失業保険は内定があっても受給できる?内定の状況別に解説

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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解雇などによって突然職を失う場合はもちろんのこと、自らの意思で退職する場合でも、経済的な不安はつきものです。

会社を退職した後、失業保険を利用する方も多くいますが、転職の場合、在職中に他企業の内定が出ていることが一般的です。
このような場合でも失業保険が受給できるものなのでしょうか。

また、次の就職先が決まっておらず、退職してから内定を得た場合、失業保険を最大限受給するためにはどのような手続きが必要なのか、知っておく必要もあるでしょう。

この記事では、この2点について、内定が失業保険の受給にどのように影響するかを解説します。

そもそも失業保険とは?内定の意味も解説

失業保険は「就職が決まっていると受給されないもの」であるということについて、まずは確認しておかなければなりません。

結論から言ってしまうと、原則として、内定が出ている場合には失業保険をもらえないケースが多いです。
しかし、内定の状況などによっては失業保険が給付されるケースもあります。

もっとも、就職が決まっているといえるかどうかは、単に内定があるかどうかだけで判断されるわけではありません。
まずは失業保険とはそもそも何なのかを確認し、その上で、失業保険と内定の関係について解説します。

失業保険は働ける状態なのに仕事に就けない人のための保険

失業保険という言葉は法律上のものではないため、いろいろな意味で用いられているようです。

一般的には、「会社を辞めたあと、次の就職先が決まるまで受給することができるもの」を指して使われており、そのような給付は法律的に「基本手当」と呼ばれます。

この記事でも、失業保険という言葉を基本手当を意味するものとして使います。

この失業保険は、労働者が失業した際のセーフティーネットであるため、失業状態にない場合は受給できません。

そして、失業状態とは「労働の意思および能力を有しているにもかかわらず、職業に就くことができない状態」だとされています。

つまり、「働ける状態なのに職がないこと」が失業ということになります。

失業保険の手続き|受給資格と失業の認定

失業保険を受給するためには、窓口であるハローワークに、失業状態であることを認定してもらう必要があります。

その認定には大きく2つの段階があります。

  1. 受給資格の決定
    「雇用保険の資格を失っているかどうか」「労働の意思および能力を有しているにもかかわらず、職業に就くことができない状態かどうか」「雇用保険に加入していた期間の長さ」という3点から、受給資格を満たしているかどうかが審査される。
  2. 失業認定
    4週間ごとに、その4週間の間が失業状態だったかどうかを判定

この両方において失業状態だと認定されれば、失業保険が支払われます。

このような手続きを経て失業保険が支払われるため、失業保険は、4週間ごとに後払いで支払われるイメージということになります。

内定と失業保険の関係は?

内定があっても失業保険がもらえるかどうかは、この②「失業認定」をクリアできるかどうかにかかっています。

そこで、まず、内定の法律的な意味を確認しますが、実は、内定に法律上の定義はありません。

一般的には、正式な決定あるいは公式の発表前に内々で決まることを意味し、求職活動以外の分野でも言葉自体は使われています。

求職活動との関係で扱われるのは主に、採用内定と呼ばれるもので、「実際に働き始める日(入社日)より前に、求人の応募者に対して会社側が採用の決定を通知すること」という意味合いです。

会社は採用を決定しているため、応募者が内定を辞退するか、内定取消しとならない限り、入社日から働き始めることができます。そのため、一般的には、内定が出るとその時点で会社と応募者との間に労働契約が締結されたと判断されます。

失業保険との関係では、内定が出た時点で「職に就いた」ことになり、失業と認定されない(②がクリアできない)のではないかとの懸念が生じます。

実態としては、内定が出ている多くのケースでは、失業と認定されません。
しかし、すべての内定について無条件に「職に就いている」と判定されるわけではありません。

次の章から、内定ありのときの失業保険の仕組みについてくわしく見ていきましょう。

内定をもらってから退職すると失業保険はもらえない?

まず前提として、実際に会社に就労し働き始めた段階では「職に就いた」と判断され、失業状態ではなくなります。
失業保険は失業状態にある人に給付されるものですから、当然、「職に就いている」状態では、失業保険はもらえません。

一方、内定の場合は、内定が出てもすぐに働き始めるわけではなく、入社日まで期間があります。内定をもらってから実際に働き始めるまでの期間についても「職に就いた」と判断されるのでしょうか。

まずは、転職の際に多い、「内定が出てから現職を退職する場合」について解説します。

失業保険は就職すると受給できなくなる

確認となりますが、失業保険は「職に就いた」と判断されるときには受けとることができません。

「職に就いた」といえる典型は、会社への就職が決まる、つまり労働者として働くことが決まる場合です。またそれ以外にも、自営業を開始した場合や会社の役員に就任した場合なども該当します。

加えて、働ける状態ではないと判断されるような場合にも失業保険は受けられません。
例えば、会社を辞めて学業に専念する(学生になる)場合や、しばらく家事に専念する場合などです。

以上のような場合、基本的には失業保険は受給できません。しかし、働ける状態かどうか、職に就いたといえるかどうかの判断はある程度幅のあるものです。

内定についても同様で、すべての内定が「職に就いた」とされるわけではありません。内定が出たタイミングや労働者が希望する条件などをもとに、最終的には失業保険の窓口であるハローワークが判断します。

失業保険の手続き前に内定が出ている場合

原則的に言って、現職在職中に他企業の内定が出てから退職したという場合、失業保険の受給はできない可能性が非常に高いと言えます。

現職在職中に内定があるパターンの典型は、在職中に転職活動を行い、1つ以上の会社から採用決定(内定)があったというものでしょう。この場合、現職を退職し次の会社で働き始めるまでの期間が内定状態ということになります。
仮に複数の会社から内定が出ていたとしても、退職日までには次に勤める会社を決めていることが一般的です。

そうなると、内定とはいえ、退職日時点ですでに次の就職先は決まっているということになります。

この場合、先の②「失業認定」の条件には該当せず、失業とは判断されません。したがって、受給資格がないという決定になり、失業保険が受けられないということになります。

内定は出たが就職先を決めていない場合

複数内定がある場合で退職日時点ではまだどの会社に入社するか決めていないと言った場合や、あるいは内定は出ていてもより良い会社への就職を目指してまだ求職活動を続けるといった場合も考えられます。

これらであれば、就職先が決まっているとは言い切れない面もあり、受給資格ありと決定される可能性もあります。ただし、あくまで「可能性がある」という程度の話であり、実際に今の会社を退職するわけですから内定先に就職する意思が低いとまでは言い難い状況であり、失業認定を受けられない場合もあります。

例えば、内定後に内定先の態度が豹変して印象が変わった、面接で差別的な質問をされた、といったような「内定を受け入れないのも仕方がない」と考えられる特殊な事情がある場合には受給資格ありと判断される可能性は高まります。
しかしこのような事情が無いような場合には、「失業認定」の条件をクリアすることは難しいと思われます。

この判断は、先の通りハローワークが行うことになるため、内定がある状態で退職をする場合で、かつ失業保険を受給したい場合には、所轄のハローワークに相談することをお勧めします。

なお、内定があることを隠して失業保険の手続きを行うと、不正受給としてペナルティを受ける可能性もあります。不正受給と判断されると、受給した失業保険の返還に加え、最大で受給額の2倍の納付を命じられることもあります(いわゆる3倍返し)。くれぐれも注意してください。

失業保険を受給している間に内定が出たらどうなる?

以上とは異なり、次の就職先が決まっていない状態で退職した場合、基本的には、受給資格の審査において「失業認定」が問題となることはありません。

そのため、いったんは失業保険が受けられることとなります。

退職後、失業保険を受けている間に内定先が決まった場合、失業保険はいつまで受給できるのでしょうか。
最後に、失業保険を受けている間に内定が決まった場合の手続きを解説します。

内定先への入社を決めた場合

内定が出てその内定先への入社を決めれば、内定取消しとならない限り、入社日から実際に就労を開始することになります。

入社日時点ではもちろん失業状態ではありませんので、失業保険は打ち切られることになります。では、内定から入社日までの間の期間はどうなるのかというと、内定後、入社日の前日までは基本的に失業保険を受給できます。

ただ、先の通り失業保険は後払いです。しかも、失業認定は4週間ごとに行われるため、入社日以降に失業認定のタイミングが来ることがあります。
失業認定は自らハローワークに赴いて受ける必要があるため、4週間ごとの期日を愚直に守って、実際の入社日以降に失業認定を受けに行くと、内定から入社日までの失業保険を受けられない可能性も出てきます。

そのため、内定が決まった場合は、4週間ごとのタイミングにあわせるのではなく、「入社日(就職日)の前日」にハローワークに行き失業認定を受けることになっています。

内定が出てもまだ就職活動を続ける場合

内定が出てもその先への就職を留保し、他の会社の選考を受けることも考えられます。

このような場合、先に解説した、在職中に内定が出ている場合に類似した問題点があります。失業保険の給付が引き続き行われるかどうかは、ハローワークの判断次第ということになります。

もっとも、こちらの場合は、求職活動を継続して行うのであれば、「労働の意思および能力を有しているにもかかわらず、職業に就くことができない状態」、つまり失業認定を受けられる可能性が高いといえるでしょう。

内定が出たからといってその会社に入社する義務が生じるわけではなく、入社するかどうかは労働者側の意思で選択することができます。現状決まった内定先よりも、さらに自分にあった会社を探して求職活動を行っている場合には、就職先が決まったとは判断されにくい傾向があります。

もちろん、本当はその内定先に入社する意思であるにもかかわらず、失業保険を受給するためだけに形式的に求職活動を続けることは、不正受給とされる可能性もあります。

したがって、この場合もやはり、ハローワークへ報告と相談をするのが無難といえるでしょう。

失業保険以外の給付|再就職手当

就職が決まれば失業保険(基本手当)は支給されなくなります。その代わり、就職が早く決まった場合には「再就職手当」という給付を受けられる可能性があります。

基本手当の受給できる期間を3分の1以上、かつ、45日以上残して就職した場合には、再就職手当という給付を受けることができるようになっています。

失業保険の基本手当は、就職先が決まるかどうかに関わりなく、受給できる期間(日数)が決まっています。この期間内に就職先が決まれば、その時点までの給付となり、残りの期間分は受給できないということになります。

つまり入社日を後ろにずらせばずらすほど、受給できる期間が長くなり、労働者からしてみればお得になるわけです。しかし、これでは、早期に職に就く意欲を低下させてしまいかねません。

この早期に職に就く意欲の低下を防ぐために、再就職手当という制度が整備されました。
再就職手当は、原則として基本手当の6割から7割程度です。
基本手当より額は低くなりますが、それでも、早期に就職が決まり、賃金を得られる状態になることを考えればメリットは大きいと言えます。

基本手当以外の給付も視野に入れ、求職活動をすることが重要です。

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執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。