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転勤か退職か迫られたら断ることはできる?違法なケースも紹介

更新日:

監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

  • 会社からの転勤命令は原則拒否できない
  • 転勤命令を拒否すると解雇されてしまう可能性がある
  • やむを得ない事情や権利の濫用で転勤命令が無効になる場合がある

会社から転勤か退職かどっちか選べと言われてしまった!

いわゆる肩たたきとして遠方への転勤を命じられて、応じなかったら退職を迫られるというケースがあります。

このような理不尽な転勤命令が下ってしまったら、とても納得はできないですよね。

今回の記事では、会社からこのような転勤命令が下った際に従業員は拒否できるのかについて解説していきます。

転勤命令を断ることはできる?

まず、会社からの転勤命令を拒否することはできるのでしょうか。

また、出来ないとしても拒否した場合は解雇される可能性はあるのか確認しましょう。

基本的には転勤命令を断ることはできない

会社からの転勤命令は原則として従業員は拒否することができません。

多くの会社は、就業規則に「会社は転勤を命じることができる」という旨の規定が書かれているからです。

一般的に、正社員は長期的な雇用を前提としていて、定年までさまざまな職種や職場を経験することが予定されていることから、会社の転勤命令は原則的に肯定されています。

また、東亜ペイント事件(最二小判昭61.7.14)などの判例からも転勤命令権は強く肯定されていることがわかります。

内示の段階なら拒否できる?

内示とは、正式な転勤命令(辞令)の前に本人やその上司など限られた人に対してのみ知らされるいわば予告のようなものです。

この内示の段階であれば断ることができるのでしょうか。

残念ながら内示の段階であっても拒否することは難しいです。

ただし、後述するやむを得ない事情があるなど「正当な理由」があれば、会社と交渉することは可能だといえます。

転勤を断った際に解雇されることに違法性はあるか

転勤を断って退職もしなかった場合、会社から解雇される可能性があります。

このような転勤を断ったことによる解雇は、残念ながら正当な解雇として認められてしまう可能性があります。

多くの会社は、懲戒事由として「正当な理由なく業務上の指示・命令に従わなかったとき」という旨を就業規則に記載しています。

そのため、会社が業務命令違反として、従業員を懲戒解雇することも可能となってしまいます。

ただし、懲戒解雇が正当なものと認められるには、転勤命令に正当性があることが前提です。

転勤命令が不当なものであれば、転勤命令自体が無効となるので懲戒解雇は当然認められません。

では、転勤命令が不当なものとされる可能性があるケースとはいったいどのようなものが挙げられるのか以下より解説します。

転勤命令を拒否することができるケースとは

転勤命令自体が不当であるとして拒否をすることができるケースは、一体どのような場合なのか確認しましょう。

やむを得ない事情がある

従業員にやむを得ない事情がある場合は、転勤命令を拒否することができます。

具体例としては以下の例などが挙げられます。

  • 要介護の親がいて自分しか面倒を見れる人がいない
  • 本人が難病にかかっていて転勤先の地域にかかりつけにできる医者がいない

上記のようにやむを得ない事情があるとは、相当な理由が求められます。

単に、「マイホームを購入したから」とか「子どもがまだ小学校に入ったばかりだから」といった理由では、残念ながらやむを得ない事情であるとは判断されない可能性が高いでしょう。

勤務地が限定されている

雇用契約時に転勤はしないという契約を結んでいたのであれば、転勤命令は不当なものとなります。

雇用契約書に、「勤務先は〇〇市内に限定する」や「本人の同意なく転居を伴う人事異動を行わないとする」といったことが記載されている従業員は一般的に、「地域限定職」や「エリア職」と呼ばれます。

このような職種の従業員に、転勤を命じるには本人の許可が必要です。

転勤命令が権利の濫用である

転勤命令が会社側の権利の濫用にあたる場合も転勤命令は不当なものとみなされます。

どのような転勤命令が権利の乱用にあたるかというと以下の基準をもとに検討します。

①業務上の必要がある転勤命令か

②転勤命令の行使に不当な動機や目的はないか

③転勤命令が労働者の通常甘受すべき程度を著しく超える不利益となっていないか

②の具体例としては、会社から退職勧奨を拒否した従業員に対して、直後に遠方への転勤命令をした事案があります(フシジール事件・大阪地裁平12.8.28)。

この事案は、転勤先での業務が当該従業員の経歴と関連しない単純作業であったこと(①の業務上の必要がある転勤命令とはいえない)から、当該従業員を退職に追い込むためのいやがらせ目的の転勤命令であるとして無効と判決を下されました。

転勤命令が無効となった事例

前項では、転勤命令を拒否できるケースを確認しました。

では、最後に実際に転勤命令が無効となった事例をみていきましょう。

勤務地合意があったとみなされた事例

これは、採用面接の際に従業員が支店長に家庭の事情で転勤できないことを伝えていて支店長及び本社も何らの留保を付することなく採用した後に、当該従業員に対して転勤命令を出した事案です(新日本通信事件・大阪地裁平9.3.24)。

  • 当該従業員が転勤をできない旨をはっきりと支店長及び会社に伝えてあること
  • 会社が当該従業員に対して転勤があり得ることを明示していないこと

以上の2点から当該従業員と会社との間には勤務地限定にする旨の合意があったとするのが相当であるとして、当該従業員の転勤命令は無効であるという判決が下されました。

従業員の不利益が著しく大きい事例①

これは、ある出版社に勤める従業員が会社から転勤命令を受けたところ、重度のアトピー性皮膚炎の子ども2人の治療等を理由に拒否したにもかかわらず聞き入れてもらえなかったので当該従業員が転勤命令の無効を主張した事案です(明治図書館出版事件・東京地裁平14.12.27)

  • 妻も共働きであり退職が不可避であること
  • 子ども2人が重度のアトピーを患っていて育児負担が特段に重いこと

以上の2点から当該従業員の不利益が通常甘受すべき不利益を著しく超えるとして、転勤命令は権利の濫用で無効という判決が下されました。

従業員の不利益が著しく大きい事例②

これは、食品メーカーに勤める従業員(AとB)が、家庭の事情により転勤命令を拒否したところ会社に認められなかったため、当該従業員が転勤命令の無効を主張した事案です(ネスレ日本事件・大阪高判平18.4.14)。

裁判所は、従業員Aが会社に要介護の母親がいることを申告したにもかかわらず、会社側はその事情を調査せずに転勤命令を維持したことは改正育児・介護休業法第26条の求める配慮としては、十分なものとはいえないとしました。

また従業員Bについても妻が非定型精神病にかかっていることを考慮して、従業員Bへの転勤命令は通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとして転勤命令が権利の濫用であり無効と判決を下しました。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。