能力不足を理由に会社をクビになったらどうする?

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

・能力不足を理由とした解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められなければ解雇が無効になること
・能力不足による解雇が認められるのは、著しく成績が不良である、公正な評価がされている、能力不足を改善する余地がない、能力不足により業務に支障が出ているといった要件を満たす場合であること
・能力不足を理由とした解雇が違法である場合は、解雇の無効を主張したり損害賠償の請求をしたりできること

能力不足を理由に会社をクビにすると言われた場合や能力不足を理由に解雇された場合にどうすれば良いか知りたいのではないでしょうか。会社が能力不足を理由に従業員を解雇するためには、客観的に合理的な理由と社会通念上相当であることが求められ、解雇権の濫用と判断されれば解雇は無効になります。(労働契約法 第16条)
この記事では、能力不足を理由に解雇できるのか、能力不足を理由に解雇すると言われた場合にどうすれば良いか、能力不足を理由として解雇された場合どうすれば良いかについて解説します。

能力不足を理由に解雇できるのか

能力が不足しているという理由だけで会社が従業員を解雇すると、解雇権の濫用と判断され解雇が無効になる可能性があります。(労働契約法 第16条)

解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上相当であることが求められる

会社が労働者の解雇する権利は、民法第627条1項で定められています。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

引用:民法第627条1項

ただし、解雇権の濫用と判断された場合には、解雇が無効になります。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用:労働契約法 第16条

労働者保護の観点から、会社が従業員をみだりに解雇しないように労働契約法第16条が定められているわけです。

能力不足を理由とした解雇の場合でも、客観的に合理的な理由ではなく、社会通念上相当ではないと判断されれば、解雇は無効になります。他の従業員と比べて能力が低い、期待した業績が出せていないといった能力不足で解雇した場合は、解雇権の濫用として解雇が無効になる可能性があります。

能力不足による解雇が不当解雇と判断された裁判例

セガ・エンタープライゼス事件(東京地決1999年10月15日)では、労働能率が劣り、向上の見込みがないなどの理由による解雇が無効になっています。

会社の人事考課で該当する従業員が下位10%であったことは、直ちに労働能率が著しく劣り、向上の見込みがないとまでいうことはできないと判断されています。人事考課で下位10%というのは相対的な評価であり、絶対的な評価ではないことが理由となっています。また、労働能率の向上を図る余地があったにもかかわらず、指導、教育が行われていなかったことも解雇権の濫用と判断された要因のひとつです。

能力不足による解雇が認められるのはどのようなときか

過去の判例によれば、能力不足で解雇が認められるのは、以下の要件を満たす場合のようです。

  • 著しく成績が不良である
  • 公正な評価がされている
  • 能力不足を改善する余地がない
  • 能力不足により業務に支障が出ている

  • 三井リース事件(東京地決1994年11月10日)においては、非能率、組織不適応、労働意欲の欠如などを理由とする解雇が有効となっています。
    会社は労働者の能力や適性を判断するために配置転換を行っており、労働者が希望する部署への配属を指示した後に、日常業務を免除し研修する機会を与えたものの、能力や適正が不足しており、業務遂行に対する基本的姿勢に問題があると評価されたため、解雇は妥当であると判断されています。

    能力不足を理由に解雇すると言われた場合にどうすれば良いか

    能力不足を理由に解雇すると言われた場合は、解雇予告通知書と解雇理由証明書を請求しましょう。また、退職勧奨ではないかを確認しましょう。

    解雇予告通知書と解雇理由証明書を請求する

    会社が従業員を解雇する場合は、少なくとも30日前に解雇の予告を行う必要があります。また、30日前に予告をしない場合には30日分以上の平均賃金を支払わなければいけません。(労働基準法第20条)

    解雇予告通知書には、解雇予告をした日や解雇日、解雇理由が書かれています。自分がいつ解雇されるのかを確認するために解雇予告通知書を請求しておきましょう。

    また、自分がどのような理由で解雇されるのかを確認するために、解雇理由証明書を請求しておきましょう。解雇理由証明書には、解雇される理由が具体的に書かれているので、能力不足で解雇されることが不当解雇ではないかを判断しやすくなります。

    解雇理由証明書は、解雇予告日から退職日の間に請求した場合は、すぐに受け取れます。(労働基準法22条2項)

    解雇ではなく退職勧奨ではないかを確認する

    退職勧奨とは、会社が退職してもらいたい従業員に対して、自主的な退職を促す行為です。退職勧奨で退職する場合は、会社と労働者が合意のうえで契約を解除することになります。会社から一方的に契約の解除を要求する解雇とは異なります。

    能力不足で会社をクビにすると言われた場合は、解雇ではなく退職勧奨であることも考えられます。会社が従業員を能力不足で解雇することは簡単ではないからです。退職勧奨には強制力がなく、自分の意思に反して応じる必要はありません。

    もし退職勧奨に応じた場合は、能力不足による解雇を不当解雇と主張する場合に不利になる恐れがあります。また、退職勧奨に応じて退職すれば、会社都合の退職ではなく自己都合退職になり、失業給付金の受け取りで不利になる恐れもあります。強引な退職勧奨が違法と判断された場合には、退職を取り消すことも可能です。(民法96条1項)

    能力不足を理由として解雇された場合どうすれば良いか

    能力不足を理由とした解雇が不当解雇であれば、解雇の無効を主張できます。また損害賠償の請求も可能です。

    会社に解雇の無効を主張する

    能力不足を理由とした解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められなければ、解雇権の濫用として解雇の無効を主張できます。解雇の無効を主張する場合は、弁護士に相談してみましょう。

    損害賠償を請求する

    解雇の無効を主張しない場合や会社に戻りたくない場合でも、損害賠償の請求ができます。ただし、解雇が無効と認定された場合でも、慰謝料の請求が認められるとは限らない点に注意しておきましょう。損害賠償を請求する場合は、弁護士に相談しましょう。

    監修者


    みんなのユニオン

    執行委員岡野武志

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    みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。