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この記事でわかること
会社員であれば日々残業をしている方が多く、長時間の残業を余儀なくされている方も少なくないのではないでしょうか。
残業時間には、特別な事情があっても超えてはならない上限があります。
しかし、法律を理解せずに社員を働かせる会社もあるので注意が必要です。
違法な長時間残業をさせられているならば、自身の健康を守るために行動を起こさなければなりません。
今回は、残業時間の上限規制や、違法な長時間残業を強いられている場合の対処法を解説します。
目次
働き方改革の推進により、労働時間や賃金などに関する新しい制度が導入されました。
時間外労働の上限規制に焦点を当てて解説しますので、旧制度との違いを正しく理解しましょう。
2019年から実施されている働き方改革は、日本の人口減少による労働力不足の問題を解決するための施策です。
働き手を増やし、仕事の生産性を高められるよう、法令の整備が行われます。
以下の3つが働き方改革の重要な柱です。
①長時間労働の是正
②正規雇用と非正規雇用の待遇差解消
③多様な働き方の実現
①の施策として労働基準法が改正され、時間外労働の時間数に上限が設けられました。
長時間残業が減少することにより、ワークライフバランスの改善が見込まれています。
36(サブロク)協定は、社員に法定労働時間を超えて働かせる場合に労働基準法36条に基づき労使間で締結します。
従業員に1日8時間または週40時間超の労働をさせるなら、会社は労働基準監督署へ届け出なければなりません。
届出されれば原則月45時間かつ年360時間まで、法定労働時間外の労働を命じることができます。
36協定の届出がされていない時間外労働は法律違反です。
しかし、届出しなければならないことを知らない企業もあり、届出せずに残業させているケースもあります。
法改正前の時間外労働の時間数は、厚生労働大臣の告示で基準が定められていました。
そのため、月45時間や年360時間という上限を超えた場合は行政指導の対象になりますが、罰則はありません。
また、36協定には特別条項があり、突発的な事情が発生した場合は年間6回まで上限を超えられます(労働基準法36条第5項)。
特別条項を適用した場合の時間数には上限がなく、無制限に残業できる制度でした。
旧制度では、際限なく働かされる状況がなくならないことが問題視されていました。
仕事と家庭の両立ができないだけでなく、過労死やうつ病などの原因でもあると考えられ、その後の上限規制の導入に至ります。
時間外労働の上限規制が導入されることにより、労働環境の改善が見込まれています。
新しい制度がどのような内容なのか確認しましょう。
時間外労働の上限規制の導入時期は、大企業と中小企業で異なります。
大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から適用されました。
どちらに該当するかは資本金や労働者数で決まります。
例えば、小売業で中小企業に該当するのは以下のいずれかを満たす場合です。
かつては法律に時間外労働の時間数の上限は明示されていませんでした。
働き方改革による労働基準法改正で、月45時間かつ年360時間が上限である旨が明記されています。
また、特例条項を適用した場合の上限規制についても、以下のとおり定められました。
特別条項は予想することが難しい業務量の増加があり、一時的に限度を超えて労働させざるを得ない場合のみ付けられます。
「今月はたぶん忙しくなるから」のような曖昧な理由で36協定に特別条項を付けることはできません。
時間外労働の上限が明示されただけでなく、罰則も設けられました。
上限の時間数を超えて従業員を働かせた使用者への罰則は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
かつては行政指導が入るだけでしたが、具体的な罰則が設けられることで長時間残業の減少が見込まれています。
管理監督者は会社内の管理職のうち、会社の経営に関与する立場にあり労働基準法の一部が適用されない者を指します。
管理監督者は時間外労働の上限規制の対象外ですが、長時間労働による健康被害を防ぐ配慮が必要です。
そこで、働き方改革の一環として労働安全衛生法が改正され、管理監督者についても労働時間を把握することが義務付けられました(労働安全衛生法66条の8の3)。
また、長時間の時間外労働を行った場合は、医師の面接指導が実施されなければなりません。
法改正前は月100時間を超えた従業員が面接指導の対象でしたが、改正後は管理監督者も含め月80時間を超えた場合に対象になります。
なお、管理監督者以外の管理職は時間外労働の上限規制の対象です。
時間外労働の上限規制には例外があります。
以下の業種は当面の間、上限規制が適用されません。
猶予期間は5年のため、2024年4月以降、規制が導入される見込みです。
ただし、他の業種とは異なる取り扱いになる可能性があります。
また、新技術・新商品等の研究開発業務は上限規制の対象外です。
長時間の残業が常態化している企業に勤めているなら、違法な労働をさせられていないか確認してみましょう。
違法な長時間労働をさせられていると分かった場合、どのように対処すればよいか解説します。
時間外労働と残業は同じものと考えられることが多いですが、実際には異なる概念です。
残業は企業の所定労働時間外の労働ですが、時間外労働は法定労働時間を超えた労働を意味します。
例えば、所定労働時間が7時間の会社では、定時からの1時間は時間外労働には該当しません。
違法性を確かめるには、毎月どれだけの時間外労働をしたかの確認が必要です。
例えば、特別条項付きの36協定が締結されており、4月に83時間、5月に76時間、6月に84時間の時間外労働があったとします。
1ヶ月あたりの上限である100時間には収まっていますが、3ヶ月間の平均は81時間となり、80時間を超えているため違法です。
上限の時間数を超えて働くことは法律違反であると同時に、健康面でのリスクが大きな状態です。
そのため、早急に状況を改善してもらえるよう、社内の健康相談窓口に相談しましょう。
ただし、具体的な対策を講じてくれないケースも多く、相談しても解決しなければ外部の機関に相談するしかありません。
会社の窓口に相談しても状況が変わらなければ、労働基準監督署に通報しましょう。
労基署に動いてもらうためには、会社の法律違反を証明できる資料を揃える必要があります。
就業規則や勤怠の記録はもちろん、残業の指示を受けた時のメールやメモも用意できるとよいでしょう。
労働問題に精通した弁護士に相談するのもおすすめです。
弁護士は依頼者に代わって会社との交渉から訴訟まで行ってくれます。
解決に向かう可能性が高い手段ですが、弁護士費用が必要になることを踏まえて相談しましょう。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。