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働き方改革により残業が減った会社もありますが、今もなお36協定違反の残業をさせたり残業代を支払わない会社は存在します。
このような36協定違反の残業や未払い残業代があることは労働基準法に違反していますが、実際に会社がこのような労働基準法に違反していてもどのような対応をとれば良いのかわからずに泣き寝入りしてしまう従業員の方もいらっしゃると思います。
今回の記事では、そんな長時間の残業や残業代未払いをはじめ、会社のどのような行為が労働基準法に違反しているのか。また、会社が労働基準法に違反している場合にどのような対処をすれば良いのかを解説します。
目次
労働基準法とは、そもそもどのような定義をされている法律なのでしょうか。
また、会社が労働基準法に違反していた場合、会社への罰則はあるのか確認しましょう。
労働基準法とは、主に賃金や就業時間・休息といった労働条件に関する最低限の基準を定めた法律のことをいいます。
労働契約が労働基準法に定められた基準を下回る部分があった場合、たとえ従業員が合意をしていたとしても下回る部分に関しては無効となり、その部分に関しては労働基準法で定める基準が適用されます(労働基準法第13条)。
労働基準法に違反した場合は、罰則があり懲役刑か罰金刑が適用されます。
罰則に関しては、労働基準法第117条から121条に規定されています。
それぞれどのような罰則が適用されるかは下記の労働基準法違反の事例で紹介します。
労働基準法は労働条件に関する最低限の基準を定めた法律であり、罰則も規定されていることがわかりました。
次は、会社が起こしがちな労働基準法違反のケースについてそれぞれ適用される罰則と併せて確認しましょう。
従業員の法定労働時間は原則として1日8時間、1週間で40時間までと定められています(労働基準法第32条)。
原則以外のルールは?
しかし、いわゆる36協定といわれる労働基準法第36条に基づく労使協定を会社と従業員が締結して、所轄の労働基準監督署に提出した場合は上記の法定労働時間を超える時間外労働(残業)が認められます。
ただし、36協定を結んでいた場合でも従業員が残業して良いのは、臨時的な特別の事情がない限りは月45時間・年360時間までです。
特別な事情がある場合でも、年720時間・2~6か月間の複数月の平均労働時間が休日労働を含んで80時間を超えることはできません。
また、単月の休日労働を含む労働時間が100時間を超えることは禁止されています。
月45時間を超える残業が認められるのは、年間6か月間までです。
あくまで、特別な事情は緊急時を乗り切るための例外的に定められたものだからです。
そのため、ただの繁忙期などでは特別な事情として認められない可能性もあります。
36協定を結んでいないのに残業をさせた場合や36協定を結んでいた場合でも違反していた場合は、労働基準法第119条違反として「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
いわゆるサービス残業といった会社が従業員に残業代を支払わなかったり、支払っても割増賃金分は含まれていなかったケースです。
割増賃金率とは?
従業員が時間外労働や休日労働、深夜労働をした場合は会社は割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法第37条)。
割増賃金率は以下の通りです。
労働時間 | 割増率 |
時間外労働(1日8時間を超える) | 1.25倍 |
1か月に60時間超(中小企業は2023年4月から適用) | 1.5倍 |
法定休日労働 | 1.35倍 |
深夜労働 | 1.25倍 |
時間外労働+深夜労働 | 1.5倍 |
法定休日労働+深夜労働 | 1.6倍 |
会社が従業員に残業代自体を支払わなかった場合、または残業代を支払ったものの割増賃金分は含まれていなかった場合は労働基準法第37条違反として、労働基準法第119条に基づき「6か月以内の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
会社は従業員の労働時間が6時間を超える場合は最低45分、8時間を超える場合は最低60分の休憩を労働時間の途中で与えなければなりません(労働基準法第34条1項)。
その他の休憩に関するルールは?
休憩時間はまとめて与えることも、分けて与えることもできます。
また、休憩は従業員の自由に利用させなければならないと定められています(労働基準法第34条3項)。
そのため、休憩中の従業員に電話応対をさせるなどの行為は、労働基準法第34条3項に違反している可能性が高いです。
会社が労働時間が6時間を超える従業員に対して、休憩時間をきちんと与えないなどの場合、労働基準法第34条違反として労働基準法第119条に基づき「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
会社が従業員を解雇する際は、解雇日より30日以上前に解雇の予告をする必要があります。
解雇予告手当とは?
解雇日が解雇を予告した日から30日未満であった場合、会社は従業員に対して「解雇予告手当」といって不足日数分の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法第20条)。
また、会社が即日解雇といった解雇の予告をせずに従業員を解雇する場合は、解雇と同時に30日以上分の平均賃金を支払う義務があります。
会社から解雇予告された日が解雇日より30日未満であるにもかかわらず、不足日数分の解雇予告手当が支払われなかった場合や即日解雇であるのに30日以上の平均賃金を支払われなかった場合は、労働基準法第20条に違反しているとして、労働基準法第119条に基づき「6か月以下の懲役または3か月以下の罰金」が科されます。
会社は、出産予定日が6週間以内の女性従業員が休暇を申請した場合は休暇を取らせなければなりません(労働基準法第65条1項)。
その他の妊娠・出産に関する就業ルールは?
また、出産後8週間を経過していない女性従業員を就業させることも禁止されています(労働基準法第65条2項)。
ただし、産後6週間を経過した女性従業員自らが就業することを請求した場合は、医師の許可があれば就業を認められます(労働基準法第65条2項但し書)。
残業については、36協定を結んでいる場合であっても妊娠中もしくは出産後1年以内の女性従業員が「残業はしない」と会社に要求した場合は、会社は残業させてはなりません。また、法定休日労働や深夜労働に関しても同上です(労働基準法第66条)。
上記の妊娠・出産に関する事柄について違反があった場合、労働基準法第119条に基づき「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
会社が従業員に対して労働契約の締結を行う際は、賃金・労働時間やその他労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条1項)。
雇用契約書や就業規則は必要?
また、明示方法は書面での交付によるものと定められています。ただし、従業員が希望した場合は、FAXや電子メール・SNSでの明示でも可能です(労働基準法施行規則第5条4項)。
労働条件が明示された書面とは、「労働条件通知書」があげられます。
労働条件通知書に似た書面としては「雇用契約書」がありますが、こちらは発行しない場合であっても会社側に違法性はありません(労働契約法第4条2項)。
従業員が10人以上いる会社は、就業規則を作成して所轄の労働基準監督署へ届出をする必要があります(労働基準法第89条)。
また、会社は作成した就業規則を従業員の見やすい場所に掲示するなどして、従業員に周知させる義務があります(労働基準法第106条)。
上記の労働基準法第15条・89条・106条に会社が違反した場合は、労働基準法第120条に基づいて「30万円以下の罰金」が科されます。
よくある会社の労働基準法違反についての解説をしました。
では、会社が労働基準法に違反していた場合、どのように対処すれば良いのか見ていきましょう。
まずは、会社が労働基準法に違反していることを証明する証拠を集めましょう。
例えば残業代未払いの証拠は?
具体的にどのような証拠を揃えればいいかというと、たとえば残業代未払いのケースでは下記のものが証拠になります。
タイムカードのように客観的に明確な証拠になるものがあれば良いですが、タイムカードは定時になると切らせてから残業させる会社もあるでしょう。
そのような場合は、なかなか客観的に明確な証拠を見つけるのが難しいかと思います。
客観的に明確な証拠がない場合でもメモや日記などで日々の勤務時間や業務内容を記載することも有効ですのでしっかりと記録しておくことをおすすめします。
会社が労働基準法に違反している証拠を集めたら、労働基準監督署に相談しましょう。
労働基準監督署の機能は?
労働基準監督署とは、管轄内の会社が労働基準法に違反していないかどうかチェックを行なっている機関です。
労働基準監督署に相談して、労働基準監督署が問題ありと判断すると会社に対して立ち入り調査を行います。
そして、立ち入り調査により問題が発覚したら是正指導・勧告を行なってくれます。
是正指導・勧告自体には強制力はありません。
しかし、悪質な場合は、経営者を逮捕することもできる司法警察としての側面も労働基準監督官にはあります。
そのため、労働基準監督署から是正指導・勧告を受けたら、会社は速やかに対応してくれることも多いです。
労働基準監督署に相談しても労働基準監督署が動いてくれなかったり、会社に是正指導・勧告をしても会社から無視されるなどして解決に至らなかった場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
強制力がないとはいえ、労働基準監督署からの是正指導・勧告をしても無視するような会社を相手に、ご本人による解決は難しいからです。
労働トラブルの内容によっては、裁判での解決を目指すことになる場合もあります。
費用が高くなってしまうのがデメリットですが、初回無料相談の弁護士事務所もあります。
労働基準監督署へ相談しても解決に至らなかった場合は、一度弁護士への相談も検討されてみてはいかがでしょうか。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。