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突然の減給、手当の廃止…など、今まで得ていたメリットがなくなると、仕事のやる気を失います。
しかし、会社の経営を取り巻く環境や、働き方改革の影響などにより、会社が労働条件を不利益に変更する「不利益変更」を行ってくることがあります。
一方、法律では「不利益変更禁止の原則」を定めて、労働者を保護しています。
ただし、不利益変更には例外もあり、一定の条件を満たすんほであれば不利益変更が認められています。
この記事では、不利益変更禁止の原則とは何か、もしも不利益変更をされた場合、それが適法か違法かをどのように判断できるか、について解説していきます。
目次
就業規則がデメリットとなる内容に変更されると、やるせない気持ちになりますよね。
「就業規則が不利益に変更されることは違反ではないか?」と思われる方もいることでしょう。
しかし、ケースによっては、変更内容が労働者にとって不利益となる場合でも認められることがあります。
では、法律では不利益変更について何を定めているのでしょうか?
まずは労働者も知っておくべき「不利益変更禁止の原則」から確認してみましょう。
不利益変更とは、労働者にとって不利益な方向に就業規則で定められている労働条件を変更することです。
近年、世の中の経済状況は、会社の経営に大きな影響を与えています。
そのため、会社を存続させるために労働条件を不利益変更せざるをえない状況になることがあります。
具体的な例として、決められていた賃金(給与)が、会社側の一方的な都合で引き下げられることが挙げられます。
実際、労働者にとって不利益変更と一番感じるのは、賃金などのお金の問題でしょう。
しかし、不利益変更は、お金の問題だけではありません。
このように、労働者に与えられていた労働に関する条件が不利益な方向へと変更される場合は、不利益変更に該当する可能性があります。
不利益変更禁止の原則は、以下のように定められています。
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない
労働契約法9条
つまり、会社側は就業規則の一方的な変更により、労働者に不利益な労働条件に変更することはできない、ということです。
このように労働者を保護するための原則を「不利益変更禁止の原則」といいます。
ただし、不利益変更が認められることもあります。では、不利益変更が認められるのはどのような場合なのか確認していきましょう。
不利益変更禁止の原則があるものの、一定の法的条件を満たしていれば不利益変更は認められています。
ですから、もし不利益変更された場合は、一定の法的条件を満たしたものなのか、つまり適法なのか、それとも違法なのかを確認することは大切です。
では、不利益変更が認められている一定の法的条件をみていきましょう。
労働契約法第9条は、会社側が一方的に就業規則を変更できないという内容の条文でしたが、続く第10条では、不利益変更が認められる2つの条件について以下のように定められいます。
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする
労働契約法第10条
よって、労働条件の不利益変更は、①変更内容が合理的である、②労働者に変更後の就業規則を周知する、という2つの条件を満たしていれば有効とされています。
つまり、労働者にとって不利益変更だとしても、それは法的に認められている変更なのです。
では、会社は、この2つの条件をきちんと満たしているかどうかを判断するチェックポイントをみていきましょう。
まず1つ目の条件は、就業規則の変更内容が合理的でなければいけません。
合理的であるかどうかの5つの判断基準は、以下のとおりです。
就業規則の変更により、労働者の受ける不利益の大きさがどの程度か、またその不利益を減らす方法があったか、などの要素が考慮されます。
不利益変更がなぜ必要となったのか、その必要性の大きさが問われます。
例えば、不利益変更することで、会社の倒産危機を回避することができるのであれば、必要性が大きいと判断されやすいでしょう。
これには変更内容が社会的にみて相当性があるか、という点が考慮されます。
変更した内容が特定の労働者や特定層のみに著しく不利益となる場合は、社会的にみて相当性があるとは言えません。
また同業界や同業種、同規模の同業他社などと比較し、変更後の内容に相当性があるかどうかなども検討されます。
労働組合や労働者の意思を代表する者などを対象とした交渉の経緯、結果等のことです。
これには不利益変更を緩和するような代替措置がとられたか、十分な説明が行われたか、移行期間が設けられたか、などの要素から判断されます。
1つ目の条件「変更の合理性」を満たしていても、2つ目の条件「労働者に変更後の就業規則を周知」していなければ、不利益変更は無効です。
就業規則を変更した場合は、労働基準法89条、90条の手続きがされなければいけません。
①常時10人以上の労働者を使用する使用者は、変更後の就業規則を所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないこと(労働基準法第89条)。
②就業規則の変更について過半数労働組合等の意見を聴かなければならず、①の届出の際に、その意見を記した書面を添付しなければならないこと(労働基準法第90条)。
これらの変更手続きがされず不利益変更をした場合は労基法違反となります。
貰えるはずの給与や退職金などが、不利益変更により貰えなくなるとガッカリしますよね。
では、就業規則が不利益変更された場合は、どのように対処すればよいのでしょうか?
不利益変更が違反であると判断した場合はもちろん、不利益変更が違反でないかと感じる場合は、労働基準監督署へ相談してみましょう。
労働基準監督署は、会社が労働に関する法律を遵守しているかをチェックし、必要であれば会社に行政指導を行うなど、労働者の権利を守ることを目的とした公共機関です。
法的な強制力はありませんが、相談することで改善が期待できます。
ですから、まずは労働基準監督署へ相談してみましょう。
不利益変更に変更の合理性が認められない場合は、変更は無効となります。
よって、労働者は、不利益変更する前の条件をもとに、差額の賃金など会社側に請求することができます。
会社側がすぐに応じてくれれば問題ありませんが、そうでない場合は、民事裁判に訴える方法などもあります。
もしも会社側が対応してくれないのであれば、信頼できる弁護士の相談してみましょう。
みんなのユニオンの執行委員を務める岡野武志です。当ユニオンのミッションは、法令遵守の観点から、①労働者の権利の擁護、②企業の社会的責任の履行、③日本経済の生産性の向上の三方良しを実現することです。国内企業の職場環境を良くして、日本経済に元気を吹き込むために、執行部一丸となって日々業務に取り組んでいます。