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これは労災保険の対象?

更新日:

監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

  • 労災の対象は「業務災害」または「通勤災害」
  • 業務災害と認められるには業務遂行性と業務起因性の観点から緻密な総合考慮が必要
  • 特に心臓病や鬱病など業務起因か労働者の基礎疾患なのか不明な場合が多くよく争いになる

労働はその対価に金銭を受け取る生活のために必要不可欠と言っても過言ではない存在です。その反面危険な職業があるのも事実。また危険でない職業であっても日々の通勤、業務による移動中など職務に付随する形で何らかの事故が起こる場合も少なくありません。

そのような業務関連の事故や損害に配慮されて制定されている制度が労災保険制度です。一定の金銭を使用者から毎月徴収する代わりに何らかの労災が起こった時には使用者に代わってその損害を補償してくれます。

もっとも、同制度については利用することが少なく、制度内容を全く知らないという方も多いと思います。

そこで本記事では労災保険制度についてその概要を説明するとともに労災が認められない場合について説明していきます。

労災保険制度とは

まずは前提として、そもそも労災保険制度はどのようなものなのか、そしてなぜそのような制度があるのかについて説明していきます。

基本的に強制加入

現在労災保険制度は労働者を使用する全ての事業主が強制的に参加させられています。(労災保険法3条1項)

仕組みとしては通常の保険制度と似たようなもので、事業主から従業員に支払った賃金総額から一定の割合(労災保険料徴収法11条、12条の2、同施行規則別表第一)を徴収し、労災が起こった場合に被災者が労働基準監督署長に保険給付の申請を行い、これに対し同署長が保険支払いの決定をすれば、労災によって生じた損害を保険金の支払いにより補償できるというものです。

このような保険制度を国(政府)がすることにはかなりのメリットがあります。

メリット①手厚い補償

メリットの一つとして労働者が様々な煩雑さを回避できることが挙げられます。

労災保険がない状態だと労災が起こった場合、被災者は使用者に対して不法行為(民法709条)や安全配慮義務違反(民法415条1項)を主張し使用者に訴訟等を提起する必要があります。

この場合被災者(労働者)は使用者の故意や過失、損害の発生や因果関係など様々な立証をする必要がありますが、特に使用者の故意過失は立証困難な場合が多いです。

そこで労災保険は使用者の故意過失の有無にかかわらず、被災者に何らかの損害が生じれば補償を受けられます。

この点も大きなメリットの一つです。

メリット②使用者無資力リスクの回避

労災保険がないと仮に使用者が完全に悪い場合であっても、使用者の資力がない(倒産直前など)場合には被災者は使用者から大した金銭を回収できなくなります。

労災保険は金銭の支払主が国なので無資力の恐れはなく、この点もメリットとして挙げられます。

労災保険が認められるには

それでは労災保険が認められるには最低限度のような条件が必要かを説明していきます。

労災保険の対象は「業務災害」または「通勤災害」

労災保険が支払われるには、対象となる事故が「業務災害」または「通勤災害」である必要があります。

この「業務災害」「通勤災害」は様々な要素を総合考慮する必要があります。

詳しくは後述しますが、例えば飲み会の帰りに事故にあったAさんについて、その飲み会が会社の忘年会などであった場合には通勤災害が認められる可能性があり、対してその飲み会が会社の同僚との個人的な飲み会だった場合には通勤災害は認められにくくなります。

業務災害とは

業務災害とは「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」(労災保険法7条1項1号)とされていますがこれだけでは何が業務上なのかが不明です。

そこで判例上、「業務上」であることを示すためには、①そもそも原因となった行為等が「業務」本体のものといえるか(業務遂行性)、②次に業務「上の」災害といえるか(業務起因性)という2つの条件を満たしていることが必要となります。

判例には会社の納会で発生した急性アルコール中毒について、納会の目的に照らして同目的を逸脱した過度の飲酒として、業務起因性を否定したものがあります。

「通勤災害」とは

通勤災害とは「労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」(労災保険法7条1項3号)とされていますが、これについても上の業務災害同様、何が「通勤による」といえるのかあいまいな場面も存在します。

ここで「通勤」とは住居と就業場所の往復のみならず、兼業労働者の就業場所間の移動など労働者の拠点間を合理的な経路と方法で移動する場合を指します。

この合理性や通勤の態様や方法など様々な要素が考慮されますが、例えば労働者が職場から家までの帰路で、友達の家を経由して遅くに帰っているときに事故にあったような場合「通勤」は認定されにくくなります。

様々な要素の総合考慮が不可欠

先にも述べましたが、この「業務」や「通勤」の判断は様々な要素の考慮が不可欠で、宴会の目的や参加強制の有無、通勤の経路や方法などで結論が変わってしまう(業務性や通勤性が否定され保険が給付されない)場合が大いにあり得ます。

いわゆる「職業病」の場合

さらに複雑かつ難解な場合として、脳梗塞や心筋梗塞、高血圧などの持病とも解しうる病気により労働者が死亡または障害等を負った場合が挙げられます。

ここではこのような「職業病」について業務性を判断する要素について説明していきます。

「業務起因性」が認められるか

このようなじわじわと悪性を高めていく疾病は、何かしらの業務単体でなるものではなく個人の基礎疾患も大きく影響してきます。

そこで職業病が業務災害と認められるには、「業務起因性」の要素が特に重要になります。

判例としては職業病による災害と認められるには「業務による過重な負荷が、、労働者の基礎疾患をその自然の経過を超えて悪化させ、発症に至ったと認められる」場合、業務起因性を肯定できるとしています。

「基礎疾患を自然の経過を超えて悪化させ」る要素

業務が「基礎疾患を自然の経過を超えて悪化させ」たことそれ自体の証明は非常に難しいです。そこで裁判などではそれを推認させる事情が災害発生時付近に存在したかを考慮する場合が多いです。

例えば発症前に残業を月100時間したとか、過度のストレスを与えるような出来事があったとかそのような事情が考慮されることになります。

労災が認められない場合

最後に労災保険が認められない場合についてまとめていきます。

①通勤災害とも業務災害とも認められない

まずは上記にあげた要素を考慮して、通勤性や業務性が否定され通勤災害とも業務災害とも認められない場合です。

これは当然です。

②既に訴訟等で使用者から金銭を受け取っている場合

これは労災が認められないというより、労災保険が一部または全部下りなくなるというのが正しい表現です。

すなわち、あくまでも労災保険制度が被災者の補償という観点から成り立っているものなので、既に訴訟で使用者から金銭を受け取っていた場合は、政府はその限度で保険給付しないことができます。(労災保険法12条の4第2項)

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。