労災保険料は会社負担?労災制度の概要と保険料負担について解説!

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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給与明細を見ても、健康保険料や厚生年金保険料のように労災保険料が引かれていないことに疑問を感じたり、自分は本当に労災保険に加入しているのかなと不安になった人がいるかもしれません。

今回の記事では、労災制度の概要と労災保険料の負担について解説します。

労災保険とは|目的と補償の対象・内容

労災保険とは、「労働者災害補償保険法(以下、労災法)」が定める国の制度です。主に労働災害(以下、労災)にあった労働者を、会社に代わって守るための制度です。

労災保険の目的

労災保険の目的は、労災法第1条で下記の通り定義されています。

  • 業務上の事由、又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して必要な保険給付を行う。
  • 被災労働者の社会復帰の促進、労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、労働者の福祉の増進に寄与する。

主なポイントは次の3つです。

  • 対象となる災害は「業務災害」「通勤災害」の2種類
  • 補償対象となる被害は労働者の「負傷」「疾病」「障害」「死亡」など
  • 労災被害に対する補償は主に「保険給付」

参考:厚生労働省「業務災害・通勤災害について」

労災保険の補償対象

労災保険の補償の対象となるのは適用事業の労働者全員です。アルバイトやパート、日雇い労働者、外国人労働者すべてが対象です。ただし、個人事業主や法人の代表取締役など、労働者ではない人は原則、対象にはなりません。

適用事業については、労災法第3条で「労働者を使用する事業を適用事業」と定めています。下記事業以外は、すべての事業が該当します。

  • 適用除外の事業
    国の直営事業や官公署の事業。国家・地方公務員災害補償法で補償。
  • 暫定任意適用事業
    個人経営で小規模な農林水産業。事業主や労働者過半数の意思で任意加入。

労災保険の補償内容

労災保険の主な補償内容は、「業務災害」「通勤災害」で従業員が被った被害に対する下記の保険給付です。

保険給付給付内容
療養(補償)給付(※1)治療費が無料(労災病院など)になる。支払った治療費の還付金
休業(補償)給付療養のため休業し賃金が支払われないときに、休業日数などに応じて支給される給付金
障害(補償)給付所定の障害が残ったとき、程度に応じて支給される年金または一時金
遺族(補償)給付労災で死亡した場合、遺族に支給される年金または一時金
葬祭料(※2)労災で死亡した場合、葬儀を行う者などに支給される一時金
傷病(補償)年金療養開始から1年6か月経過しても治癒(症状固定)しない場合などに支払われる年金
介護(補償)給付障害年金や傷病年金の受給者のうち、所定の介護を受けている人に支給される給付金
主な保険給付

(※1)業務災害のときは給付名に(補償)がつき、通勤災害のときはつかない。
(※2)通勤災害のときは「葬祭給付」という。

参考:厚生労働省「労災給付等一覧」

上記以外にも、労災保険には社会復帰促進等事業としてリハビリテーション施設を設置したり、二次健康診断等給付(※)を行うなどの事業もあります。

(※)定期健康診断で脳血管疾患及び心臓疾患について所定の異常があり、精密検査費用を行った場合などに労働者の請求によって給付される。

労災保険料はすべて会社負担|負担者と保険料、支払い方法

会社員などの雇用保険料や健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、会社と従業員が折半して負担しますが、労災保険料はどうなのでしょうか。

労災保険料は会社負担

労災保険料は、ほかの労働保険料や社会保険料と異なり全額を会社が負担します。従業員は労働契約が始まると同時に、保険料の負担なく労災保険に加入することになります。

ただし、下記の特別加入者は取り扱いが異なり、別途加入手続きなどが必要になります。

  • 中小事業主等(※)
  • 個人タクシーや大工などの自営業者(いわゆる「一人親方等」)
  • 所定の要件を満たした海外派遣者
事業の種類常時使用労働者数
金融業・保険業・不動産業・小売業50人以下
卸売業・サービス業100人以下
上記以外の事業300人以下
(※)業種別に上記要件などを満たす必要があります。

参考:全国労働保険事務組合連合会「労災保険の特別加入制度」

労災保険料を会社が負担する理由

労災保険料を会社が負担する理由は、本来会社が負担すべき従業員の補償を労災保険が肩代わりしてくれるからです。

労働基準法(第75条~88条)では、従業員が仕事中にケガをしたり、仕事がもとで病気になった場合には、会社にその補償をする義務を負わせています。補償内容は、「療養補償」「休業補償」「障害補償」遺族補償」「葬祭料」などです。

参考:中央労働災害防止協会「労働基準法第八章 災害補償」

しかし、大きな事故が起きて多数の従業員がケガをしたり、死亡事故が起きた場合など、補償額が大きくなりすぎて会社が負担できないケースも想定されます。このような事態を防ぐために労災保険制度が設けられたのです。

国が運営する保険制度ですから、補償額が多額になるケースでも従業員は確実に補償を受けることができます。

労災保険料の計算方法

労災保険料の計算方法は、下記の通りです。

(労災保険料)=(従業員に支払った賃金総額)×(労災保険率)

労災保険率は、労災事故の発生状況などから業種ごとに2.5/1,000~88/1,000の間で設定されています。業務の危険度が低い金融業などの労災保険率は2.5/1,000と低く、危険度の高い金属鉱業や石炭鉱業などは88/1,000と高くなります。

参考:厚生労働省「労災保険率表(平成30年度~)」

労災保険料の支払い方法

労災保険料の支払い方法は、雇用保険料と同時に(例外あり)、年初に概算で1年分を納付し翌年に精算します。1年分の一括納付だけではなく分割納付も可能です。

概算で申告し保険料を納付することを「概算保険料の申告・納付」、翌年精算することを「確定保険料の申告・納付」といいます。雇用保険も同様ですが、これらの手続きを合わせて「労働保険の年度更新」と呼びます。

労働保険の年度更新の期間は、例年は6月1日から7月10日までの40日間です。令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響で8月31日まで期間延長されました。

参考:厚生労働省「労働保険料の申告・納付」

また、労災保険料を概算払いするということは、年度の途中に入社した人がいた場合でも、その都度、報告や保険料精算はしないということです。年度途中で入社した人は、手続きなしで自動的に労災保険に加入することになります。

労災保険料を会社が支払わないときは?

前述の通り、原則すべての会社が労災保険に加入しなければいけませんが、もし会社が労災保険に加入しなかったり、保険料を支払わなかった場合、従業員の補償はどうなるのでしょうか。

会社が未加入でも従業員は補償される

会社が労災保険に未加入や保険料未払いであったときでも、従業員が労災で被害を被った場合は労災保険による補償を受けることができます。

ほかの労働・社会保険料と異なり労災保険料は全額会社負担であるため、給与明細を見ても労災保険に加入しているか確認できませんが、労災保険が適用されるので安心です。

未加入・未払いの会社にはペナルティ

会社が労災保険に故意や重大な過失によって加入しなかったり、保険料が未払いであった場合には下記のペナルティが課せられることがあります。

  • 労災が発生した場合:
    支給された保険給付金額の100%または40%が徴収される。
  • 保険料を支払わない場合:
    滞納した保険料に対し延滞金が課せられるほか、財産の差し押さえ等の滞納処分が行われることがある。

参考:厚生労働省「労災保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度が強化されます」

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みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。

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