試用期間で解雇されるのはどんな時?-試用期間と本採用の関係

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監修者:みんなのユニオン 執行委員
岡野武志

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求人媒体で募集要項を眺めると、雇用形態等で試用期間を設けている会社は少なくありません。

試用という文字通り、「試用期間って、お試し期間のこと?」、「お試しだから、もし試用期間中にダメだと思われたら解雇されるかも…」と心配になる方もいるかと思います。

この記事では、日本で試用期間がどのように扱われているのかという点から、試用期間で解雇されるケースが実際にあるのかという点まで、過去の判例を確認しつつ解説していきます。

試用期間に解雇される?―会社は何を見ているか

多くの会社で導入されている試用期間制度。

入社後〇ヵ月を試用期間とし、この試用期間が終わると本採用という形をとっている会社が多いです。

わざわざ本採用の前に試用期間を定めているということは、「向いてない」、「パフォーマンスが悪い」といった判断で、一方的に解雇されることが実際にあるということでしょうか?

もしこのように試用期間で解雇されたとき、その判断における具体的な理由も明かされず「『試用』期間だから仕方ないでしょう」と一言で処理されてしまうと、労働者としては困りますよね。

まずは、労働者側も試用期間について知るために、試用期間の基礎知識から、会社がどのような点で試用期間中の労働者を見ているかを確認していきましょう。

試用期間とは

採用につき入社した後、一定期間を試用期間として、その期間のうちに採用過程では知ることのできなかった従業員としての適性(人物・能力等)を評価・判断し、本採用するかどうかを決定する制度を試用期間といいます。

ここで試用期間として定められる「一定期間」は、入社日から1~6ヵ月程度であることが多いです。
6か月以上の場合もある?

なお、試用期間中の労働者は、不安定な地位にあるため、適性を判断するのに必要な合理的期間を越えた長期の試用期間は、公序良俗に反するとされ、その限りにおいて無効になるという考え方が一般的です。

試用期間の待遇差―賃金規定や解雇予告

試用期間は労働基準法上、「試みの使用期間」という言葉で表され、平均賃金の基礎から除外している(労働基準法12条3項5号)ほか、試用期間の14日目までは解雇予告を不要(労働基準法21条ただし書き4号)としています。

こういった規定が表すように、試用期間中の労働者は、法的に保護される度合いが正規雇用者より劣ります。

試用期間で会社が見ているポイント

適性の評価・判断という言葉だけ聞くと、能力だけを見ているように感じられますが、日本では終身雇用が一般的なので、基本的には「長期間雇用を継続するにふさわしい人物か?」という点を主に見ているといえます。

その点から、実際上試用期間は見習い期間に近い性質を有しているともいえますが、似た言葉である「研修期間」とは異なって使われています。

試用期間と研修期間―解雇されるリスク

試用期間はすでに述べた通りですが、それに対して研修期間は、通常業務を行ううえで必要な教育をするための期間とされます。

例えば、新入社員が入社して間もないころに受けるような、ビジネスマナー研修を想像すると易いでしょう。
解雇リスクが高いのは?

研修期間は一般的に、長期雇用への適性を見ているのではなく、業務に必要な教育を受ける期間であるという点で、試用期間と異なります。

後述しますが、解雇されるリスクという意味では、会社が労働者を解雇できる権利を持つ試用期間の方がリスクは高いです。

試用期間における本採用と解雇―学説と判例

試用期間は、日本の長期雇用慣行上見習い期間に近い性質を有しますが、やはり適性を見ている以上、適性がないと判断され解雇に至る可能性は依然としてあります。

適性がない、すなわち長期雇用にふさわしくないとは、非常に漠然とした表現です。

会社がふさわしくないとする判断基準を何でもアリにしてしまうと、働いている側としては何をするにも消極的になってしまいますよね。

ここでは、試用期間が学説上どのようなものかを簡単に確認しつつ、実際の判例をみて、理解を深めていきましょう。

試用期間の法的性質―労働関係と解雇

試用期間と本採用は区別されていますが、試用期間を設けての雇い入れは本採用が前提となっているうえ、労働者は「労務の提供」、つまり、仕事をしています。

仕事をしている以上、試用期間中の労働関係を法的にどう判断するかが問題になり、学説上様々な見解がありますが、日本では「解約権留保付労働契約説」をとると解されています。
解約権留保付労働契約とは

聞きなれない単語が出てきましたが、簡単に言えば、会社は、試用期間において、労働者に適性がない(長期雇用にふさわしくない)と評価・判断した時に、それを理由として労働契約を解約=解雇できる権利を、試用期間中持ち続けているということです。

しかし、実際に会社が従業員に適性がないと判断して適法に解雇できる場合は限定されています。

試用期間での解雇を争点にした判例

試用期間での解雇を争点とした過去の判例です。

【事案】
大学生のAは、在学中に会社Bが実施した採用試験に合格し、大学卒業と同時に試用期間(3ヵ月)を設けて採用された。
しかし、試用期間が終わる直前に、会社Bは、「Aは大学在学中に学生運動等を行っていたにも関わらず、採用試験ではこの経歴を隠し、虚偽の申告をしていた」ことを理由に、本採用を拒否した。
Aは、労働契約上の権利を有する(雇用契約上の地位を有する)ことの確認等を求めて出訴した。

この裁判は、最高裁判所で昭和48年12月12日に判決が出ています。
まず、判断において、雇い入れる前と後で、会社の採用における裁量の範囲に差が生じる点を考慮しています。

  • 雇い入れる前…誰を雇うか、どんな基準で採用するか等、採用・不採用に関して会社は広い裁量があることを認めている
  • 雇い入れた後…試用期間があったとしても、いったん会社に雇われたからには、本採用に対する期待があり、同時に、他の会社へ就職する機会・可能性を放棄しており、労働者保護のためにも、会社が解雇できる自由について一定限度の制約を課すべきである

そのため、今回のような試用期間=いったん雇い入れた後における本採用の拒否は、留保された解約権の行使ということになりますが(前述した解約権留保付労働契約説)、それが許されるのは、「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として是認される場合」のみに限定するとしています。

しかしながら、留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりは広い範囲で解雇事由が認められるとも言及しています。

この事案では最終的に和解が成立し、Aは復職しています。

試用期間での解雇が許される時とは?

では、試用期間で解雇することが許される「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として是認される場合」はどんな時かを確認していきましょう。

試用期間での解雇―勤務態度が非常に悪い時

遅刻や欠勤を繰り返し、勤務態度が非常に悪いといえる場合や、働く姿勢が反抗的であり、周囲と協調できない場合、試用期間での解雇もやむを得ないといえます。
解雇妥当の判断基準は?

解雇の妥当性を判断するときは、会社が勤務態度について注意・指導をしたかどうかがポイントになりますが、そういった改善の機会があったにもかかわらず勤務態度が良くならない場合は、解雇は妥当と判断される可能性が高いでしょう。

試用期間での解雇―経歴を詐称した時

重大な経歴詐称があった場合、試用期間での解雇が有効になることがあります。重大な経歴には、学歴・職歴・犯罪歴の3つが該当するといわれています。
経歴詐称は必ず解雇有効?

ただ、この3項目を詐称したからといって当然に解雇できるわけではなく、業務や詐称の内容を見ながら個々の具体的な事案に応じて判断されます。

詐称していない経歴だった場合、雇っていなかったといったケースは、解雇が妥当とされる可能性が高いです。

試用期間での解雇―能力不足の時

業務遂行能力がない(能力不足)として試用期間に解雇することは認められにくいですが、ゼロではありません。

たとえば、高度な専門的知識・経験を期待して採用された場合、能力不足による解雇の判断基準が緩くなるので、試用期間での解雇が妥当と判断される可能性はあります。

最後に

この記事でお伝えした通り、試用期間では、会社は長期雇用にふさわしいかどうかを見ているといえます。

確かに試用期間中、会社は解雇できる権利を持っていますが、解雇が有効になるケースはそこまで多くないこともご紹介しました。

試用期間での解雇が許される具体例を読んで分かる通り、勤務態度の悪さや経歴の詐称などは、試用期間だけでなく、本採用後でも解雇に至る可能性があるものです。

そのため、試用期間で解雇されることに怯えて消極的になり、仕事ぶりが発揮できないよりは、本採用後も同じ態度で働き続けられるよう積極的に取り組み、会社といい関係性を築くことをお勧めします。

監修者


みんなのユニオン

執行委員岡野武志

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みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。

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