不当解雇・退職勧奨の
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不当解雇をされてしまったとき、会社に何が請求できるかご存じですか?
解雇は労働者の生活の基盤を失わせる重大な行為です。いざという時のためにも損害賠償や慰謝料などどういった請求ができるのかは知っておきたいですよね。
この記事で不当解雇をされた際に会社に請求できる金銭や、請求の方法を確認しておきましょう。
目次
不当解雇を受けた場合の請求は未払い賃金が中心にはなりますが、その他にも慰謝料や退職金などを請求することもできます。
もっとも、実際の交渉ではそれぞれ請求の根拠ごとに名目を分けずに、まとめて一定の解決金という形の支払いで解決をすることが多いでしょう。
慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償をいいます。
解雇によって得られなくなってしまった賃金などの財産的損害とは別の物です。
慰謝料は不当解雇で請求できる金銭の一項目にすぎないことをまずは確認しておきましょう。
慰謝料請求できる場合は?
不当解雇の場合の慰謝料請求は、強度のセクハラやパワハラなど強い違法性を伴っていた場合に認められています。
こう聞くと、強度のパワハラやセクハラがなくても「不当解雇自体が強い精神的苦痛だから慰謝料請求したい!」と思うかもしれません。
しかし、このような多くの不当解雇によって被った精神的損害は、未払い賃金などの支払いによって治癒されるとみなされています。
不当解雇では、未払い賃金を請求することが一般的です。
ここでの未払い賃金とは、不当解雇以降に払われなくなった給料のことをいいます。
請求できる理由は?
不当解雇とは客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠く解雇をいい、そのような解雇は無効となります(労働契約法16条)。
解雇が無効なのであれば、労働契約は継続しているため賃金の請求権はまだあるはずです。
もちろん、その間仕事はできていないでしょう。
しかし、それは不当解雇という会社側の問題で働けなくなってしまったのであるから、仕事をしていなかったとしてもその間の給料を請求することができます(民法536条2項参照)。
端的に言えば、解雇は無効なので(仕事はしていなくても)給料は払い続けてください、と請求ができるということです。
この請求が不当解雇における金銭請求の中心になります。
解雇予告手当とは、即時解雇をする場合に支払わなければならない給料1か月分(平均賃金30日分)の手当をいいます(労働基準法20条)。
会社が有効に解雇をするには支払う義務がありますが、厳密にいえば、解雇予告手当は労働者に法的な請求権があるものではありません。
また、解雇予告手当を支払って下さいと会社に請求する行為は、裏返せば即時解雇を受け入れますという主張と同じなので、その後不当解雇の有効性を争えなくなってしまう場合があります。
不当解雇を争って損害賠償請求などをしたいと考えているのであれば、解雇予告手当は請求しないことが望ましいです。
振り込みがあったような場合にも紛争解決までは手を付けないでおいておきましょう。
解雇予告手当として請求しなくとも、解雇が無効であれば未払い賃金として通常の給料を請求できるのです。
退職金の制度を設けるかどうかは、会社の自由です。そのため、退職金は法律上当然に請求できるものではありません。
退職金を請求できる場合は?
しかし、退職金制度が設けられていたり、労働者と会社の契約内容に退職金が含まれているのであれば、解雇であっても退職金の請求をすることができます。
退職金の規定がある場合は、就業規則に記載をしなければならないため、まずは就業規則の確認をしましょう。
また、労働契約書や労働協約での退職金の有無について記載がないかも確認すべきです。
なお、通常は解雇であっても退職金は満額支給されますが、懲戒解雇の場合には退職金を支払わない、または減額する旨の規定が就業規則に定められていることが多いので注意が必要です。
ただし、全額を支払わない旨が規定されていても、退職金がそれまで勤続していたことに対する報償という性質のものであれば、少なくとも一部は請求できると考えられます。
割増退職金とは、会社の希望退職の募集や退職勧奨に応じる代わりに、規定よりも割増して提示される退職金をいいます。
これは、退職に応じる代わりに会社側が任意に支払うものですから、退職を拒否して解雇になった場合にあとから請求をすることはできません。
そのため、会社の提案を飲むか、拒否し続けて不当解雇として争うかどちらの方が良いかのかは慎重に検討する必要があります。
不当解雇を受けた場合に、個人で会社と交渉をするのは、法的な知識や労力の面からも難しいことと思います。
そこで、公的機関や専門家へご相談することをお勧めします。
労働問題の相談窓口としてまず思い浮かぶのは労働基準監督署でしょう。
労働基準監督署は、会社が労働基準法に違反していないかを監督する機関です。
労働基準法違反の事実が認められれば、会社に対し立入り調査を行い、是正指導・勧告をしてもらえます。
ただし、労働基準監督署では解雇の効力についての判断はしてくれません。
また、会社と労働者の間に入り交渉のお手伝いもしてくれないため、不当解雇の損害賠償請求をしたい場合のような個別的な労働紛争の解決には向いていません。
各都道府県に設置されている労働局では、労働紛争の解決手段としてあっせんを行ってくれます。
あっせんとは専門のあっせん員が会社と労働者の間に入り、両者の主張を調整しながら話合いを進めてくれる制度です。
無料で利用することができるうえ、短期間で解決することができるので労働紛争の解決方法としては最も利用されています。
ただし、あっせんには強制力がないため、会社があっせんを拒んだ場合にはそれ以上のことができません。
なお、労働局の相談窓口である「総合労働相談コーナー」は労働基準監督署内にも設置されています。
労働組合に不当解雇などの労働問題を相談すると、会社に対し団体交渉を行ってくれます。
団体交渉とは憲法上認められた労働者の権利であり、労働組合が団体交渉を通じて会社不当解雇の抗議や金銭請求をしてくれます。
会社は労働組合の団体交渉に対して誠実に交渉に応じる義務があり正当な理由なく拒むことはできません(労働組合法7条2項)。
団体交渉の申入れを無視したり、誠実に交渉しなかった場合には不当労働行為として損害賠償の対象となりえます。
労働組合は企業内にある場合もありますが、もし自社内に労働組合がない場合であっても、外部の合同労組(ユニオン)の相談窓口を利用することができます。
不当解雇を会社と徹底的に争いたいのであれば、弁護士への相談が最適です。
弁護士や法律事務所には専門分野がある場合が多いですが、労働を専門に取り扱っている弁護士であれば、不当解雇などの労働紛争解決のプロとして相談・交渉・訴訟まで全て対応してくれます。
交渉で会社と和解できなかった場合、最終的には労働審判や訴訟で決着をつけることになります。
弁護士に依頼をする場合、費用がかかることがデメリットにはなりますが、裁判手続きの代理人には弁護士しかなることができないため、労働紛争で最後に頼るのは弁護士ということになります。
不当解雇に基づく損害賠償を請求するためには、まずどういった事実や法律に基づいて何を請求するのかを、書面にまとめて内容証明郵便で会社に送付します。
労働組合や弁護士であれば、こういった書面の作成も代わりにしてもらうことができます。
【記載例】
私は、貴社との間で期間の定めのない雇用契約を結び、令和〇年〇月○日より、正社員として労務を行っていたところ、令和〇年〇月○日、貴社代表取締役の××××氏から突然に解雇を言い渡されました。
その後に受領した解雇理由証明書の記載では、「~~~」が解雇の理由とされています(労働契約法16条)。しかし、解雇が認められるためには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要ですから、上記理由による今回の解雇は要件を満たさず無効です。
したがって、貴社との間にはいまだ有効な労働契約が存続しておりますので、現時点での未払賃金〇〇円を本書面到着後7日以内に下記銀行口座までお支払い下さい。
銀行名:××銀行××支店
口座:普通 ××××××
名義:××××××
また、民法536条2項に基づき、以後毎月の給与支払い期日において、金〇〇円の賃金の支払いを継続して頂きたく存じます。
なお、これに応じて頂けない場合には、労働審判や訴訟等の手続において上記金銭及び遅延損害金をあわせて請求いたしますことを予め申し伝えます。
令和〇年〇月○日
内容証明でこちらの主張を通知した後は、会社との話合いで和解の着地点を探ることが多いでしょう。
ただし、労働の専門家ではない個人がこういった交渉を行うのは困難なので、あっせんを利用したり、労働組合や弁護士に代理交渉を依頼することがおすすめです。
不当解雇の場合の相場観としては、給料の2~3月分程度の解決金の支払いで和解をすることが多いです。
ただしあくまで交渉によって決まる金額ですので、具体的な事案によっても変わってきます。解雇の不当性が強ければ、給料の6~12か月もしくはそれ以上の金額で合意に至る場合もあります。
また、悪質なパワハラやセクハラなど強い違法性を伴う行為があった場合の慰謝料の相場は50万円~100万円程度ですので、解決金額もその分上昇します。
こういった交渉を尽くしても、紛争が解決に至らなかった場合には労働審判や訴訟によって裁判所に判断をしてもらうことになります。
労働審判とは、不当解雇などの労働紛争を迅速、適正かつ実効的に解決することを目的としている裁判所の手続です。
労働審判では、労働審判官(裁判官)1名と専門知識をもった労働審判員2名で組織された労働審判委員が、原則3回以内の期日で労働紛争を審理し、調停を試み、または審判をします。
労働審判は個人でも申立てることができますが、弁護士を選任することが推奨されます。
申立てから終結まではおよそ2~3か月程度で終わり、申立ての多くは1~2回の期日で金銭解決を中心とした和解で解決します。
審判決定でも解決しなかった場合には、正式裁判に移行することとなります。
正式な訴訟になった場合には、解決まで1年以上という長期間にわたって争っていくこととなります。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。