退職勧奨時の優遇措置とは?提示される条件と注意事項を解説!

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

・退職勧奨とは従業員が自発的に辞職するよう会社が従業員に働きかけること
・優遇措置とは従業員が退職勧奨を受け入れやすいように提示される有利な条件
・退職勧奨時の優遇措置は、会社が任意で設けるため会社ごとに大きく異なる
・退職前に提示された条件を慎重に検討して、退職するかどうか決めよう

会社が退職勧奨を行うとき、従業員に勧奨を受け入れてもらうために有利な条件を提示するケースがあります。また、従業員全員を対象とした希望退職などが実施されるケースもあります。

今回の記事では、退職勧奨時に会社が提示する有利な条件(優遇措置)について解説します。退職勧奨による退職を検討するときの注意事項も紹介しますので参考にしてください。

退職勧奨とは

まず最初に、退職勧奨の意味と会社が退職勧奨を行う理由などについて解説します。

退職勧奨とは

退職勧奨は、従業員が自発的(従業員の意思で)に辞職してくれるよう、会社が従業員に働きかけることです。

従業員の自由な意思によるものなので、実際に退職するかどうかは従業員が決められます。退職したくなければ、「退職する気はありません」と拒否すればいいのです。

会社が退職勧奨を行う理由

会社が退職勧奨を行う主な理由は次の2つです。

  • 従業員の問題:業績不振、勤務状況不良、コミュニケーション力不足、など
  • 会社都合:業績不振、リストラ(事業再構築のための従業員整理)、など

  • 会社都合の場合、勧奨に応じたときの優遇措置が設けられることが多いですが、従業員に問題があるときは優遇措置がないのが一般的です。

    また、退職勧奨を行う理由によって勧奨方法も異なります。

    • 従業員の問題の場合:退職勧奨は個別に行われる
    • 会社都合の場合:個別に行われるケースと全従業員を対象に行われるケースなどがある

    • 「全従業員を対象に行われるケース」では、退職時の条件(優遇措置など)が公表され明確ですが、条件交渉の余地は少ないでしょう。一方、「個別に行われるケース」では有利な条件で退職できるように会社と交渉する機会もあります。

      退職勧奨と優遇措置

      会社都合で退職勧奨が行われる場合、優遇措置が設けられるのが一般的です。

      業績悪化やビジネスモデルの転換など会社にも事情がありますが、従業員にとっては、自分に責任のない理由で人生を左右するかもしれない決断を求められることになります。従業員に大きな負担を強いる代償が、退職勧奨時の優遇措置なのです。

      また、日本では従業員を解雇するハードルは高く、不当解雇などで訴訟を起こされるリスクを避けるために、従業員の納得を得て自主退職という形にしたいと考える経営者も多いでしょう。

      さらに、従業員に問題があるときでも、穏便に早く辞めてもらいたいという理由で従業員に有利な条件で退職してもらうケースもあります。

      退職勧奨の条件(優遇措置)

      次に、会社が退職勧奨をするときに提案する条件(優遇措置)の具体例をみていきましょう。退職勧奨時の優遇措置について、法律上の定めはなく会社が任意で設定するため、全く優遇措置のない会社もあります。

      主な優遇措置は次の通りです。

      • 退職金の上乗せ
      • 転職活動のための有給休暇の付与
      • 転職先の斡旋や転職エージェントの費用負担
      • 年次有給休暇の買い取り
      • 会社で提供するサービスなどでの優遇措置 など

      • 退職金の上乗せ

        優遇措置の1つ目は、退職金の上乗せです。会社がリストラを実施するときなど、大きな金額が上乗せされることもあるので、従業員にとっても気になるところです。

        会社によって上乗せする方法は異なります。

        • 給与の数か月分(または1、2年分など)を上乗せして支給する
        • 会社都合退職の支給率(自己都合より高い支給率)で退職金を算出する
        • 定年まで勤続したものとみなして退職金を算出する など

        • 具体的な上乗せ金額は不明ですが、総務省統計局の「平成30年就労条件総合調査」によると退職事由別の退職金は次の通りです。

          • 自己都合退職:1,519万円
          • 会社都合退職:2,156万円
          • 早期優遇退職:2,326万円

          • 自己都合退職と比較して、会社都合による退職の方が退職金額は約600円多く、早期優遇退職の場合は更に多くなっています。

            (大卒者の退職事由別・勤続年数別の退職金額)従業員30名以上の企業が対象

            勤続年数

            年齢

            自己都合退職

            会社都合退職

            早期優遇退職

            20~24年

            45-46歳

             780万円

             634万円

            1,402万円

            25~29年

            47-51歳

            1,399万円

            1,786万円

            1,995万円

            30~34年

            52-56歳

            2,110万円

            2,572万円

            2,522万円

            35年以上

            57歳以降

            2,116万円

            2,403万円

            2,530万円

            全年齢

            1,519万円

            2,156万円

            2,326万円


            ※退職金額は一時金と年金の合計。対象は平成29年度の勤続20年以上かつ年齢45歳以上、大学卒(管理・事務・技術職)の退職者。

            参考:総務省統計局「平成30年就労条件総合調査」

            転職活動のための有給休暇の付与

            優遇措置の2つ目は、転職活動のための有給休暇の付与です。

            退職する従業員が早期に転職先を見つけられるように、退職日まで勤務を免除したり、退職日までの転職活動を認める会社もあります。

            退職前に転職活動で休んでも今まで通り給与を受け取れるように、新たに有給休暇を付与するケースもあります。

            転職先の斡旋や転職エージェントの費用負担

            優遇措置の3つ目は、転職先の斡旋や転職エージェントの費用負担です。

            取引先などに退職予定者を紹介し、転職先を斡旋する会社もあります。また、自社で転職先を探すことができない場合、従業員に転職エージェントを紹介しその費用を会社が負担するケースもあります。

            年次有給休暇の買い取り

            優遇措置の4つ目は、年次有給休暇の買い取りです。

            一般的に年次有給休暇を買い取ることは法律で禁止されていますが、退職時の優遇措置として未消化の年休の全部(または一部)の買い取りは認められます。退職によって、従業員が年次有給休暇の権利を行使できなくなるためです。

            会社で提供するサービスなどでの優遇措置

            優遇措置の5つ目は、会社で提供するサービスなどでの優遇措置です。

            具体的なケースは次の通りですが、就業規則に明記されているケースのほか、状況に応じて実施される優遇措置もあります。

            • 社宅の退去期限の延長
            • 会社で借りている住宅ローンの一括返済の免除
            • 企業年金や社内預金などの退職時の取り扱いの緩和 など

            • 退職勧奨を受けて退職するときの注意点

              会社の退職勧奨に応じて退職する場合、気をつけたいのは次の点です。

              • 退職金の割増など優遇措置の確認
              • 離職票の退職事由の確認
              • 不当な退職勧奨(退職強要)などがあった場合の対応

              • 退職金の割増など優遇措置の確認

                会社が退職勧奨を行うとき、優遇措置があれば概要の説明があると思いますが、詳細については書面などで確認することをおすすめします。

                口頭での説明を聞いて退職を決めたものの、退職時の条件が口頭の説明と異なっていてトラブルになるケースもあります。後々のトラブル回避のためにも、詳細を確認した上で結論を出しましょう。また、次の事項も確認しておきましょう。

                • 未払賃金がないか?(残業代や休日出勤など)
                • 未消化の有給休暇の処理をどうするか?
                • 退職日までの出社や勤務をどうするか? など

                • 離職票の離職事由の確認

                  離職票は退職後に受け取りますが、離職理由が自己都合退職になっているケースがあります。失業保険を受給する場合、会社都合退職と比較して、自己都合退職は受給条件(受給開始時期、受給できる日数)で不利になります。

                  自分の意志で退職を決めた場合でも、退職勧奨があった場合の離職理由は会社都合
                  (「希望退職の募集または退職勧奨」に該当)になるので、退職について会社と話し合いをする際に確認しましょう。

                  不当な退職勧奨(退職強要)などがあった場合の対応

                  退職勧奨を拒否しても、会社から執拗に退職を迫られ退職に追い込まれそうなときは、退職勧奨ではなく退職強要になる可能性もあります。

                  会社に対して個人で立ち向かうのは難しいので、面談内容を記録するなど会社の対応を証明する証拠を集めて、弁護士や都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどに相談することも検討しましょう。

                  監修者


                  みんなのユニオン

                  執行委員岡野武志

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                  みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。