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働いている中で、「今の会社がどうしても合わない」「将来を考えるともっと給与の高い仕事に転職したい」等、様々な理由から退職を検討している時、頭を悩ませるのは、「退職がスムーズにできるか?」という部分です。
業務内容や人間関係、労働上の理由から、言い出せない、言い出しても辞めさせてもらえない等、退職できない状態の労働者ニーズに応えてできたものが、退職代行サービスです。
しかし、退職を代わりに行なってもらうとなると、法的に問題がないかという点も気になってきます。
この記事では、退職代行サービスの利用を検討している方に向けて、退職代行サービスの概要と法的に問題がないかどうかの解説や、トラブル事例等を確認していきます。
目次
退職代行サービスという名前から、「退職したい労働者の代わりに退職手続きをしてくれる」というようなサービスであることは察することができますが、一言で退職と言っても、具体的に何をどこまでやってもらえるのかまでは想像しにくいですよね。
まずは一般的な退職のルールと、実際に退職代行サービスがどこまで退職に関与してもらえるのかを確認します。
退職には定年退職や労働者の死亡による退職が含まれますが、大前提として、この記事で取り扱う退職は、労働者からの申し出により労働契約を終了する退職を指します。
退職する・しないについては、労働者の自由が認められています。
法律上は、期間の定めのない労働契約(正社員等)の場合、労働者は少なくとも2週間前までに退職の申し出をすれば、退職することができます。(民法627条1項)
ただし、会社の就業規則に、退職に関する申し出期日等のルール(「退職予定日の1か月前までに」等)が記載されている場合、基本的にそれに従う必要があります。
期間の定めのある、いわゆる有期労働契約(原則3年以内、特例として高度専門知識を有する労働者や満60歳以上の労働者については5年以内)の場合、労働者からの一方的な退職は、原則としてできません。
契約期間の満了とともに労働契約が終了します。
例外規定として、契約期間が1年を超えるものの場合、1年を経過した日以降はいつでも労働者から申し出て退職することが可能となっています(特例の場合は除く)。
以上の通り、基本的には労働者が会社に申し出ることで退職できることがほとんどですが、労働上の問題により、会社に言い出せず退職できない労働者も存在します。
退職代行サービスとは、そのような労働者に代わって退職の意思表示をしてもらえるサービスのことを指します。
退職代行サービスを依頼できる先は、大きく分けて以下の通りです。
後ほど詳しく述べますが、法的な側面から、依頼先が弁護士である場合が最も対応できる範囲が広く、労働組合、民間業者(非弁業者)の順で、対応できる範囲が狭まります。
退職代行サービスは、一般的に以下のようなステップで進みます。
どの依頼先も共通して、退職代行サービスとして行ってもらえることは、労働者に代わって退職の通知(退職の意思表示)をすることになります。
こちらに加えて、退職に関する条件等で会社側と交渉するような場合、法的な問題が生じるため、先ほど少し述べた通り、依頼先によって対応してもらえる内容が変わってくることになります。
ここまでで、法律上、退職代行サービスを依頼する先によって、対応してもらえる内容が変わってくることをお伝えしました。
それでは具体的に、誰に何を依頼すると法律上問題が生じるのか、みていきましょう。
退職代行サービスを依頼するにあたって、法律上問題がない依頼先は弁護士になります。
弁護士に依頼する場合、退職金や残業代請求、有給取得等、退職に関する全ての交渉・手続きについて代行が可能になります。
また、交渉で解決できない場合、訴訟等で解決につなげることまで可能なため、ほぼ確実に退職できます。
次に、退職したい労働者が労働組合に加入したうえで、労働組合に退職代行サービスを依頼する場合です。
労働組合は会社との交渉権を有するため(労働組合法6条)、残業代等の請求や、退職に関する交渉が可能です。
しかし、弁護士と違って裁判の代理人にはなれないため、訴訟等の解決には対応できません。
民間業者(非弁業者)である場合、サービス上、退職を「代理」するのでなく「使者」として進めることになります。
代理と使者には以下のような違いがあります。
簡単に言えば、代理は「本人に代わって行為をする」が、使者は「本人の意思を伝えるだけ」ということです。
民間業者(非弁業者)である場合、退職代行として対応してもらえる内容は、使者として、「労働者に代わって退職の通知(退職の意思表示)をすること」のみになります。
もしそれに付随して、退職に関する交渉をしてしまった場合、非弁行為とされ、退職自体が無効になる可能性もあります。
なお、非弁行為とは、弁護士資格を有さない者が、報酬を得る目的で法律に関する代理や交渉、仲裁や和解といった法律事務を行うことで、違法行為となります。(弁護士法72条)
依頼先が対応できる適法な範囲内で依頼する以上、退職代行サービスに依頼したからという理由だけで労働者が不利になることはありません。しかし、依頼先によっては退職についてトラブルを生じてしまう可能性はゼロではありません。
どのようなトラブルが考えられるのか、確認していきましょう。
単に業者から会社に対し退職の意思を伝えても、会社側がそれだけで「わかりました」とはならないことがほとんどです。むしろ、それだけスムーズに対応してもらえる会社であれば、労働者は退職代行サービスに頼らないでしょう。
会社側としても、引継ぎはどうするのか、貸し出している備品はどうなるのか等々、話し合いたい内容はたくさんあります。しかし、民間業者(非弁業者)は法律上、使者としての退職の意思表示以上の対応ができません。
業者側で「この辺りは対応してもいいか」等勝手に判断してしまい、さらなるトラブルになる可能性も高いです。非弁行為という違法行為を行なったのは依頼先の業者であるとはいえ、退職できるどころか、余計話が拗れてしまうこともあります。
こちらも退職代行を行うのが民間業者(非弁業者)であったケースになりますが、会社側も退職代行サービスに対する知識をつけているので、「非弁業者では交渉ができませんよね」と一蹴されてしまうケースもあります。
それでも「退職の意思表示をしたから」といって、そのまま会社からの交渉にも応じず、まともな引継ぎも話し合いもなく辞めてしまった場合、会社側に損失が発生することもあります。
この損失について、会社が労働者に対して損害賠償を請求する可能性もゼロではありません。
東京都産業労働局が令和元年度に発表した資料では、労働相談のうち「退職」項目が最多であったことを報告しています。
また、他の地域でも、退職に関する労働相談は毎年数多く寄せられています。
このように、退職に関して頭を抱える方は少なくありませんが、退職代行サービスを利用することを考えている方は、どの依頼先でどこまで対応してもらえるか等、内容を十分に検討してみてください。
法的なリスクを限りなく下げたいのであれば、弁護士に相談することをお勧めします。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。