パワハラの慰謝料の相場は?具体的な裁判例も紹介!

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

・違法なパワハラ行為によって精神的苦痛(損害)を受けた場合、加害者または会社に対して慰謝料を請求できる。
・パワハラの慰謝料の相場は数十万円から100万円。実際に受け取れる慰謝料はパワハラ行為の内容や被害の状況で大きく異なる。
・犯罪行為があった場合や精神障害を発症した場合、慰謝料が100万円を超えることもある。被害者が自殺に追い込まれたケースでは1,000万円を超えることも。

厚生労働省の平成28年度パワハラ実態調査では、過去3年間にパワハラを受けたことがある人が32.5%と前回調査(平成24年、25.3%)より大幅に増えました。

しかし、パワハラ被害にあっても上司や会社を訴えることに迷いを感じ、何の対応もしない人も多いでしょう。。

今回の記事では、パワハラによる慰謝料の相場について解説します。パワハラで精神障害を発症したり、退職に追い込まれた場合以外にも、慰謝料を請求できるケースを紹介しますので参考にしてください。

参考:厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査について」

パワハラとは|パワハラの定義と6つの類型

まずはパワハラの定義と6つの類型について説明します。2020年6月1日施行の労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)で職場のパワハラ対策が法制化されるとともに、下記が明確に示されました。

参考:厚生労働省「パワーハラスメントの定義について」

パワハラの定義

労働施策総合推進法では、職場におけるパワハラは下記の3つの要素をすべて満たすものと定義付けられます。

  • ①優越的な関係を背景とした言動であって、
  • ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  • ③労働者の就業環境が害されるもの

  • ①「優越的な関係を背景とした言動」とは

    「優越的な関係を背景とした言動」とは、職務上の地位が上位の者による言動などで、下位の者が抵抗したり拒絶しづらいものです。

    ②「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とは

    「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とは、「業務上必要性のない言動」「業務の目的を逸脱した言動」「業務遂行手段として不適当な言動」などです。

    ③「労働者の就業環境が害されるもの」とは

    「労働者の就業環境が害されるもの」とは、労働者が身体的又は精神的に苦痛を感じたり、就業環境を不快と感じ就業上の支障が生じること、などです。

    パワハラの6つの類型

    パワハラに該当する代表的な言動は、下記の6つに分類されます。

    • 身体的な攻撃
    • 殴打や蹴り、物を投げる

      • 精神的な攻撃
      • 人格否定するような言動、長時間の厳しい叱責、大声で威圧的な叱責

        • 人間関係からの切り離し
        • 特定の労働者を仕事から外す、集団で無視し職場で孤立させる

          • 過大な要求
          • 対応できないレベルの目標を課す、未達を厳しく叱責する

            • 過小な要求
            • 嫌がらせを目的に仕事を与えない、誰でもできる仕事をさせる

              • 個の侵害
              • 労働者の個人情報を本人の了解を得ずに他の労働者に暴露する など

                パワハラで請求できる慰謝料と請求先

                パワハラに該当したとき、請求できる慰謝料とは何でしょう。また誰に請求すればいいのでしょう。慰謝料の内容と請求先について解説します。

                慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償

                慰謝料とはパワハラ行為による精神的苦痛に対する損害賠償です。損害賠償の対象は、身体やモノ、経済上の利益に対する損害などであり、慰謝料は損害賠償の一種といえます。

                また、損害賠償を受けるには、相手方の違法な行為によって損害を被ることが要件です。つまり、違法なパワハラ行為によって精神的苦痛(損害)を受けた場合に、慰謝料を請求できます。

                慰謝料の請求先は加害者または会社

                パワハラ被害にあった場合の慰謝料の請求先は、加害者または会社です。

                加害者は当然ですが、会社にも慰謝料を請求できる場合があります。会社には従業員の安全と健康を守るために「安全配慮義務」と「環境配慮義務」があるため、その義務を果たさないと会社に債務不履行を問うこともできるからです。

                パワハラの慰謝料の相場と裁判例

                パワハラで損害賠償請求した場合、いくら位の慰謝料を受け取れるのでしょう。パワハラの内容によって大きく異なりますが大体の相場をみていきましょう。

                パワハラの慰謝料相場は数十万円から100万円

                パワハラの慰謝料相場は数十万円から100万円だといわれています。次の内容によって実際に受け取れる慰謝料は変わってきます。

                • 加害者の立場:加害者の立場が高い人ほど慰謝料は高い
                • パワハラ行為の内容や悪質性:悪質性が高いほど慰謝料は高い
                • 加害者の人数:加害者の人数が多いほど慰謝料は高い
                • 被害の内容や程度:被害が大きいほど慰謝料は高い
                • 被害を受けていた期間や頻度:期間が長い、頻度が多いほど慰謝料は高い
                • 被害者の素因など:素因の影響が大きいと判断されると慰謝料は低い可能性

                • ※被害発生の一因と考えられる、被害者が元々持っていた身体的要因や精神的要因

                  ただし、下記ケースでは慰謝料が100万円を超えることもあります。

                  • ケガをするような暴力行為があった。
                  • 強姦などのセクハラを含む行為があった。
                  • パワハラが長期にわたり繰り返し行われた。
                  • 精神障害を発症した。
                  • 被害者が自殺した。
                  • 退職に追い込まれた。

                  • 裁判例からみる慰謝料の相場

                    最後に裁判例より、具体的なパワハラ行為と慰謝料を紹介します。

                    (裁判例)慰謝料には弁護士費用なども含む

                    慰謝料

                    セクハラの内容(裁判所名・判決日・内容)

                    5万円

                    東京地方裁判所(平成24年11月30日)


                    • コンビニ店長による従業員への暴言。
                    • 「ふざけんなよ」「ばばあ」「辞めろよ」「二度と来んな」など。

                    25万円

                    最高裁判所(平成8年2月23日)


                    • 就業規則に違反した従業員に対し、上司が2日間の「就業規則書き写し等の教育訓練」を行った。
                    • 1日目、手を休めていると怒鳴る、飲料を飲ませない、トイレに行かせない、などの行為があり、従業員は帰宅後腹痛(持病あり)
                    • 2日目、腹痛による休暇申出を行うも認められず出社。後日、1週間程度入院となる。

                    30万円

                    大阪地方裁判所(平成25年10月19日)


                    • 派遣社員が派遣先従業員から暴言を受けて退職。
                    • 派遣社員のミスに対し「殺すぞ」など発言。
                    • 発言者は元々荒っぽい発言が多く軽口のつもりだとも考えられるが、繰返し行われたことから「全体として見れば違法性を有す」とされた。

                    55万円

                    大阪地方裁判所(平成11年10月18日)


                    • 業務中、会社手配の送迎タクシーで交通事故に遭遇。数年の休業後、職場復帰するも退職強要され、拒否するが解雇となる。
                    • 退職勧奨は4か月に30回以上、中には8時間に及ぶことも。拒否するも自宅まで押しかけられたり、実家の家族にまで連絡される。

                    200万円

                    東京地方裁判所(平成25年1月30日)


                    • 直属上司ではないが社内の立場が上の人のパワハラ行為。
                    • 従業員の人格権を傷つける侮蔑的・女性差別的言動が、人前や電話、メールで繰り返し行われた。
                    • 「怠け者」「能力がない」「辞めてしまえ」「不要な人間」「子宮でものを考えている」など。

                    5,400万円

                    名古屋地方裁判所(平成26年1月25日)


                    • 会社役員による暴力・暴言・退職勧奨により従業員が自殺。
                    • 仕事のミスに対し損害賠償を請求、「会社を辞めたければ7,000万円払え。払わなければ辞めさせない」などと発言。
                    • 自殺7日前、従業員の大腿部を蹴り全治12日間の傷害を負わせる。
                    • 自殺3日前、退職願を書くよう強要。

                    参考:厚生労働省「あかるい職場応援団・裁判例を見てみよう」

                    監修者


                    みんなのユニオン

                    執行委員岡野武志

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                    みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。