交通事故では労災保険を利用できる?3つのメリットと注意点も解説

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

労災いくらもらえる?労災保険の仕組み

「通勤中に交通事故にあった場合は労災保険を使えるのかなあ?」
「労災保険を利用することにはどんなメリットがあるんだろう?」

労災保険について、上記のような疑問を抱えてらっしゃいませんか?

もし通勤中や仕事中に大きな交通事故にあったとしたら、休業を余儀なくされるかもしれません。

その際、労災保険が利用できるのか、またどのような補償を受け取れるのかは気になるポイントですよね。

今回は交通事故で労災保険が使えるケースに加えて、労災保険を利用するメリットと注意点を解説します。

万一の事故に備え、労災保険の詳細について確認してみてください。

交通事故で労災保険が使えるのはどんなケース?

労災保険は業務上の事由や通勤によって怪我や病気を負った場合、あるいは死亡した場合に必要な給付を行い、労働者の仕事復帰を促進する制度のことです。

業務に関わる作業をしている時だけでなく、通勤中や移動中の事故で負傷した時でも労災保険の適用対象になります。

まずは、具体的にどのようなケースで労災保険が使えるのか、そしてどのような補償を受けることが出来るのかについて、見ていきましょう。

労災保険が使える具体的なケース

交通事故で労災保険が適用される具体的なケースの例としては、次のようなものがあげられます。

  • 自宅または単身赴任先から会社に出勤する途中で事故にあった
  • 取引先から直接帰宅する途中で事故にあった
  • 会社から帰宅する前に病院に寄って診察・治療を受け、その後の帰り道で事故にあった

まず、住居と職場の行き来は当然通勤に該当するため、その際の事故は労災保険を使うことが出来ます。

そして取引先のような職場とは別の就業場所から住居へ、あるいは本来の職場への移動中に事故にあった場合でも労災保険が適用可能です。

また、通勤途中で病院に行ったり、独身者が食事に立ち寄ったりする行為は「日用品の購入およびその他これに準ずる行為」とみなされ、通勤は中断されていないと判断されます(平成18年3月31日基発0331042号)。

したがって、これらの行為の後に起きた事故は労災保険の対象となります。

一方で、次のようなケースでは、労災保険が適用されません。

  • 会社の帰りに同僚たちとの食事に向かうため、通勤経路を離れて移動していた時に事故にあった
  • 職業の紹介を受けるため、ハローワークに向かう最中に事故にあった

明らかに通勤と関係のない目的で通勤経路を逸れた場合は、事故にあったとしても労災保険の対象からは外れます。

また、就職が不確実である間はハローワークと住居の行き来は通勤とはみなされないため、ここでの事故も労災保険は使えません。

労災保険で受けられる補償の種類

労災保険を利用して受けられる補償には、以下のようなものがあります。

  • 療養補償給付
  • 休業補償給付
  • 傷病補償年金
  • 障害補償給付
  • 遺族補償年金
  • 介護補償給付
  • 葬祭料

療養補償では、労働災害によって療養が必要となった場合に診察や処置・手術が労働者に直接与えられます(労働者災害補償保険法第12条の8第2項)。

治療後も障害が残ってしまった人は、その程度に応じて傷病補償年金、障害補償給付、介護保障給付を受け取ることが可能です。

そして労働者が死亡した際には、その遺族に対して遺族補償年金、葬祭料が支給されます。

労災保険には以上のような補償がありますが、もし自賠責保険でも補償を受け取っているなら同じ補償を労災保険で受け取ることは出来ません。

事故による後遺症が残った場合は両方から補償を受けられるケースもありますが、基本的に二重取りは不可能であると考えておきましょう。

交通事故で労災保険を利用する3つのメリットとは?

ここまで労災保険が使えるケースとその補償内容について確認しました。

そして補償を受けられる状況に該当する人は、被害者にとってのメリットが大きい労災保険を利用するのが良いでしょう。

続いては、労災保険の特徴的な3つのメリットについて紹介していきます。

①給付金の限度額、過失相殺がない

各種給付において、上限が設定されていないというのも労災保険の魅力です。

療養補償を例に挙げると、自賠責保険には120万円という限度額が定められていますが、労災保険なら必要な分は全額支給してもらえます。

また、労災保険には過失相殺が適用されません。

自賠責保険を使用すると、通勤中の労働者側の過失が大きいケースでは保険給付が減額される可能性があります。

治療が高額になる場合、また自分の過失が多い場合は、労災保険を利用するメリットが大きいことを押さえておきましょう。

②給付に加えて特別支給金がもらえる

労災保険では、各種給付とは別に特別支給金を受け取ることが出来ます。

特別支給金は政府からの見舞金のようなものです。

給付に対して定額・定率で支給されるものと、ボーナス賃金から算定して支給されるものの2種類があります。

例えば、休業補償給付に対する特別支給金なら給付基礎日額の20%が支給されます。

休業補償の場合、通常の給付で60%、さらに相手方の保険会社から40%の支給を受けられます。ここに特別支給金を加えると合計で休業による損害額の120%を受け取ることが可能です。

また、傷病補償年金、障害補償給付に対する特別支給金の場合、等級に応じて定められた金額を一時金として受け取ることが出来ます。

③子供の就学費用を援助してもらえる

労働災害によって障害を受け長期療養を余儀なくされた者、あるいは死亡した者の遺族が子供の学資金をまかなうのは難しいと判断されると、労災就学援護費が支給されます。

この援護費を受給するには以下の条件のうちいずれかを満たしていることが必要です。

  • 受給者本人やその子が、在学や職業訓練の受講に必要な資金をまかなうのが困難である
  • 受給者本人やその家族が、児童を幼稚園・保育所にあずけており、援助が必要と認められる
  • 受給者本人やその子が、長期課程による指導員訓練を受けており、平成26年3月31日以前に援助すべき事由が生じた

就学援護費の対象になるのは、「遺族補償年金」「傷病補償年金」「障害補償年金」のいずれかの受給者です。

また、給付基礎日額が16000円を超えている場合は対象外となることに注意しておきましょう。

労災保険を利用する際の注意点とは?

ここまで労災保険のメリットを確認しました。

しかし、実際に労災保険を利用する際に注意すべき点もいくつかあります。

最後は、労災保険の受給手続きの流れと必要書類、そして保険給付制限が適用されるケースについて見ていきます。

労災保険の申請から受給までの流れ

労災保険の手続きの流れは、受診機関によって次のように変わります。

労災指定医療機関で受診する場合

  1. 事業主から療養の給付請求書に証明を受ける
  2. 指定医療機関に請求書を提出する
  3. 労働基準監督署が請求書を受理し、調査を行う
  4. 指定医療機関に治療費などが支払われる

その他の医療機関で受診する場合

  1. 医療機関へ治療費を支払う
  2. 事業主から療養の費用給付請求書に証明を受ける
  3. 労働基準監督署に請求書を提出する
  4. 労基署が調査を行う
  5. 費用が請求人の振込口座へ支払われる

申請から給付決定までにはおよそ1か月を要します。

休業補償給付であれば労働不能となった日から2年、障害補償給付であれば傷病が治ってから5年といった時効が設定されているため、早めに手続きを行うようにしましょう。

労災保険の支給制限が適用されるケース

労働者が故意に事故を発生させた場合、支給制限が適用され、保険給付は一切行われません(労働者災害補償保険法第12条2の2第1項)。

また、労働者の故意の犯罪行為もしくは重大な過失によって事故が発生した場合では、給付額の30%が支払われない可能性があります(労働者災害補償保険法第12条2の2第2項)。

そのほか、正当な理由なく療養上の指示に背いて傷病を悪化させた者、必要書類の提出を行わない者についても、給付の減額や差し止めといった措置がとられることがあります。

仕事中の交通事故であれば故意に発生させることは考えづらいですが、支給制限を受けないよう適切な療養や手続きを行いましょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。