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能力不足による減給は無効?違法な減給処分を見分ける方法

更新日:

監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

  • 減給には懲戒処分や職位の変更、資格の引下げなどの種類がある
  • 能力不足による減給処分は原則として就業規則に根拠規定がなければ無効
  • 根拠規定があっても、人事権の濫用にあたる減給処分は無効

会社に勤める中で安定して給料が支払われることは、生活の基盤です。

それにも関わらず、突然、能力不足を理由に給料が減給されたら、あなたはどうしますか。

誰にでもミスや不得意分野はあるものです。会社からの一方的な減給は人事権の濫用にあたる場合があり、違法な処分の可能性があります。

この記事では、違法な減給処分とはどのようなものかを解説します。

減給処分の理由と根拠

会社が減給という処分を課すには相応の理由とともに、会社の就業規則等で処分の根拠が定められている必要があります。

ここでは減給処分の根拠として「懲戒処分」「職位の変更」「資格の変更」の3つの種類に分けて、処分の有効性を確認するポイントをまとめます。

懲戒処分としての減給

懲戒処分とは企業秩序に違反する行為を行った労働者に対して、会社が行う処分を指します。

例えば、無断欠勤を繰り返す、個人情報を漏洩する、法令違反を犯すなどした社員に対する処分が想定されます。

懲戒処分の種類には、減給の他、戒告(注意)、出勤停止、降格、懲戒解雇などの処分が規定されることが一般的です。

このような懲戒処分を行うには、会社があらかじめその種類や処分の程度を就業規則で定めている必要があります。

会社が能力不足を理由に懲戒処分としての減給を行うことは可能かというと、法令上無効とされる場合がほとんどと考えられます。

能力不足というのは、会社側の労働者に対する評価であり、企業秩序に違反する行為とは別の範疇になります。

また、懲戒処分を行ううえでは就業規則に定める懲戒の事由に該当することを客観的に確認できる根拠があるか、就業規則で懲戒処分に係る手続きを定めている場合はその手続きを経ているかなど、懲戒権の濫用とならないよう会社には厳密な運用が求められます。

その他、減給処分の程度については、1つの事案における減給額は平均賃金の1日分の半額以下、減給の総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1以下でなければならないと定められています(労働基準法第91条)。

このように懲戒処分は非常に厳格に運用されるべきものであるため、もし能力不足による懲戒処分だと言われた場合はその処分の有効性を確認すべきでしょう。

職位の降格に伴う減給

職位の降格とは、例えば部長を課長にする、チーフを平社員にするなど下の役職に変更することです。

大抵の会社では、役職に応じた給料が設定されており、役職が下がれば給料も下がる場合がほとんどです。

このような職位の変更については、一般的には会社の持つ人事権として広く認めらるものとされています。

従って懲戒処分のように就業規則にあらかじめ定めが無くとも、会社が能力不足を理由に職位の変更を命じることは、原則としては可能です。

しかし、その降格が人事権の濫用と考えられる場合は無効とされる場合があります。

あくまで職位の変更は、業務上の必要性や労働者の能力・適正、組織上の必要性などによって命じられるべきものです。

正当な理由なく恣意的に行われたもの、仕事がほとんどないポストに変更してその後の退職勧奨を目的とするものなどは無効とされます。

もとよりその職位に任命したのも会社な訳ですから、能力不足を理由とするのであれば、その職位に求められる能力がどのようなもので、足りていないとされる能力が何なのか、具体的な説明がなければ恣意的な人事である可能性があります。

職位の降格を命じられることは業務上・組織上の必要性があれば一般的には会社の人事権の範囲内とされていますが、特に能力不足を理由とする場合には、懲戒処分と同様、降格を命じられた理由の説明を求め、正当な人事権の行使にあたるか確認する必要があります。

資格の引下げとしての減給

同じ役職であっても、経験の長さや過去の実績等から、一人一人給料の額は違っていて、その違いを表すのに「主任1級、主任2級」など級やグレードといった等級を用いている場合があります。

このような仕組みを職能資格制度と呼び、〇級にあたる部分は資格と呼ばれます。

能力不足等を理由に役職は変えず、この資格を下げて減給処分を行う場合、職位の変更と異なり、労働者の同意または就業規則上の明確な根拠規定が必要とされています。

職能資格の変更による減給の適否について争われた裁判(平成8年12月11日、アーク証券事件)では、従業員の職能給の減給を行う場合には就業規則や労働協約等に明確な根拠規定が必要とする判例が出されました。

また、仮に就業規則等に根拠がある場合においても、職位の変更同様、人事権の濫用と認められる場合は無効です。

能力不足を理由とする減給が有効とされるには、その前提として労働者に対する指導や教育の機会を会社が与えていたかどうかもポイントとなります。

適正な業務上の指導・指示や研修の機会等を与えられないことによって生じているものであれば、それを本人の責任として減給処分を課すのは不適当と言えます。

仮に自分の業務がうまくいっていないとしても、他に同程度の仕事をしている従業員が処分されず、自分だけが減給を受けるというような場合も恣意的な人事権の濫用と言えるでしょう。

減給処分は労働者にとっては非常に重い処分です。単に能力不足というだけでなく、これまでの指導の有無や他の従業員との違いといった背景も含めて、具体的な減給の理由について会社に説明を求めるようにしましょう。

職位や給料をあらかじめ定めた労働契約の場合、減給が無効となる可能性も

特定の資格や経験を持った人を経験者採用として雇用するケースでは、採用時に労働条件に職位や給料については個別に契約している場合があります。

例えば1年間プロジェクトリーダーとして年俸600万円の条件で採用されたにも関わらず、途中でプロジェクトリーダーを解任され、さらには年俸額も下がるという場合は、仮に他の一般の従業員であれば就業規則で職位の降格が規定されているとしても、個人の結んだ労働契約の条件より不利益な措置は無効とされます。

特に中途採用者やあらかじめ雇用期間や給料の交渉をして採用された人は、雇用期間中に労働条件が不利に変更される場合それが有効かどうか、就業規則のほか、当初の労働条件でどのように説明されていたかも併せて確認してみましょう。

減給処分を伝えられたら確認すべきこと

以上の通り、減給処分は十分な根拠と理由をもって行われる必要があります。

根拠や具体的な理由の説明がなく、単に能力不足としての減給が会社の一方的な評価により行われたものであれば、その処分は無効となる可能性が高くなります。

減給処分を伝えられた場合に労働者側はどのような行動をとるべきかまとめます。

会社の就業規則を確認する

原則として、処分を行うためには就業規則にその根拠規定が定められている必要があります。

まずは会社の就業規則に「懲戒処分」「降格」「減給」に関連する規定があるかどうか確認しましょう。

労働基準法第106条では「使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」と定めているため、就業規則が確認できる場所にない場合はその時点で法令違反です。

また、「就業規則」という名称を使わず、「減給規程」「懲戒処分基準」などの名称で規程化されている場合があります。

名称に関わらず、労働条件に関する規定は就業規則の一部と解されますので、閲覧できる規程はすべて確認しておきましょう。

処分の理由と根拠の説明を求める

会社や上司から減給処分を言い渡されたら、どうして減給処分なのか説明を求めましょう。

能力不足、という説明だけでなく、具体的に業務上のどのような場面での行いに対する処分か説明を求めましょう。

また、減給の根拠として就業規則のどの部分が適用されたのかも確認しましょう。

仮に懲戒処分により減給とする、と書面による説明があっても、就業規則で懲戒処分に関する定めが無ければその処分自体が無効となる可能性があります。

特に能力不足については、会社や上司が適切な指示や指導を行ってきたのかも重要なポイントです。

本人の適正や処理能力を大幅に超える業務を日常的に命じて、それをこなせないから能力不足、というのは会社側にもおおいに問題があると言えます。

また、営業成績の悪化等を理由に能力不足であるという説明を受けた場合は、過去に同等の営業成績であった他の従業員が同様の処分を受けていたか、営業成績の悪化が個人の責任ではなく社会経済の悪化等の要因が無いかなど、特定の個人を減給するのに相応な理由が無ければ無効となる可能性があります。

会社の説明に根拠や納得できる理由が無ければ、その減給は無効である可能性があり、処分の取り消しや減額された給料を請求することができます。

労働基準監督署や労働組合、弁護士などにどのように対応すれば良いかを相談してみるとよいでしょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。