に相談しましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

詳しくはこちら

みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。