派遣社員を守る法律とは?派遣切りの具体的事例と対処法

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

・派遣切りとは、派遣先や派遣会社の都合で派遣社員の労働契約が打ち切られること。派遣切りには、「雇い止め」と「契約解除(解雇)」の2種類がある。
・派遣社員を守るため、派遣切りを制約する法律が設けられている。
・派遣切り事例を確認し、いざというときに適切な対応ができるようにしよう。

新型コロナウイルス感染症による企業の休業や業績不振が、非正規社員の雇用を直撃しています。真っ先にクビを切られるのが派遣社員で、派遣切りが急増中です。

今回の記事では、派遣切りの具体的事例と対処法を中心に解説します。いざというとき慌てないように、基本的な事項は覚えておきましょう。

派遣社員と派遣切り

まず最初に派遣社員の契約形態や派遣会社・派遣先との関係、派遣切りの定義について確認します。

派遣社員の契約形態

派遣社員が労働契約を結ぶのは、派遣元である派遣会社です。派遣先で勤務し派遣先の指示に従い労働力を提供しますが、派遣先とは契約関係にありません。

派遣先と契約するのは派遣会社で、両者の間で派遣契約が締結されます。

(派遣社員と派遣元・派遣先の関係)

引用:厚生労働省「クローズアップ知っておきたい改正労働者派遣法のポイント」

つまり、派遣社員が労働条件の改善や雇用の継続について交渉する相手は派遣会社になるのです。派遣会社と派遣先が締結する派遣契約の影響を受けるのは勿論ですが、派遣社員は派遣契約に対して口を出すことはできません。

派遣切りとは

派遣切りとは、派遣先や派遣会社の都合で派遣社員の労働契約が打ち切られることです。派遣切りは次の流れで発生します。

  1. 派遣先で人員が不要になったなど主に派遣先の都合で、派遣契約(派遣先と派遣会社の契約)が打ち切られる。
  2. 派遣先での仕事がなくなり次の仕事先が見つからないとき労働契約(派遣社員と派遣会社の契約)も終了する。
  3. 結果的に、派遣社員は失業する。

  4. また、派遣切りには次の2つのパターンがあります。

    • 雇い止め:契約満了時に会社が更新せずに契約を終了させること。
    • 契約解除(解雇):契約期間中に会社が一方的に契約を終了させること。

    • 労働契約終了のタイミングが契約満了時なら「雇い止め」、契約期間中なら「解雇」です。

      派遣社員の雇用を守るための法律

      会社都合で好き勝手に派遣切りされると、派遣社員の生活は不安定になります。派遣社員の雇用を守るため雇い止めや契約解除について法律上の制約が設けられています。

      契約期間中の解雇の禁止(労働契約法第17条)

      有期労働契約の契約期間中に契約解除を行うことはできません。ただし、職務怠慢など「やむを得ない事由がある」と判断されれば、解雇されるケースもあります。

      また、派遣社員も有期契約労働者に含まれますが、前述の通り、派遣先と派遣会社が同意すれば派遣契約は消滅します。派遣社員は派遣先ではなく派遣会社に雇用の継続を求めることになります。

      有期労働契約の更新等に関する定め(労働契約法第19条)

      有期労働契約が下記に該当する場合、会社は更新を拒否できません。

      • 過去に反復して更新されたことがある有期労働契約を更新しないことにより終了させることが、無期契約労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められること。
  • 労働者において有期労働契約の満了時に契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められること。

  • 具体的には下記ケースが該当します。

    • 無期契約労働者を解雇することと社会通念上同視できるケース:
    • 数年にわたって派遣社員が希望すれば契約は更新されてきた、更新時期に契約を交わすことなく継続して仕事を続けてきた、など

      • 契約が更新されると期待することについて合理的な理由があるケース:
      • 会社側から「基本的に契約は更新する」と言われた、更新後の期間を前提とした業務についての言動があった、など

        契約解除の予告(厚生労働省・派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針)

        やむを得ない事由により派遣社員を解雇する場合、派遣会社は、解雇予告、または解雇予告手当を支払わなければなりません。

        派遣社員にとって契約解除されることに変わりはありませんが、最低1か月間の猶予は与えられます。

        ただし、上記は「やむを得ない事由」がある場合に限るので、原則、派遣会社は契約解除することはできません。

        派遣切りの具体的事例と対処法

        それでは具体的な派遣切りの事例と対処法について解説します。

        具体例1:契約解除の事例

        Aさん(派遣社員)はB社(派遣会社)に派遣登録し、複数の飲食店を経営するC社(派遣先)の紹介を受け、3か月の契約でウエイトレスとして仕事を始めた。

        4回目の更新をして2年目の勤務をスタートした直後、新型コロナウイルス感染症の影響でC社の経営する飲食店が休業となり店主から「休業の為、明日からは来なくていいよ」と言われた。


        B社に新しい勤務先の紹介を依頼したが見つからず、そのまま労働契約は解除された。半年後に別の派遣会社で仕事を見つけたが、B社からもC社からも何の補償も得られなかった。

        Aさんの立場なら、自分に非がないにも関わらずいきなり失業することとなり納得できないでしょう。何らかの補償を受けたいところですが、今回のケースでは補償の請求先は派遣会社のB社になります。

        まず、C社での仕事がなくなったとき、Aさんと結んだ労働契約に基づきB社には、契約期間の残りについて雇用義務があります。B社はほかの派遣先を探してAさんを雇用しなければならなかったのです。

        B社がAさんの勤務先探しを十分に行うことなく労働契約を解除した場合、Aさんは残りの契約期間の報酬について損害賠償請求できる可能性があります。

        また、B社が懸命に勤務先探しをしたが見つからずに契約解除し「やむを得ない事由がある」と判断された場合でも、B社は解雇予告を行った上で1か月後に解雇するか、解雇予告手当を支払う義務があります。

        どちらの場合もB社に直接請求して拒否された場合、労働基準監督署に申告するか弁護士に相談するなど、専門家の力を借りて対応するのがいいでしょう。

        具体例2:雇い止めの事例

        Dさんは派遣社員としてE社(派遣会社)と契約し、電機メーカーのF社(派遣先)で事務職員として勤務し3か月ごとに更新を7回繰り返した。


        F社では責任ある業務を任されるように意欲的に業務に取り組んだが、7回目の契約満了時に次回更新はないことを告げられ、派遣会社のE社との契約は打ち切られた。


        これまでは、F社で長期的に勤務することを前提に契約更新手続きは形式的で、契約満了後しばらくしてから更新手続きすることもあった。そのため、今回も当然更新されるものと思っていて突然の雇い止め通告に戸惑うばかりで会社に抗議することもできなかった。

        想定外で雇い止め通告を受けた場合、どう対応していいかわからず会社の言いなりになってしまうこともあります。

        しかし、前述の「有期労働契約の更新等に関する定め(労働契約法第19条)」に該当するケースでは、会社は更新を拒否できないことを覚えておきましょう。

        今回のケースでは、労働契約は形式的に繰り返し更新されていたので「無期契約労働者を解雇することと社会通念上同視できるケース」に該当する可能性があります。

        該当すると判断されれば、正社員を解雇するのと同様の正当な理由がない限り、雇い止めを無効とできる可能性があります。今回のケースでも請求先は派遣先ではなく派遣会社となります。

        監修者


        みんなのユニオン

        執行委員岡野武志

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        みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。