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変形労働時間制について詳しくご存知ですか?
2020年現在、国内では6割以上の企業が導入している制度ですが、内容を詳しく理解できている労働者が少ないのも事実です。
変形労働時間制は、長時間労働や残業代未払いに直結するリスクを含む制度ですので、労使協定などの内容についてしっかりと理解しておく必要があります。
今回は、なかなか理解しづらい変形労働時間制について、わかりやすく理解できるようにまとめました。
目次
変形労働時間制との関連でよく聞かれる質問があります。
この記事では変形労働時間制に関連してよく出る質問に対して、わかりやすく記載しています。
変形労働時間制とは、対象期間を平均し1週間あたりの労働時間が法定労働時間(40時間)を超えない範囲内において、特定の日、又は週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
法定労働時間とは、原則として1週間で40時間、1日8時間と労働基準法32条1項、2項で規定されています。
変形労働時間制には、以下の種類があります。(労働基準法32条の2〜5)
変形労働時間制は1988年に新設され、繁忙期や閑散期に応じて労働者の労働時間を変形できる制度であり、労使協定を締結すれば職種に関わらず適用可能です。
変形労働時間制は、労働時間の使い方を調整できる制度であり、法定労働時間を無視できる制度ではありませんので、残業代や休日はしっかりとでます。
法定労働時間を超過した労働時間は残業代として請求できますし、深夜労働や休日労働も割増賃金が適用されます。
しかし、残業時間が労使協定で決められた労働時間の範囲内に収まっている場合は、残業代は支払われません。
また、休日に関しては法定休日(1週1日または4週4日)は確保されており、この日に労働した分は時間外割増賃金となります。
変形労働時間制は、2020年現在、適用している企業数は60.2%です。
以下に厚生労働省の調査結果を記載します。
1年単位の変形労働時間制を導入している企業 | 35.3% |
1か月単位の変形労働時間制を導入している企業 | 22.3% |
フレックスタイム制を導入している企業 | 5.6% |
変形労働時間制の適用を受ける労働者として多いのは以下になります。
1年単位の変形労働時間制を導入電気・ガス・熱供給・水道業者 | 68.9% |
運輸業・郵便業 | 68.5% |
卸売業者・小売業者 | 61.0% |
宿泊業・飲食サービス業 | 60.9% |
繁忙期と閑散期がはっきりとしている職種が上位として挙がっています。
変形労働時間制とシフトはよく似ているので混同しがちです。
シフトとは、勤務時間が1種類ではなく、日ごとや一定の期間ごとに複数の勤務時間を用意し、交代制で勤務させる形態のことで、変形労働時間制の一部です。
コンビニエンスストア、ファミリーレストラン、24時間体制の工場などで取り入れられており、交代制で行う業務で導入されている場合が多いです。
シフトは労働者へ事前通知の必要があり、労働日や時間を突然変更したり、該当期間に満たないシフト通知などは違法になる可能性があります。
例えば、1か月単位の変形労働時間制としてシフトを組む場合は、1か月分のシフト表が必要となりますので、半月分しかシフト表が決まっていない場合などは条件が不足していることになります。
また、シフト勤務を会社で取り入れる際には、変形労働時間制と同様に労働基準監督署への届け出が必要となります。
もしあなたの仕事で変形労働時間制が適用されるとしたら、どれくらいの期間が妥当でしょうか?
変形労働時間制には、職種に合わせていくつかの適用の仕方があります。
この記事では、変形労働時間制の4つの内容に関してわかりやすく記載しています。
1か月単位の変形労働時間制は、1ヶ月以内の労働時間を平均し、1週間あたりの労働時間が法定労働時間40時間を超えないようにする制度です。
この範囲内であれば、時間外労働とならずに1日10時間労働なども可能となってしまいますので、労働者側としては時間範囲をしっかり理解しておく必要があります。
1か月単位の変形労働時間制は、特定の期間に繁忙期が集中する職種、交代制が必要な職種などで適用されています。
主な職種として、医療、福祉、宿泊業、飲食サービス業、運輸業、郵便業などです。
1年単位の変形労働時間制は、1か月を超えて1年以内の労働時間を平均し、1週間あたりの労働時間が法定労働時間40時間を超えないようにする制度です。
1か月単位に比べて長い期間での労使協定の締結となり、以下の条件がつきます。
労働者側としては、長い期間の適用となりますので、途中で労働時間が変更になったり、業務の都合で適用期間が短くされたり、ということがないように注意しておく必要があります。
夏は忙しいが冬は暇であるなどの、1年を通じて繁忙期と閑散期がある職種などで適用されています。
主な職種として、鉱業、採石業、建設業、運輸業、郵便業、卸売業、小売業などです。
1週間単位の非定型型変形労働時間制は、1週間あたりの労働時間が法定労働時間40時間を超えないようにする制度です。
適用される職種が限定されている点で他の制度と異なり、以下の職種にのみ適用可能です。
短い期間ではありますが、労使協定の締結は必要で、各週の始まる前に労働者への労働時間提示も必要です。
フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が 日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。
フレックスタイム制は、コアタイム以外の労働時間を自分で決められる制度です。
他の変形労働制と大きく異なり、よりフレキシブルな働き方が可能となります。
しかし、労働者個人が自由に労働時間を決められる分、他のメンバーとの協業がやりにくいなどの問題点もあります。
自分の裁量で労働時間をコントロールできる業種に向いていますが、国内の導入率は5.6%であり、まだまだ浸透していない制度です。
変形労働時間制には、メリットとデメリットが存在します。
特に労働者側にとってはデメリットになるリスクが高い制度ですので、制度の理解は必要です。
この記事では、変形労働時間制のメリットとデメリットについて、労働者側の視点で記載しています。
変形労働時間制のメリットは、忙しいときは長く働き、忙しくないときは短く働くというメリハリの利いた働き方ができることです。
以下にメリットを記載します。
変形労働時間制は、一部の労働者にとってはメリットになりますが、多くの労働者にとってメリットは少ないのが実状です。
どちらかというと、残業代の抑制や、シフト管理での24時間勤務が可能など、企業側のメリットが大きい制度となっています。
変形労働時間制における労働者のデメリットとして、最も懸念されるのは違法な長時間労働や残業代の未払いです。
特に労働者の理解不足が原因で、以下のようなデメリットを被ってしまう可能性があります。
変形労働時間制適用に関しては、導入手続きがずさんで無効と判断されるケースもあるなど、企業側も理解しきれずに導入している場合もありますので、労使協定を確認しておくことが重要です。
今回は変形労働時間制についてまとめましたがいかがでしたか?
変形労働時間制は、労働者側の理解が足りないと、労働時間や残業代を搾取されるリスクを含む制度です。
企業側の理解不足で適用基準を満たしていない状態で導入しているケースもあり得ます。
もしあなたのまわりで、変形労働時間制導入の話題があった場合は、自身の眼でしっかりと労使協定を確認しておくことをおすすめします。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。