残業手当っていくらもらえるの?計算方法から注意点までを解説!

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

・会社の就業規則や、労働契約書等で定められた「所定労働時間」を超えて働いた場合に支払われる賃金を、残業手当という
・残業手当は、(月給/1か月あたりの平均所定労働時間)×残業時間×割増賃金率で求めることができる
・振替休日、代休、フレックス、固定残業代を会社が採用している場合は、残業手当の計算をする際に注意すべき点がある

どうしても勤務時間内に終わらない仕事を、残業として対応することは、社会人であれば誰しも経験がありますよね。
残業であっても、しっかり残業手当が払われるのであれば問題ありませんが、給与明細を見ても、本当に残業時間分支払われているか、パッとわかるものではありません。
サービス残業になっていないかを確認する意味でも、この記事で、残業手当の計算方法と注意点について確認していきましょう。

残業手当を計算するための基本知識

残業手当の計算に取り掛かる前に、計算をスムーズにするためにも、「残業手当」に関する基本をおさえる必要があります。
さっそく、確認していきましょう。

残業手当とは?

会社の就業規則や、労働契約書等で定められた「所定労働時間」を超えて働いた場合に支払われる賃金を、残業手当といいます。
ほかにも残業代、時間外手当、超過勤務手当と呼ばれることもありますが、基本的に全て同じ意味で用いられます。

所定労働時間と似ている言葉として、「法定労働時間」というものがあります。
これは、原則として、休憩時間を除く1日8時間・週40時間の労働時間を指し、法定労働時間を超えた労働はさせてはならないと法律で定められています。(労働基準法32条)

ただし、労使協定(36協定)を締結し、会社が行政官庁に労使協定を届け出た場合は、法定労働時間を超えて働くことができます。(労働基準法36条1項)
労使協定を締結した場合、法定労働時間を過ぎると、残業手当として「割増賃金」が発生します。(労働基準法37条1項)

例えば、所定労働時間が1日7時間の会社で、3時間残業した場合は、10時間働いたことになります。
この場合、所定労働時間(7時間)と法定労働時間(8時間)との差となる1時間は、法定内残業となり、基本的には、割増賃金のない通常の残業手当が支給されます。
実労働時間(10時間)と法定労働時間(8時間)の差となる2時間は、割増賃金が発生した残業手当が支給されます。

なお、法定内残業については、労働組合の取り組みにより、割増賃金を適用しているケースも多く存在します。
就業規則等で確認してみましょう。

残業手当として割増賃金が発生するもの

残業として勤務時間を超過した分はもちろん、休日労働や、労働が深夜(午後10時~午前5時)に及んだ場合も、割増賃金として手当が発生します。

時間外にどう労働したかによって、計算の際に使用する「割増賃金率」が変わりますが、詳しくは後ほど説明します。

残業手当を計算する方法

それでは、実際に残業手当がいくらになるか、計算方法を確認してみましょう。

残業手当の計算式

残業手当は、以下のように計算します。

残業手当=月の基礎賃金(月給)1か月あたりの平均所定労働時間残業時間割増賃金率

月給に含めないもの|残業手当の計算

月給に以下の手当てが含まれている場合、除外して計算してください。(労働基準法施行規則21条)

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

これらは限定列挙されているため、上記の手当て以外のものは月給から除外されません。
実際に手当を除外するにあたっては、単に名称によるものでなく、その実質によって取り扱うべきものとされています。
例えば、家族手当とは、「扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当」を指しているので、会社内のシステムや均衡上、独身者にも一定額の家族手当が支払われている場合、独身者に支払われている部分は、家族手当ではないとされます。

平均所定労働時間|残業手当の計算

1か月あたりの平均所定労働時間は、以下のように算出します。

(365日-年間所定休日数)12か月1日の所定労働時間

うるう年の場合は、366日で計算します。

残業時間|残業手当の計算

残業手当は、原則として、たとえ残業時間が1分であっても支給されるべきで、端数だからといって計算上切り捨てることは認められていません。
また、賃金計算期間内の残業時間は、積み上げて計算される必要があります。

ただし、行政解釈として、集計した結果について以下のようなものは、常に労働者の不利益になるものではなく、事務簡便を目的としているため、認められています。

  • 30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること
  • 1時間あたりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、それ以上を1円に切り上げること
  • 1か月における時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、それ以上を1円に切り上げること

割増賃金率|残業手当の計算

割増賃金率は、以下のように、労働の態様によって変わります。

労働の態様

残業手当割増率

1か月の時間外労働が

60時間以内

1か月の時間外労働が

60時間超

時間外労働のみ

2割5分以上

5割以上

休日労働のみ

3割5分以上

深夜労働のみ

2割5分以上

時間外労働+深夜労働

5割以上

7割5分以上

休日労働+深夜労働

6割以上

法定休日に労働をさせる休日労働の場合、労働が深夜に及ばない限り、労働させた時間の長さに関わらず、割増賃金率は35%となります。
法定休日については、下記「残業手当計算の注意点②:代休制度」を参照してください。

残業手当計算の具体例

実際に、具体例をもとに、残業手当の計算をしてみましょう。

【例】
年間所定休日数が113日、所定労働時間が1日8時間、月給250,000円(家族手当15,000円、住宅手当12,000円、通勤手当8,000円、皆勤手当10,000円を含む)の労働者が、月20時間の残業をした(休日・深夜労働ではない)場合

  1. 計算に含まない手当を控除した月給を算定する

金額

割増賃金の対象

基本給

205,000

家族手当

15,000

×

住宅手当

12,000

×

通勤手当

8,000

×

皆勤手当

10,000

250,000

215,000

  1. 1か月あたりの平均所定労働時間を算出する

(365日-113日)12か月8時間=168時間

  1. 残業手当を算出する

215,000円168時間20時間(1+0.25)≒32,000円

この例では、残業手当は32,000円となります。

残業手当を計算する際の注意点

近年導入が増えてきた振替休日、代休(代替休暇)、フレックス、固定残業手当といった制度ですが、これらの制度を取り入れている場合、残業手当の計算をするにあたって、知っておくべき注意点があります。
もし会社がこういった制度を取り入れている場合は、以下の注意点をおさえて残業手当を計算しましょう。

残業手当計算の注意点①:振替休日制度

先に述べた通り、休日に労働した場合、手当として割増賃金が発生します。
しかし、振替休日として、事前に休日と労働日を入れ替える場合、休日を労働日として出勤させることができます。
ここでのポイントは、休日出勤が「労働日」として扱われ、振替休日として休んだ日が「休日」として扱われるという点にあります。
労働者は労働日に労働することになるため、割増賃金は発生しません。

なお、この振替休日を行うには、事前に労働者の同意が必要とされています。
会社から労働者に対して事前に同意をとる、もしくは、あらかじめ就業規則に規定してあるならば、振替休日をとることが可能です。

残業手当計算の注意点②:代休制度

振替休日と非常によく似た言葉に代休(代替休暇)があります。
こちらは、休日に労働した後に、その代償として、その後の特定の労働日の労働義務を免除してもらうことをいいます。
この場合、代休とした日の労働義務は免除されていますが、基本的に代休日は「無給」扱いになり、休日出勤した日の労働は、休日労働として手当が発生します。

休日労働として割増賃金がどう発生するかは、法定休日を確認する必要があります。

法定休日とは、週に1回あるいは4週を通じて4日の最低基準の休日をいいます。(労働基準法35条)
週休2日制の場合、会社で法定休日を特定しておくことが必要となります。
ただし、法律上、会社側に法定休日を特定しておく義務があるわけではないため、もし会社が法定休日を定めていない場合は、行政解釈として、「暦週の後に来る休日を法定休日とする」としています。
一般に暦週というと、日曜日から土曜日までを指します。
つまり、週の起点となる曜日を特定していない場合、暦週で1週間を考えるので、土日の週休2日制の場合、土曜日が法定休日となります。

【例】
月~金、1日8時間、週40時間で労働している労働者が、その週の土曜に休日出勤をし、翌週の金曜日に代休をとった場合

代休として休んだ日は、基本的に無給として取り扱われます。
その上で、法定休日が土曜か日曜かによって取り扱いが変わります。

  • 法定休日が土曜である場合:休日労働として割増賃金35%が加算される
  • 法定休日が日曜である場合:法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えている分の割増賃金25%が加算される

残業手当計算の注意点③:フレックス

フレックスとは、正式にはフレックスタイム制といい、一定の期間について、あらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度のことです。
どこの会社でも取り入れているわけではないため、会社がフレックスを導入しているかは、就業規則等で確認してみましょう。

労働者側で時間を決められるとなると、残業という概念がないのではと思われる方もいますが、フレックスには「清算期間」が存在し、その清算期間で所定労働時間を超えている場合は、残業手当が発生します。
残業手当として割増賃金が発生するかどうかは、法律上、清算期間における法定労働時間の総枠を超えているか否かによって決まります。

清算期間における法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間(40時間)清算期間の暦日数7日

【例】
清算期間1か月で、暦日数が30日であった月に、180時間労働した場合

清算期間における法定労働時間の総枠は、
40時間30日7日=171.4時間

残業時間は、
180時間-171.4時間=8.6時間

8.6時間分、時間外労働として割増賃金が加算された残業手当が発生します。

残業手当計算の注意点④:固定残業代

固定残業代とは、あらかじめ月給等の固定給に含まれている残業手当のことをいいます。
固定給として支払われるため、実際の残業が0時間の場合でも、差し引かれることはありません。

固定残業代を採用している場合、会社は募集・採用の時点で、以下の点を明確にしておかなければなりません。(厚生労働省「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」)

  • 固定残業代を除いた基本給の額
  • 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
  • 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨

上記の通り、労働時間が、元々含まれている固定残業時間を超えた場合、時間外労働として、割増賃金を発生させた残業手当が支給されます。

なお、固定残業代は、労働者の合意の上で実施されるものなので、会社は、就業規則や賃金規定、雇用契約書等の書面にして、労働者に周知しておく必要があります。
入社してから固定残業代が採用されたという場合は、就業規則や賃金規定、雇用契約書等の書面で確認してみましょう。

最後に

正しく残業手当が計算されているかは、労働者にとって非常に重要です。
慣れてないため、残業手当の計算に抵抗がある方も多くいますが、「あれだけ残業したのに、残業手当が少ない気がする…」と思っている場合、サービス残業になっていないか、一度計算し、確認してみることをお勧めします。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。