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もしあなたが裁量労働制を提案されたらどうしますか?
裁量労働制は、時間を自由にできるフレキシブルな働き方のように感じられますが、長時間労働の助長や残業代不払いなどの問題点も多く存在しています。
それらの懸念点を踏まえて、厚生労働省は令和に入ってから、改めて裁量労働制の実態調査に踏み出しています。
今回は、働き方改革で注目されている裁量労働制について、残業代の有無やメリットデメリットについて、わかりやすく記事にまとめています。
目次
裁量労働制は、近年、働き方改革関連で注目されている言葉ですが、内容はご存知ですか?
この記事では、裁量労働制とはどんな制度か? どんな人に適用できるのか?についてわかりやすく記載しています。
裁量労働制とは、労働者が実際に働いた実労働時間ではなく、あらかじめ定めた一定の時間を労働したものとみなす制度のことで、労働基準法38条の3と38条の4に規定されています。
裁量労働制の概要は?
裁量労働制は1987年に導入された制度で、2020年現在では「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」に分かれており、適用できる職種がそれぞれ異なります。
裁量労働制を適用されている労働者は、実労働時間を労働者自身の裁量で決めながら働くことが可能となり、適用の範囲内では時間に縛られない働き方ができるようになります。
労働時間が自由になる反面、長時間労働や残業代の不払いなどの懸念もあり、労働者側がしっかりと内容を理解しておく必要がある制度です。
裁量労働制は特定の職種に限定して適用できる制度で、どんな職種でも適用できるものではありません。
適用できる職種とは?
以下に適用できる職種について記載します。
【専門業務型裁量労働制で適用できる19職種】
【企画業務型裁量労働制に適用できる職種】
裁量労働制は、限定された上記の職種で適用が可能です。
導入の際は、労使委員会の設置や、労使協定の締結を所轄労働基準監督署長に届け出するなどの細かく厳しい規定があります。
裁量労働制は、労働者側にとって時間管理の負担が大きくなりますので、これらの厳格な規定を満たしていないと違法になる可能性があります。
裁量労働制は、時間が自由になるなどのよい面が注目されがちですが、残業代の有無や、労働時間の規制に関して気になる点が多いのも事実です。
そもそも残業代はでるのか? フレックスタイム制との違いは? 労働時間は法的にどのように扱われているのか? など、よくある疑問についてこの記事では記載しています。
裁量労働制では条件に応じて、時間外労働、休日労働、深夜労働に関する残業代は支払われます。
裁量労働制では、法定労働時間である1日8時間・1週間40時間を超えるみなし労働時間が設定されている場合には時間外の割増賃金が支払われます。
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たとえば、労使協定でみなし労働時間が1日9時間に設定されている場合は、1日1時間分の残業代が支払われるという計算になります。
この場合、実労働時間が10時間であっても、みなし労働時間が9時間に設定されているので、時間外割増賃金は1時間分しか支払われませんので注意が必要です。
休日に関しては、労働基準法の法定休日(毎週1回又は4週4日)が適用されますので、法定休日に労働した場合は、実労働時間で休日労働の割増賃金が支払われます。
深夜労働に関しては、午後10時から午前5時までの深夜労働には労働基準法に基づき、実労働時間で割増賃金が支払われます。
企業側が裁量労働制を悪用し「裁量労働制なので残業代はでない」と主張して裁判に至った例もありますので、労働者側は不当な扱いを受けないように、制度をしっかりと理解しておく必要があります。
裁量労働制とよく似ている制度にフレックスタイム制がありますが、制度内容は異なります。
どのような違いがある?
フレックスタイム制とは、労働者が日々の始業、終業時刻、労働時間を自分で決めることで、効率的に働くことのできる制度です。
裁量労働制はみなし労働時間で労働時間を計算するのに対し、フレックスタイム制は実労働時間を計算するので、労働時間の計算方法に違いがあります。
また、フレックスタイム制の場合は「10時~15時は必ず業務に就くこと」などのコアタイムが設定されていることが多く、裁量労働制に比べて労働時間の自由度は低くなります。
給与に関しては、裁量労働制は成果報酬の側面が強いですが、フレックスタイム制は時間給の側面が強く、働いた時間分の給与を受け取ることができます。
36(サブロク)協定とは、「時間外・休日労働に関する協定届」のことです。
時間外や休日労働に関する労使間協定は、労働基準法第36条に規定されているので、通称で「36協定」と呼ばれています。
36協定の詳細は?
通常、法定労働時間は労働基準法により1日8時間、1週間40時間と決められており、労働者は長時間労働から守られています。
もし、この時間を超過して労働者に長時間労働を依頼する場合には、企業は所轄労働基準監督署に労使間で締結した36協定の届け出が必要になります。
裁量労働制の場合も同様で、みなし労働時間が1日8時間・1週間40時間を超えている場合は36協定の届け出が必要です。
その反面、裁量労働制ではみなし労働時間で36協定が締結されていれば、労働者をいくらでも働かせることができるという懸念があります。
現在、厚生労働省も長時間労働等の問題把握に動いており、不適正な裁量労働制の運用は企業名の公表などの手続きを進めています。
裁量労働制では36協定は適用されますが、実労働時間を本人以外の誰も管理できない(管理する必要がない)ため、実質的に長時間労働になる可能性が高く、過労死などの懸念があります。
裁量労働制は時間管理が自由になる反面、長時間労働の懸念があるなど、表裏一体になるメリットとデメリットが存在します。
この記事では、裁量労働制のメリットとデメリットについてわかりやすく記載しています。
裁量労働制は、実労働時間が自由になるなどのメリットがあります。
以下に裁量労働制のメリットを記載します。
裁量労働制の最も大きなメリットは時間が自由になることです。
仕事の合間に家の用事を済ませることもできますし、資格の勉強をすることなども自由です。
裁量労働制では、成果さえ出せば短い時間で仕事を終えても問題ありませんので、能力が高い人は時間を効率的に使うことが可能になります。
裁量労働制では長時間労働の懸念など、デメリットになる部分もあります。
以下に裁量労働制のデメリットについて記載します。
裁量労働制の最も大きなデメリットは長時間労働です。
成果報酬制に近いため、一定の成果を得られるまで長時間労働を続ける可能性が高くなり、結果的に過労死の懸念があります。
また過去事例として、適用職種ではない職種に対して裁量労働制を適用していたという事例や、残業代を不当に支払わない事例などもあり、労働者自身が制度をしっかりと理解していないと不利益を被る可能性があります。
今回は裁量労働制についてまとめました。
裁量労働制は、限られた職種でみなし労働時間で自由に働く制度です。
時間が自由になるので、能力の高い人であれば短時間で仕事を終わらせることもできる制度になります。
しかしその反面、仕事が終わらなければ、残業代の出ない長時間労働が常につきまとう制度設計でもあるため、注意が必要です。
もしご自身に裁量労働制の提案があった場合は、みなし労働時間の設定は問題ないか? 仕事の成果に関して長時間労働の懸念はないか? など、しっかりと理解してから検討できるといいですね。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。