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リストラ目的の転勤は違法|パワハラにあたる場合も

更新日:

監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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この記事でわかること

  • 転勤命令がリストラの一環として行われることがある
  • リストラ目的の違法な転勤命令は無効であり拒否できる
  • 違法な転勤命令を受けた場合は拒否する旨を伝えて外部に相談すべき

転勤は働く環境に大きな変化をもたらし、場合によっては労働者の大きな負担となります。

特に、それが今まで経験したことのない業務への変更を伴うものであったり、待遇が悪くなったりするときにはなおさらです。

また、人員整理の必要に迫られた会社が、リストラの一環として転勤を命じることもあります。

そのような転勤命令でも従わなければならないのでしょうか。

この記事では、リストラを目的とした転勤命令が違法となる要件や、そのような転勤命令への対処法を解説します。

リストラ本来の意味と転勤との関係

リストラに関係した転勤命令が、すべて違法というわけではありません。

そのため、まずは、リストラと転勤の関係について解説し、転勤命令が違法となる要件も確認します。

そもそもリストラって?

経営難に直面した企業がコスト削減のために解雇や退職勧奨を行うことが目立ったため、リストラ=人員削減というイメージが浸透しています。

ですが、リストラとは「リストラクチャリング」の略語で、もともとは事業の再構築全般を指す言葉です。

そのため、リストラには、人員削減に限らず、事業内容の変更や組織再編など幅広い内容が含まれます。

転勤も場合によってはリストラの一部

本来の意味でリストラを捉えると、転勤もその一部として行われることがあります。

例えば、既存事業の縮小と新規事業への参入を行う事業内容の変更の場合、縮小する事業の人員を他の事業に移すため、異動や転勤が行われます。また、本社や事業所を移転する場合にも転勤は生じます。

これらは、事業再構築の手段として経営上の必要性から行われるもので、転勤がリストラの手段として行われているということになります。

転勤命令が違法となるのはどんなとき?

そのような転勤命令が違法と判断されることは多くありません。

なぜなら、会社からの転勤命令が違法となる要件は、判例や法律などによって次の4パターンとされているからです(労働契約法3条5項参照)。

①就業規則や個別の契約によって「転勤をしない」旨が定められている場合

②業務上の必要性がない場合

③業務上の必要性はあっても、不当な動機・目的をもってされた場合

④業務上の必要性に比べて、労働者の職業上・生活上の不利益が著しく

 大きい場合

このうち、①は、例えば最近増えてきた「勤務地限定正社員」のような場合が典型例です。個別の契約書や就業規則中に「転勤なし」という旨が定められていないか確認してください。

①のような定めがある場合、会社はその労働者をそもそも転勤させることができません。そのため、事業再構築の必要があったとしても転勤命令は違法となります。

もっとも、事業の再構築が行われる場合というのはいわばイレギュラーな事態ですから、勤務地が限定されている労働者に対しても、会社側が転勤の同意を得ようとすることが通常です。

また、①とは少し異なり、②〜④は「転勤を命じることはできるが、その転勤命令が濫用にあたり許されない場合」です(労働契約法3条5項)。

ただ、これらにある「業務上の必要性」として、あまり高度な内容は求められていません。「転勤命令の対象となった労働者個人以外に候補者がいない」ということまでは必要なく、「労働力の適正配分」「業務運営の円滑化」といった抽象的な理由で構わないとされています。

また、④の「労働者の職業上・生活上の不利益」はかなり深刻なものでないと「著しく大きい」とは認められない傾向にあります。

裁判例では、徘徊が心配される母を持つ労働者に対する遠隔地(関西から関東)への転勤命令を違法と判断したものがあります(ネスレ日本事件大阪高判平成18年4月14日)。

しかし、単身赴任や通勤時間の長時間化による育児への支障などは「著しく大きい」とまでは判断されにくいのが現状です。

以上のような事情から、事業の再構築という経営上の必要性がある場合には、転勤命令が違法となることはあまりないと考えられます。

リストラ目的の転勤とは?拒否できる?

では、本来の意味ではなく、リストラを解雇や退職勧奨のような人員削減と捉える場合はどうでしょうか。

この場合、転勤は直接関係しないように思われます。

しかし、退職勧奨を拒否した労働者に対して受け入れ難い転勤を命令し、退職に追い込むような悪質な例もあります。

そのような転勤命令の違法性について解説します。

自主退職に追い込むための転勤命令は違法

退職勧奨とは、「退職を検討してくれないか。」というような形で従業員の自主的な退職を促すものです。

解雇のように会社が一方的に辞めさせるというものではなく、法的にも強制力はありません。そのため、労働者は退職勧奨を拒否して働き続けることができます。

会社としては「辞めてもらいたい」と考えているわけなので、拒否した労働者に対して自主的に退職させるような対応をとることがあります。いわゆる「追い出し部屋」などと呼ばれるものはその一例です。

転勤命令もその手段として用いられることがあります。退職勧奨を拒否した労働者に対し、遠方への転勤や待遇の低下を伴う転勤といった不利益が大きい転勤命令を出し、自主退職に追い込むといったものです。

先の通り、労働者の不利益が大きいだけでは転勤命令は違法と認められにくい傾向にあります。

しかし、このような転勤命令は、退職勧奨に応じなかった労働者を退職させるために行っているのであり、②の業務上の必要性がない場合、あるいは③の不当な動機・目的をもってされた場合に該当します。

そうなると、その転勤命令は違法と判断されます。

ここから先の解説では、このような、真の目的が人員削減にある転勤命令のことを「リストラ目的の転勤(命令)」と呼ぶことにします。

リストラ目的の転勤命令は拒否できる|パワハラにも該当し得る

リストラ目的の違法な転勤命令は法律的に無効であり、労働者は従う必要がありません。つまり、拒否しても構わないということです。

それだけでなく、業務上の必要性のない転勤命令はパワハラにも当たり得ます。

パワハラは、a職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、b業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、c労働者の就業環境が害されるものと定義されています(労働施策総合推進法30条の2第1項)。

自主退職に追い込むための転勤命令は、会社からの命令という点でaに該当し、業務上の必要性のない不当な動機という点でbにも該当します。また、そのような転勤命令を出された労働者は精神的なダメージを受け、能力の発揮に支障が出るといえます(c)。

パワハラ被害に対して法的に労働者が取り得る手段の典型は、会社や加害者への損害賠償請求です。リストラ目的の転勤に対しても同様に、慰謝料等の損害賠償請求が認められる可能性があります。

リストラ目的の転勤が疑われる場合の対応方法

違法な転勤命令を法律的には拒否できるとしても、違法かどうかの判断がその場でできるとは限りませんし、実際に拒否して現在の勤務場所で働き続けることも容易ではありません。

そのため、転勤命令がリストラ目的ではないかと疑われる場合に、実際にどのように対応すべきか解説します。

リストラ目的が疑われる例

そもそも、自分が命じられた転勤がリストラ目的かどうかを、どのようにして判断すればいいのでしょうか。

転勤命令の目的がどこにあるのかは、会社側しか知り得ません。通常の転勤命令であれば、対象となる労働者に対し会社側の考えが説明されることも多くありますが、リストラ目的の場合に真の目的が説明されることはまずありません。

そこで、転勤命令の内容や状況から推し量ることになります。

先ほど挙げた、退職勧奨を拒否した後に転勤を命じられる場合や待遇の低下を伴う転勤命令はその典型例といえます。

また、経営状況が悪化しているかどうかに関係なく、畑違いの職種への異動と合わせて行われたり、ほとんど異動が行われていない遠方の勤務地への転勤だったり、全社の異動のタイミングから外れて命じられたりといった場合にも、経営上の理由ではない別の目的が疑われます。

もっとも、これらは、本当に経営上の理由に基づいていることも多くあります。そのため、納得できない場合や疑問に思う場合には、まず会社側に「なぜ自分なのか」「なぜこのような転勤命令の内容なのか」を尋ねることが重要といえます。

転勤を承諾していない旨を伝え、外部に相談する

その説明を受けてもなお疑問が解消されない場合や、不利益が大きく受け入れられない場合などは、会社と交渉することも1つの手ではありますが、外部への相談も検討する必要があります。

しかし、そのようにしている間に転勤命令の期日が来てしまえば、形式的には従わなければなりません。

そのため、まずは転勤命令を承諾していない旨をはっきりと伝えることが重要です。

そのうえで、できる限り早く外部に相談しましょう。

相談先としては、行政機関であれば、各都道府県労働局や労働基準監督署に設けられている「総合労働相談センター」が適しているでしょう。

これは労働トラブルをワンストップで相談できる窓口であり、転勤など人事に関する相談ももちろん可能です。

ただし、転勤や配置転換といった人事の問題は、行政機関が具体的な行動を取りにくい分野です。人事は基本的に会社の裁量であり、それに関する問題は最終的に裁判等で解決すべきという姿勢だからです。

そこで、弁護士や労働組合といった先への相談が考えられます。

特に、リストラ目的の転勤命令について、その違法性だけでなく、転勤命令の無効や損害賠償請求を検討する場合は弁護士への相談が望ましいと言えるでしょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。