減給処分には上限がある?減給の基本ルールと違法な場合の対応措置

更新日:

監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

20190122175051 cc88e8245f3a54c169d25b5c7a33105f01dc7b93 1

この記事でわかること

・就業規則に根拠があれば、会社から減給されることもある
・減給の上限には一日分の半額を超えてはいけない・一カ月の給与の1/10を超えてはいけないという法律のルールがある
・上限を超える減給をされた場合には労働基準監督署に相談をする

労働者に何かしらの落ち度がある場合に、懲戒処分の一つとして減給処分がされることがあります。
「私にも落ち度がある以上やむを得ないけど、この減給は重すぎる…」このように感じる方に知っておいて欲しいのが、減給には上限があるということです。
このページでは、減給の上限などのルールについてお伝えします。

減給の上限など基本的なルールを確認

まずは、減給のルールなどの基本的な時効について確認しましょう。

給料が減るすべてが「減給」ではない?「減給」とは

まず、このページで主に扱う「減給」とはどのようなものか、他にも給料が減ってしまうものと併せて確認しましょう。
まず、労働基準法における「減給」とは、懲戒処分の一つとしてされるものをいいます。
ですので、会社の成績悪化による給与そのものの見直しの一環として給与が少なくなるのは、労働規則・労働協約・労働契約の見直しについての話で、ここでの減給とは扱いません。
人事評価の結果、人事評価制度に照らして給与が減ることを、一般的には降格と呼んでいて、減給とは別に論じられています。
欠勤・遅刻・早退をすると、その分給料が減りますが、これは懲戒処分ではなく、労務の提供をしていない以上賃金の支払いはないノーワークノーペイの原則といえ、減給としては取り扱っていません。

減給をするには就業規則に規定が必要

会社が労働者に懲戒処分を加えるためには、就業規則に必要な定めをして(労働基準法89条9号)、その就業規則を労働者に周知させておく必要があります(労働基準106条)。
この労働基準法の定めと周知がなければ、労働者に減給を含む懲戒処分を加えることができません。
また、就業規則に処分に関する手続が規定されている場合には、その手続に沿った処分でなければ減給はされません。

減給処分が重すぎる場合には無効となることも

上述したとおり、減給は会社から労働者への懲戒処分として行われます。
懲戒処分には次のような種類があります。

種類

内容

戒告

文書や口頭での厳重注意

譴責(けんせき)

始末書を提出させる処分

減給

給与を差し引く処分

出勤停止

一定期間の出勤停止を命ずる処分。一般に謹慎といわれることも。

降格

役職などを引き下げる処分

諭旨解雇

一定期間内に自主的な退職を促し、退職しない場合には懲戒解雇とする処分

懲戒解雇

労働者を解雇する処分

就業規則上はどのような処分を行うことができる場合でも、処分は懲戒処分の原因となったことと釣り合うようにする必要があるとされています(懲戒処分の相当性のルール)。
このルールに従って、減給処分が重すぎる場合には、無効となるケースがあります。
例えば、保育士が2名の園児を見失ったことを原因にされた減給処分について無効とされたことがあります(横浜地方裁判所判決・平成10年11月17日)。

減給には法律で上限が規定されている

減給が妥当とされる場合でも、どの程度減給できるかについては労働基準法91条が次のような上限を規定しています。

  • 1回の減給の額が平均賃金の一日分の半分を超えることはできない
  • 一賃金支払期における賃金の総額の1/10を超えることはできない

たとえば、一回の労働者の落ち度に対して減給をする場合に1ヶ月間給与を減額するということはできません。
また、複数回の落ち度がある場合に複数回を合計して平均賃金の1/10を超えることも許されないことになります。
月給制で給与の支払いをしている場合には、「一賃金支払期」は1ヶ月になりますので、1ヶ月の中で1/10を超えるか超えないかを判断します。
なお、賞与の減額については、基本的には労働基準法91条の上限規制は適用されないと解釈されています。
ただし、賞与の額が「基本給の〇ヶ月分」と決められていて、賞与査定に会社の裁量がないような場合には労働基準法91条の適用があり、上限規制の対象となるので注意が必要です。
会社がこの額を超える減給処分をする場合には、労働基準法120条1号で30万円以下の罰金に処されることがあります。

減給処分の上限の計算方法

では減給処分の上限の計算方法に関する基本を確認しましょう。
減給処分の上限の一つ目に関する、平均賃金は次のように計算します。

  1. 直前の賃金締切日から3ヶ月間の賃金の総額を計算
  2. 直前の賃金締切日から3ヶ月間の日数を計算
  3. 「1.」÷「2.」で平均賃金を求める。

まず、3ヶ月間の賃金の総額を計算します。
賃金の総額は手取りの額ではなく、源泉徴収された所得税や社会保険料を控除する前の金額で計算をします。
賞与などの臨時に支払われた額については計算に含めません。
次に、3ヶ月間の総日数を求めます。
2月であれば28日(うるう年の場合には29日)、計算の対象になる月によって30日・31日を足します。

減給処分の上限を超えた処分をされた場合などの対応方法

では、減給処分の上限を超えるなど、減給が違法であると評価される場合に、労働者はどのような対応をすれば良いでしょうか。

労働基準監督署に相談をする

減給処分については労働基準法の問題ですので、労働基準監督署が管轄をしています。
そのため、労働基準監督署に相談をしましょう。
そもそも就業規則を作っていない、周知をしていないといった場合はもちろん、上限を超える減額処分をしたような場合には、労働基準監督署は使用者に対して行政処分を行うことができます。
また、刑事事件となるときも労働基準監督者が担当をすることになります。
労働基準監督署に相談をする際には、就業規則をコピーしたり写メを撮った上で、減額がされたことがわかるもの(給与明細など)、懲戒処分に関するやりとりがわかるもの(メールや書面、会議などに関するメモ)、などを纏めておきましょう。
会社としても刑事罰を受けることは避けたいので、労働基準監督署からの行政指導によって撤回することが期待できます。

減給処分の無効を巡って会社と交渉する

減給処分について、法律に照らして無効であることを主張して、会社と交渉をしてみましょう。
会社が労働基準法の規定を把握していないような場合で、法律違反の処分を自主的に撤回することが期待できます。

上限を超える減給処分の無効を主張して訴訟をする

減給処分については上述のように現実に裁判でも争われています。
裁判では、減給処分は無効であるとして、未払い賃金の支払いを求めて訴訟を起こします。
なお、労働案件については、労働審判という方法で柔軟な解決を目指すこともできますので、訴訟と併せて検討してみましょう。

まとめ

このページでは、減給処分の上限を中心にお伝えしてきました。
減給に関しては基本的なルールがあり、それに違反することは労働基準法違反となります。
労働基準監督署に相談して、適切な減額を求めましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

詳しくはこちら

みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。