不当解雇・退職勧奨の
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この記事でわかること
いわゆる正社員と違い、不安定な立場にいるアルバイト。
特に景気が悪化すると、解雇されやすい「非正規労働者(非正社員)」に該当します。
そのため、不当解雇にあいやすいのもアルバイトです。
しかし、アルバイトの立場であったとしても、不当解雇が適法になるわけではありません。
この記事では、正社員とアルバイトの違いから、不当解雇された場合に確認すべきポイントを紹介していきます。
目次
アルバイトを含む非正規労働者は、非常に不安定な立場です。
そもそも、アルバイトを含む非正規労働者と、正社員は、どのような違いがあるのでしょうか。
アルバイトと正社員の違いを確認した上で、なぜ不当解雇にあいやすいのか、みていきましょう。
一般的に、正社員(正規労働者)は、以下の条件を満たした労働者を指します。
無期雇用(労働契約に期間の定めがない)
フルタイム勤務
直接雇用
上記に該当しない労働者が非正規労働者であり、非正規労働者は更に「アルバイト」、「パートタイム」、「契約社員」、「派遣社員」等に分類されます。
なお、法律上は、アルバイトとパートタイムの間に区別はありません。
なぜ名前が分かれているかと言えば、各会社が、便宜上「アルバイト」「パートタイム」を分けて雇用していることが多いためであり、一般的に、「アルバイト」は比較的シフトが自由に設定できる労働者で、「パートタイム」は固定シフトで業務に従事する労働者であるとされています。
一般的に、日本の企業社会における正社員(正規労働者)は、「企業内で育成したうえで、企業内の年功・能力等により昇進・昇給をし、定年までの雇用を前提とした労働者」を指しています。
労働者を囲い込む性質のものであり、それゆえに、会社内の経営がうまくいっていない・赤字であるといった理由だけで、企業努力もせず指名解雇するようなことは認められていません。
一方において、常に景気は変動の波があるため、どうしても繁閑の差があり、業務量等を調整する必要があります。
その調整方法のひとつが、いわゆるアルバイト・パートタイムといった労働者を有期雇用することでした。
よって、業務内容も、正社員が行う業務の補佐的なものになります。
そのような背景から、比較的簡易な採用手続で短期的な有期契約を前提としたアルバイト・パートタイムの解雇については、判例上、「使用者が企業の必要から労働者の整理を行なおうとする場合には、先ずパートタイム労働者を先にして、その後フルタイムの労働者に及ぼすべきであって、パートタイム労働者を解雇する場合の理由は、フルタイムの労働者を解雇する場合に比較して相当軽減されるものであることを承認せざるを得ない」としています。
けれども、有期雇用のアルバイト・パートタイムについて、会社側から一方的に解雇して良いというわけでは決してなく、法律上、「やむを得ない事由がある場合でなければ」解雇できず(労働契約法17条)、判例上も、「理由がないのにこれを解雇することは、いわゆる解雇権の濫用との推定を受ける場合が生じてくることも否定できない」と言及しています。
また、正社員より労働時間は短いが、契約期間自体に定めがないアルバイトの場合、正社員と同様の解雇権法理が適用されます。
すなわち、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合の解雇は、無効となります。(労働契約法16条)
以上をまとめると、アルバイトであっても、正社員であっても、理由なく会社から一方的に解雇することは認められておらず、正社員の場合はアルバイトに比べて解雇要件が厳しくなるということです。
しかしながら、正社員に比べ、アルバイトの不当解雇が多くなるのは、会社側が、「アルバイトは正社員と雇用形態が違うので、いつでも自由に解雇してよい」と思い込んでいるケースがあるためです。
そのため、正当な理由のない解雇が発生しやすく、結果不当解雇にあいやすいのです。
正社員、アルバイト問わず、解雇は労働者の生活を脅かすものであるため、法律で、解雇の条件や手続き等様々な規定が設けられています。
特にアルバイトやパートタイムといった非正社員は、正社員と雇用形態が違うという理由から、待遇等に差が生じやすく、そういった不合理な差を禁止するため、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(通称:パートタイム・有期雇用労働法)」も制定されています。
そのような様々な法律がありながらも、解雇の条件を満たしていなかったり、手続き等の規定を会社が守らないまま一方的に解雇するケースが後を絶たず、それらを不当解雇といいます。
このような、法律に違反した解雇は、原則認められません。
それでは、解雇に関する法律上の規定を確認し、不当解雇に該当するかどうかをみていきましょう。
突然の解雇による労働者の困窮を防ぐため、解雇しようとする場合、30日前の予告又は予告手当の支払いを義務付けています。(労働基準法20条)
正社員だけでなく、アルバイトであっても、会社側はこの規定を守らなければなりません。
例えば、4月30日解雇の場合、会社は遅くとも3月31日に解雇予告をする必要があります。
この解雇予告は、書面だけでなく、口頭も認められています。
もし、それを待たず、3月31日に即日解雇となる場合は、会社は30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。
解雇予告と予告手当を合わせる形も認められており、例えば4月25日を解雇日として、3月31日に解雇予告をされた場合、短縮された5日分(4月26日~4月30日)について、会社は解雇予告手当を支払わなければなりません。
会社が行った解雇予告の日から解雇日までの期間が30日より短いのにも関わらず、解雇予告手当が支払われなかった場合、短くなった日数分の解雇予告手当を会社に請求することが可能です。
ただし、この規定には例外もあり、「天変地異その他やむを得ない事由」または「労働者の責に帰すべき事由」に該当する場合は、労働基準監督署の認定を受けたうえで、会社側からの即時解雇が認められます。
「労働者の責に帰すべき事由」とは、以下のようなものになります。
きわめて軽微なものを除き、社内での盗取、横領、障害等の刑法犯又はこれに類する行為を行った場合
賭博、風紀びん乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合
雇入れの際の重大な経歴の詐称
なお、この解雇予告が不要な労働者も存在し、対象は以下の通りです。(労働基準法21条)
日雇い労働者
2ヶ月以内の雇用契約労働者
季節的業務に従事し、4ヶ月以内の雇用契約労働者
入社して14日以内の試用期間中の労働者
アルバイト含む労働者にとって、就職等に困難が発生する一定の期間については、法律上で解雇を禁止しています。
それが、解雇制限です。
解雇制限は、以下の期間を指します。(労働基準法19条)
業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間およびその後30日間
産前産後の休業期間およびその後30日間(産前産後の休業期間とは、原則として、出産予定日以前6週間から出産日後8週間)
ただし、こちらも例外規定があり、「会社が打切補償を支払う場合」、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」は、解雇制限期間であっても、会社は労働者を解雇することができると定められています。
次のような理由の解雇は、法律上認められていません。
国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇(労働基準法3条)
労働基準監督署等に申告したことを理由とする解雇(労働基準法104条)
労働組合の組合員であることや、組合に加入したり組合を結成しようとしたこと等を理由とする解雇(労働組合法7条1項)
労働者が労働委員会に対し、不当労働行為の救済を申し立てたこと等を理由とする解雇(労働組合法7条4号)
性別を理由とする解雇(男女雇用機会均等法6条4項)
女性労働者が結婚したことを理由とする解雇(男女雇用機会均等法9条2項)
女性労働者が妊娠、出産したこと、産前産後休業を取得したこと等を理由とする解雇(男女雇用機会均等法9条3項)
育児休業の申出や取得を理由とする解雇(育児・介護休業法10条)
介護休業の申出や取得を理由とする解雇(育児・介護休業法16条)
労働者が労働基準監督署などに対し、会社の労働基準法違反や労働安全衛生法違反の事実を申告したことを理由とする解雇(労働基準法104条2項、労働安全衛生法97条2項)
労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたこと、又はあっせんを申請したことを理由とする解雇(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律4条3項、5条2項)
正社員に比べて、不当解雇にあいやすいアルバイト。
不当解雇にあった場合、どうするべきか、確認していきましょう。
不当解雇の場合、解雇として認められないため、退職する必要はありません。
会社によっては、不当解雇にも関わらず、自己都合退職にさせようと、退職届を書かせたり、同意書にサインさせようとすることもありますが、不当解雇であることを主張し、きっぱりと断りましょう。
話し合いもなく、「もう来なくていい」というような一方的な解雇をされた場合は、まずは解雇の手続き等が適法かどうかを確認しておくべきです。
前述したように、解雇は法律上様々な規定が設けられています。
それらの法律に抵触していないか、「アルバイトの不当解雇と法律上の規定」で紹介した内容をもとに、確認しましょう。
アルバイトであっても、「やむを得ない理由」がなければ、契約期間終了前の解雇は認められません。
無期雇用の場合の解雇であっても、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は認められません。
そのため、解雇理由をしっかり確認する必要があります。
確認方法は、解雇の理由等についての証明書(解雇理由証明書)を会社に請求することです。
解雇された労働者が解雇理由証明書を請求した場合、会社は遅滞なくこれを交付しなければなりません。(労働基準法22条2項)
解雇理由が明らかに不当である場合、解雇の有効性を争うことができます。
最終的に不当解雇を主張して、何かしらのアクションを起こしていくのなら、証拠の存在が重要になってきます。
以下のようなものを集めておきましょう。
解雇理由証明書
労働契約書
就業規則
タイムカード等の勤務時間記録
人事評価、賞与計算書など勤務成績に関する資料
解雇に関するやりとりをしたメールや音声データ
解雇が不当解雇かどうかは、様々な法律も絡んでくるため、簡単には判断できません。
そのような場合は、以下の相談先を頼ってみましょう。
労働基準監督署
労働組合
弁護士
繰り返しにはなりますが、アルバイトは、非正社員(非正規労働者)であり、終身雇用制のもとで雇用を保障されている正社員とは、雇用保障上の地位が基本的に異なっています。
けれども、雇用保障上の地位が正社員よりも低いからといって、アルバイトに対する理由のない一方的な解雇が認められているわけではありません。
しかしながら、この記事で、不当解雇にあいやすいのもアルバイトであることも説明しました。
もし、アルバイトの立場で解雇された場合、それが不当解雇であるかどうか、確認してみましょう。
不安な場合は、しかるべき相談窓口で相談してみることをお勧めします。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。