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この記事でわかること
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりパート社員など有期契約労働者の雇い止めが増えています。雇用保険に加入していないパート社員の人たちは、もし雇い止めになったら失業保険の給付を受けることができません。
今回の記事では、パートでも雇用保険に加入できるのか、雇用保険に入ることでどんなメリットがあるのかについて解説します。本来、加入できるのに雇用保険に入っていないときの対処法も紹介しますので参考にしてください。
目次
パート社員など有期契約労働者も雇用保険に加入できるのでしょうか。
まずは雇用保険制度について確認した上で、雇用保険の加入要件を解説します。
雇用保険は従業員を雇用する会社が強制的に加入する国の制度で、主な目的は次の2つです。
失業した労働者へ手当の給付を行い、失業者の生活と雇用の安定を図ること
職業に関する教育訓練や育児・介護による休業に対して給付を行い、失業の予防や雇用機会の増大、労働者の能力開発、福祉の増進を図ること
雇用保険法では、雇用保険の対象となる会社は「労働者が雇用される事業」と定められていて、すべての業種の会社が対象となります。
また、正規社員や有期雇用労働者などの区分はないので、次の要件を満たせばパート社員も雇用保険の対象者、つまり、被保険者です。
31日以上の継続雇用が見込まれる
1週間の所定労働時間が20時間以上
ただし、次に該当する人は対象外です。
会社の取締役や監査役、家事使用人など(労働者と認められる場合は除く)
昼間学生(休学中や定時制課程の学生は除く)
雇用保険の被保険者は、雇用形態等により次の4種類です。
一般被保険者:下記以外の労働者
高年齢被保険者:65歳以上の労働者
短期雇用特例被保険者:所定の要件を満たした季節労働者
日雇労働被保険者:日々または30日以内の期間を定めて雇われる労働者
被保険者の種類によって失業したときの給付などが異なります。
パート社員が雇用保険に入るメリットは、雇用保険の手厚い給付を受けられることです。未加入のパート社員は給付を受けられずに、経済的に困ったことになる可能性もあります。
(雇用保険の給付金)
引用:ハローワークインターネットサービス「雇用保険制度の概要」
主な給付内容は次の通りです。
失業給付
高年齢雇用継続給付
育児休業給付・介護休業給付
教育訓練給付 など
それぞれについて簡単に説明します。
雇用保険加入の1つ目のメリットは、失業給付をもらえることです。
失業給付の内容は被保険者の種類ごとに異なります。給付の名称は次の通りです。
一般被保険者:基本手当
高年齢被保険者:高年齢求職者給付
短期雇用特例被保険者:特例一時金
日雇労働被保険者:日雇労働求職者給付金
一般被保険者がもらえる基本手当は、退職理由(自己都合か会社都合か) や雇用保険の加入期間などによって受給の可否や受給期間などが違ってきます。
失業したときは雇用保険に加入していても、パートで雇用保険に加入していない時期があれば、基本手当がもらえなかったり少なくなってしまう可能性があります。
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
雇用保険加入の2つ目のメリットは、高年齢雇用継続給付をもらえることです。
高年齢雇用継続給付は、5年以上雇用保険に加入した人が60歳から65歳の間に定年後再雇用などで給与ダウンした場合に支給されます。支給要件に該当すれば、ダウンする前の給与の最大15%を65歳まで受給できます。
参考:ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」(次の育児休業給付等も同様)
雇用保険加入の3つ目のメリットは、育児休業給付・介護休業給付をもらえることです。
1歳未満の子供の育児や家族の介護のために休業をとった場合、所定の要件を満たした雇用保険の被保険者は休業開始前の賃金の67%を受け取ることができます。(ただし、育児休業開始から6か月経過後の育児休業給付は50%)
給付金をもらえる期間は、育児休業給付は最大1年間、介護休業給付は93日間です。 どちらの給付金も、仕事ができず給与ももらえない時期の貴重な収入です。
雇用保険加入の4つ目のメリットは、教育訓練給付をもらえることです。
教育訓練給付は、労働者の能力開発やキャリア形成を支援し雇用の安定と再就職の促進を目的に設けられました。「厚生労働大臣の指定」の教育訓練を受講したとき、費用の一部を受給できます。
参考:厚生労働省「教育訓練給付制度」
上記の通り、雇用保険は失業したときだけでなく仕事を続けるためにも役に立つ制度です。労働者にとってはありがたい制度なので、雇用保険の加入要件を満たすような働き方を選択することも重要です。
雇用保険に加入するメリットは非常に大きいですが、デメリットは雇用保険料を払わないといけないことくらいです。
労災保険の保険料は会社が全額負担してくれますが、雇用保険の保険料は労使で負担します。 労働者の負担は、一般の事業(農林水産、建設業などを除く)が賃金の3/1,000(令和2年度)です。パート収入が約10万円なら300円程度の負担です。
雇用保険の加入資格を満たしているにも関わらず、会社が雇用保険に加入してくれないときは対応が必要です。
雇用保険の加入は法律で義務付けられたもので、これに違反すると会社は「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。(雇用保険法第83条1号)
雇用保険加入は正当な権利なので下記方法などでしっかりと対処しましょう。
会社に請求する
ハローワークに相談する
弁護士に相談する
まずは、会社(上司や人事・労務の担当者など)に雇用保険に加入するように請求しましょう。
加入手続きが漏れているだけなら問題は解決です。これまでの未加入期間については2年前まで遡って雇用保険に加入できるので、忘れずに手続きしてもらいましょう。ただし、過去の労働者負担分の雇用保険料の支払いは必要です。
会社が応じてくれなければ、会社は故意に法律違反を犯していることになります。
以下の対応が必要です。
会社に請求しても対応してくれないときは、労働局かハローワークに相談しましょう。雇用保険の加入要件を満たしていれば、労働局が会社に指導・勧告します。
相談するときは雇用保険の加入要件を満たしていることがわかるように、雇用契約書や給与明細、源泉徴収票などを準備しましょう。
勤務している会社を公的機関に訴えるようなことをしたくない場合は、費用はかかりますが弁護士に相談する方法もあります。裁判するという意味ではなく、弁護士に会社との交渉をお願いするのです。
弁護士が入ることによって会社もいい加減な対応がしにくくなります。また、法律と交渉の専門家に任せることで、会社との交渉もスムーズに進みます。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。