許されている解雇理由はどのようなものか

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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仕事を解雇されることは経済活動の基盤を失うことに繋がりますので、労働者の私生活には大きな影響を与えることになります。

他方で、法律により様々な解雇規制が存在しています。今回は許される解雇の理由について詳しく解説していきます。

使用者は自由に解雇ができるわけではない

解雇はどのような条件のもとで許されているのでしょうか。
その前提としてまず、解雇の意味や種類、解雇規制の具体例等を順番に説明していきます。

解雇とはなにか

まず解雇とは法的にはどのように定義されるのでしょうか。

「解雇」とは、労働者と使用者間の労働契約を当事者の合意に基づかず、使用者からの一方的な意思表示で解消することをいいます。

労働者と使用者双方の合意に基づく「合意解約」や、労働者からの一方的意思表示である「辞職」は解雇とは全く異なる法概念ですので注意が必要です。

解雇は「普通解雇」・「整理解雇」・「懲戒解雇」の3つの類型に分けて説明することができます。
解雇の種類の違いとは?

一般に普通解雇とは、労働者の能力不足や勤務態度の不良等、解雇の理由が労働者側にある場合の解雇をいいます。

整理解雇とは、経営不振で事業を継続することが難しい場合に人員整理としての解雇をいいます。整理解雇は使用者側に理由のある解雇といえます。

懲戒解雇とは、懲戒処分として解雇をする場合をいいます。懲戒処分とは労働者の企業秩序違反に対する制裁としての使用者の処分のことをいいます。

それでは解雇はどのような条件のもとで許されているのでしょうか。

解雇の要件

労働契約法第16条には、以下のように規定されています。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする

労働契約法第16条

つまり、①客観的に合理的な理由が必要であること、②社会通念上相当であることの2つの条件が満たされないような解雇は解雇権を濫用したものとして解雇は無効となるのです。

解雇に関するルール

上記要件に加え、使用者には労働者を解雇するにあたり守らなければならないルールが法定されています。

例えば使用者は、労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前にその告知をするか、30日分以上の平均賃金の支払いをしなければなりません。(労働基準法第20条1項)

そして、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は遅滞なく証明書を交付しなければなりません。(同法第22条1項)

本記事では解雇理由該当性の判断について説明していきますので、「普通解雇」と「懲戒解雇」の2つをメインに解説していきたいと思います。

普通解雇の理由

それでは普通解雇の対象となる解雇理由にはどのようなものがあるのでしょうか。

具体例を挙げて説明します。

能力不足を理由とした解雇

労働者の能力不足を理由とした解雇はどのような場合に有効でしょうか。

まず、就業規則等に能力不足を理由とした解雇について根拠となる規定があることが前提となります。

そのうえで、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込がないと言えなければなりません。絶対評価ではない相対評価のみの人事考課だけでは、直ちに能力不足であるとはいえません。
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使用者は、労働者に対し体系的な教育、指導を実施することによって、その労働能率の向上を図る余地があります。そのため、このような教育・指導を欠けば向上の見込みがないとはいえません。

職種を限定しない正社員として採用された場合には、特定の職種については能力を発揮できなくても、異なる職種であれば能力が発揮できる可能性もあります。

職務怠慢・勤務態度不良を理由とする解雇

就業規則に定める解雇事由に該当する場合においても、その解雇が当然に有効となるわけではありません。

職務怠慢や勤務態度の不良を原因とする解雇についても、下記の要素を検討する必要があります。
検討すべき要素とは?

  • 労働者の行為がどの程度、どのような損害を及ぼしたのか
  • 損害に寄与したのは当該労働者だけであるか
  • 当該労働者が事前及び事後に非難に値するか
  • 他の労働者との均衡

以上のような要素を検討せずになされた解雇は、解雇権を濫用したものとして無効とされる可能性があります。

懲戒解雇の理由

懲戒解雇は、企業秩序を害した労働者への制裁として行われる解雇ですが、解雇である以上普通解雇と同様、解雇規制ルールが適用されます。

また、懲戒解雇になる理由は予め就業規則に明記しておくことが必要になります。

労働者が刑事罰を受けた場合

労働者が私生活上の非行が原因で刑事罰を受けた場合、それが使用者の社会的評価に悪影響を与えることはありえます。労働者が刑事罰を受けたことが懲戒事由として定められていることは多いです。

しかし、刑事罰に該当する行為にも様々なタイプがあり、具体的な懲戒事由の該当性は、犯罪行為の性質・情状、会社の事業の種類・態様・規模、当該労働者の会社における地位・職種等を総合的に考慮して決定しなければなりません。
懲戒事由非該当の場合は?

  • 労働者の行為が会社の組織・業務等に関係のない私生活の範囲内で行われたものである
  • 労働者の受けた刑事罰についても罰金刑にとどまる程度のものである
  • 会社における労働者の地位も指導的な役職でない

上記のような場合には懲戒事由に該当しないと判断される場合もあります。

経歴詐称をした場合

最終学歴や職歴、年齢、犯罪歴について詐称した場合、懲戒解雇の対象となるのでしょうか。

いずれも企業秩序に影響するような重要な経歴の詐称と言える場合に限って、懲戒処分の対象にできると考えられています。つまり、企業秩序に影響を及ぼさないような軽微な経歴詐称について懲戒解雇された場合については、解雇権の濫用、そして、無効となると考えられています。
具体的な事案は?

労働者が大学中退したことを隠し、最終学歴を低く偽って応募したことで懲戒解雇された事案において、裁判所は以下のように判断しました。

「(会社が)必要かつ合理的な範囲で申告を求めた場合には、労働者は、信義則上、真実を告知すべき義務を負う」

そして、この告知義務の範囲については以下の事項について、真実を告知する義務があると判示しています。

「その労働力評価に直接関わる事項ばかりでなく、その企業あるいは職場への適用性、貢献意欲、企業の信用の保持等企業秩序の維持に関係する事項」

この判例からも、企業秩序の維持に関係しない事項については労働者には真実告知義務はないということができます。

この判例を参考に、企業秩序の維持に関係しない事項について真実を告知しなかったことを理由とする懲戒解雇は、解雇権を濫用したものとして無効であると判断される可能性があります。

長期間無断欠勤をした場合

精神的な不調により長期間無断欠勤した労働者に対して懲戒事由に該当するとして解雇された事件について裁判所は以下のように判断しています。
裁判所の判断とは?

「精神的な不調のために欠勤を続けている労働者は精神的な不調が解消されない限り出勤できないのであるから、精神医による健康診断を実施した上で、診断結果に応じて必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応をとるべきである」

「そのような対応を執ることなく直ちにその欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして懲戒処分の措置を執ることは不適切であり、労働者の欠勤は就業規則所定の懲戒事由である正当理由のない無断欠勤にはあたらない」

上記の判例は、精神的な不調を有する労働者に対して使用者が上記のような対応を執らなかった場合には、そもそも懲戒事由である無断欠勤に該当すると判断してはいけないということです。

精神疾患が疑われる労働者の欠勤は、企業秩序を乱す行為として扱ってはならず、健康配慮を尽くすべきであるという価値観が示されていると言えるでしょう。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。

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