派遣切りされたとき雇用保険は?退職理由で異なる派遣社員の受給内容

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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派遣先の都合で勝手に派遣切りされると、生活が成り立たなくなることもあります。新型コロナウイルス感染症の影響で雇用環境が悪化する中、新しい仕事先を見つけるのも容易ではありません。

そんなときに頼りになるのが雇用保険です。今回の記事では、派遣切りにあった派遣社員がもらえる失業保険について、退職理由別に解説します。

派遣切りと雇用保険

派遣切りされたときの雇用保険の取り扱いを解説する前に、まずは「派遣切りとは何か」「雇用保険とはどういう制度か」について確認しましょう。

派遣切りとは

派遣切りとは、派遣先で人員が不要になったなど主に派遣先の都合で、派遣契約が打ち切られることです。

派遣契約は派遣先と派遣会社が締結するものですが、派遣契約が打ち切られて次の仕事先が見つからないとき、多くの場合、派遣社員と派遣会社との労働契約も終了します。結果的に、派遣社員は失業することになるのです。

派遣切りには、次の2つのパターンがあります。

  • 雇い止め:契約満了時に会社が更新せずに契約を終了させること。
  • 契約解除(解雇):契約期間中に会社が一方的に契約を終了させること。

労働契約終了のタイミングが契約満了時なら「雇い止め契約期間中なら「解雇になります。

雇用保険とは

雇用保険とは、従業員を雇用する会社が強制的に加入する国の制度です。

「職業に関する教育訓練」や「育児休業」に対する給付金などもありますが、失業者に給付される基本手当のことを雇用保険と呼ぶこともあります。今回の記事では、基本手当のことを雇用保険(または失業保険)として解説します。

派遣切りにあったとき、「雇用保険(制度)の加入状況」と「退職理由」によって派遣社員の雇用保険(基本手当)は下記の3通りが考えられます。

  • 雇用保険がもらえない。
  • 会社都合退職で雇用保険をもらえる。
  • 自己都合退職で雇用保険をもらえる。

それぞれのケースについて解説します。

雇用保険(基本手当)がもらえないケース

雇用保険(制度)に加入してなかったり、雇用保険(基本手当)の受給要件を満たしていない場合、雇用保険はもらえません。

雇用保険(制度)の加入条件

雇用保険(制度)の加入条件は下記の2点です。

  • 31日以上の雇用見込みがあること。
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。

この条件を満たしていない派遣社員は雇用保険(制度)には加入していないので、雇用保険(基本手当)はもらえません。

雇用保険(基本手当)の受給要件

雇用保険(基本手当)の受給要件は下記の3点です。

  • ハローワークで求職の申込みを行うこと。
  • 「失業の状態(※)」にあること。
  • 離職日以前2年間に雇用保険への加入が通算12か月以上。(自己都合退職
    離職日以前1年間に雇用保険への加入が通算6か月以上。(会社都合退職

(※)離職し、就職の意思・能力があり、求職活動するも職業に就けない状態。

参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」

上記の受給要件を満たした派遣社員は、会社都合退職または自己都合退職として雇用保険がもらえます。

会社都合退職でもらえるケース

退職理由が会社都合の場合、自己都合より有利な条件で雇用保険をもらうことができます。会社都合となるのは、「特定受給資格者」と「特定理由離職者」です。

特定受給資格者(倒産・解雇等離職者)

派遣社員が特定受給資格者になるのは、下記に該当するケースです。

  • 派遣先の倒産等に伴い離職した者
  • 契約解除(懲戒解雇を除く解雇)により離職した者
  • 更新により3年以上雇用されていたが、更新されないことにより離職した者
  • 契約が更新されると明記されていたが、更新されないことにより離職した者

参考:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」

特定理由離職者

派遣社員が特定理由離職者になるのは、下記に該当するケースです。

  • 派遣社員の希望に反して契約が更新されないことにより離職した者

会社都合退職者の雇用保険

会社都合退職者の所定給付日数(雇用保険がもらえる最大日数)は、年齢や被保険者期間(雇用保険の加入期間)により下記の通りです。

被保険者
期間
6月以上
1年未満
1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
29歳以下90日90日120日180日
30-34歳90日120日180日210日240日
35-44歳90日150日180日240日270日
45-59歳90日180日240日270日330日
60-64歳90日150日180日210日240日
会社都合退職者の所定給付日数

参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」

自己都合退職でもらえるケース

退職理由が前述の会社都合でなければ自己都合退職となります。下記ケースは自己都合退職になるので確認しておきましょう。

  • 派遣先から更新の申し出があったのに更新を拒否した。
  • 派遣会社から別の会社を紹介されたが断った。

自己都合の場合は、会社都合と比較して雇用保険の受給内容は不利になります。不利になるのは、おもに下記の取り扱いについてです。

  • 給付制限
  • 所定給付日数

自己都合退職者の給付制限

雇用保険は求職の申込みを行った日から7日間の待期期間が満了すると開始します。しかし、退職理由によっては、所定の期間は失業保険がもらえないという給付制限があります。

  • 自己都合:給付制限2か月(※)
  • 懲戒解雇:給付制限3か月

(※)令和2年10月1日以降に自己都合退職し、5年間のうち2回までは給付制限2か月。3回目以降は給付制限3か月。

つまり、自己都合の場合、待期期間と給付制限をあわせて最低2か月と7日間は失業保険がもらえないことになります。

自己都合退職者の所定給付日数

自己都合退職者の所定給付日数は下記の通りです。

被保険者期間1年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
所定給付日数90日120日150日
自己都合退職者の所定給付日数

参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」

退職前に5年間、同じ派遣会社で仕事をしていた30代の人の所定給付日数は、退職理由が会社都合なら180日ですが、自己都合の場合は90日しかありません。

雇用保険の給付内容は、自己都合と会社都合では大きく異なる場合があるので注意が必要です。

退職理由は離職票で確認

自分の退職理由が自己都合か会社都合かは、離職票で確認しましょう。

離職票は雇用保険をもらうのに必要な書類で退職理由が記載されています。派遣社員の場合、労働契約が満了してから1か月経った後に派遣会社から離職票が交付されます。1か月の間をおくのは、派遣会社が次の派遣先を探すための期間です。

次の派遣先探しが難しそうな場合など、すぐに雇用保険を受給したければ契約満了後に派遣会社に請求しましょう。1か月早く、雇用保険をもらうことができます。

「会社都合だと思っていたら自己都合にされていた」ということのないように、離職票をもらったら最初に退職理由をチェックしましょう。離職票の記入見本は下記リンクで確認できます。

参考:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」

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執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。