退職金の有無や支給額は?就業規則で確認するのが基本!

更新日:

監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

<15 ■1>

定年退職が近い人や転職を考えている人は、「退職金はもらえるのかな」「いくら退職金がもらえるか」など気になるところです。

今回の記事では、退職金の有無や金額について就業規則への記載という点から解説します。退職前に知っておきたい情報なので参考にしてください。

退職金とは|退職金の法的性格

まずは、退職金とはどのようなものか確認しましょう。法律上の決まりごとを含めて解説します。

退職金の支払いについて

退職金の支払いについて法律上の定めはありません。つまり、退職金を従業員に支払うかどうかは会社は任意で決めることができるのです。

ただし、入社時の労働契約就業規則で退職金が支払われることが決められていれば、当然、退職金をもらえます。

退職金の法的性格

退職金については下記の3つの法的性格を併せ持つといわれています。

  1. 賃金後払い的性格
  2. 功労報償的性格
  3. 生活保障的性格

1.賃金後払い的性格

退職金の金額が勤続年数に応じて支給されることが就業規則などで明確な場合、退職金は賃金の後払いとしての意味を持ちます。この場合、退職金は「労働の対象としての賃金」として労働基準法第11条に定める賃金に該当します。

2.功労報償的性格

また、退職金は長年にわたり会社に貢献してきたことを評価して恩恵的に支給されるという面もあります。このことを功労報償的性格といいますが、この場合には退職金は賃金に該当しません

3.生活保障的性格

賃金だけでは退職後の生活が十分できないため、退職後の生活保障のために退職金を支払うという考え方もあります。これを退職金の生活保障的性格といいます。上記同様、退職金は賃金とはいえないでしょう。

「3つの法的性格を併せ持つ」ことの問題点

「退職金が3つの法的性格を持つ」ことの問題点は、退職金でトラブルが生じたときにどの法的性格を根拠にするかで判断が異なることです。

賃金の後払い的性格」を根拠にすれば、労働基準法の賃金の規定が適用されます。「功労報償的性格」を根拠にすれば、功労がなければ退職金を支払わなくていいというケースも考えられます。

裁判などでは個々の実態に応じて退職金の法的性格を判断していますが、本記事では一般的な退職金の取り扱いについて説明します。

退職金と就業規則への記載|労働基準法による定め

退職金を設けるかどうかは会社の任意ですが、退職金規定がある場合には就業規則に記載することが義務付けられています。

(労働基準法第89条)
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。
3の2.退職手当の定めをする場合、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

つまり、退職金規定を設ける場合は、下記内容などを就業規則に記載しなければならない、ということです。

  • 支給要件
  • 退職金額の計算方法
  • 支給時期

記載事項についてみていきましょう。

記載事項①退職金の支給要件

記載事項の1つ目は、「適用される労働者の範囲」や「退職金の支給要件」です。
支給要件の記載は?

「適用される労働者の範囲」とは、退職金が支払われるのは誰かということです。

  • 正社員のみ
  • 正社員と契約社員
  • アルバイトを含め従業員全員 など

契約形態が違う場合は、契約形態ごとに就業規則を作成することもあります。「退職金の支給要件」は、一定以上の勤続年数などが該当します。

就業規則例

第◯条(適用される労働者の範囲)
この規程は正社員以外の社員(契約社員、アルバイト、パートタイマー、嘱託社員、その他特殊雇用形態者)に対しては適用しない。
第◯条(支給要件)勤続年数◯年以上の従業員が、就業規則◯条の規定により退職し、または解雇されたときは、この規則の定めるところにより、退職金を支給する。

記載事項②退職金額の計算方法

記載事項の2つ目は、退職金額の計算方法です。
退職金の計算方法は?

計算方法は会社ごとに異なりますが、(退職時の基本給)×(勤続年数に応じた支給率)をベースに会社独自の加減算をするのが1つのパターンです。加減算には下記があります。

  • 従業員の自己都合退職のときの減算(8割支給など)
  • 会社の都合による退職や業務上の死傷病による退職のときの加算
  • 会社業績への貢献や退職時の役職などに応じた加算 など

就業規則例

第◯条(退職金の額)
退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。
 (支給率を記載した表)

記載事項③退職金の支払方法や支給時期

記載事項の3つ目は、退職金の支払方法や支給時期です。
支払い方法や支給時期は?

支払方法には、「銀行口座へ振込」「支払保証した小切手」「郵便為替」など会社が任意で決めることができます。

支払時期も会社が任意で決めますが、支払時期も支払方法も必ず就業規則に記載しなければなりません。もし、記載がなければ労働者は退職日から7日以内に退職金を支払うよう請求することができます。(労働基準法第23条)

就業規則例

第◯条(退職金の支払方法及び支払時期)
退職金は一時金をもって支給し、退職の日から◯月以内にその全額を通貨で支給する。

就業規則の記載事項について解説しましたが、「退職金はもらえるのかな」「いくら退職金がもらえるか」という不安・疑問を抱えている人は就業規則を確認しましょう

懲戒解雇で退職金が支払われないケース|不支給・減額の規定

懲戒解雇されたときには退職金はもらえるのでしょうか。原則、退職金はもらえますが下記の2要件に該当すれば、全額不支給または一部不支給にとなる可能性があります

  • 就業規則に退職金を不支給にすることが明記されている
  • 従業員の永年の功を抹消・減殺するほどの重大な不信行為がある

不支給や減額の規定

懲戒解雇されたとき、就業規則で確認したいのは次の2点です。
懲戒解雇の際に確認したい規定は?

  • 懲戒解雇の事由が就業規則に記載されているか
  • 懲戒解雇のとき退職金が不支給になることが就業規則に記載されているか

まず、懲戒解雇が正当かどうかを就業規則で確認しましょう。労働基準法第89条では就業規則に下記事項の記載が義務付けられています。

  • 退職に関する事項(解雇を含む)
  • 制裁(懲戒解雇など)の定めをする場合、その種類及び程度に関する事項

就業規則に懲戒規定があり懲戒解雇が妥当ならば、次は退職金の減額・不支給の規定を確認しましょう。前述の通り、就業規則には支給条件の記載が必要なので、記載がなければ、懲戒解雇でも退職金はもらえます

ただし、多くの会社では下記に準ずる規定が設けられています。

就業規則例

第◯条(退職金の減額又は不支給)
就業規則◯条の規定により、所轄の労働基準監督署長の認定を受けて懲戒解雇された者には、この規程による退職金を支給しない。ただし、情状によって支給額を減じて支給することがある。

「従業員の永年の功を抹消・減殺するほどの重大な不信行為」とは

退職金の功労報償的性格より、「従業員の永年の功を抹消・減殺するほどの重大な不信行為」があれば、退職金が支払われないこともあります。
重大な不信行為とは?

具体的には次のような場合です。

  • 会社内で窃盗や横領、傷害など刑法に違反する行為をした場合
  • 賭博、風紀紊乱などにより職場の規律を乱した場合
  • 合他社へ転職した場合  など

就業規則に懲戒解雇時の退職金が不支給になることが明記されており、不支給事由に該当することが明確なら退職金はもらえません。ただし、会社の温情などで退職金が支払われることもあります。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

詳しくはこちら

みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。

不当解雇お悩み解決!
全国24時間無料相談
0120-482-911